文献詳細
文献概要
今月の主題 キャピラリー電気泳動法 話題
マイクロチップ電気泳動による酸化ストレスマーカー迅速アッセイ
著者: 宮道隆1 脇田慎一1
所属機関: 1産業技術総合研究所ヒューマンストレスシグナル研究センター
ページ範囲:P.1011 - P.1014
文献購入ページに移動1.はじめに
近年,生体の感染防御などの抗酸化制御システムを逸脱した,強い酸化力を有する活性酸素種(ROS),活性窒素種(RNS)やフリーラジカルなどが,生活習慣病などの疾患に関与することが報告され,大きな関心を集めている.酸化ストレスは,生体内の酸化力が抗酸化力を上回った状況と定義され,DNA,蛋白質,脂質などに直接反応して酸化損傷を与え,さらに,その酸化損傷物質は細胞内情報伝達などのシグナル分子として機能することも明らかにされている.
酸化ストレスマーカーには,ROS,RNSやフリーラジカルおよびその代謝物,さらに,核酸,蛋白質や脂質の酸化損傷物など数多く報告されている1).これらのマーカーを使った酸化ストレス評価は,酸化ストレスの種類や強さ,傷害の進行度を反映したものであり,種々の疾患の予防医学的観点から重要である2).酸化ストレス応答は個体差や生活環境による変動があるため,マーカー濃度の経時的変化の観察が重要であると考えられる.現在,マーカーの分析には,おもにHPLC, ELISAや比色キットが用いられているが,煩雑な操作や長い測定時間に課題がある.
筆者らは,半導体微細加工技術により作製したマイクロ流体デバイスを利用する迅速なアッセイ法の研究開発を行っている.例えば,分離分析のマイクロ流体デバイス化により,物理的な,試料,試薬や廃液の少量化のみならず,化学的な,界面反応や伝熱の迅速化および分離能の大幅な向上が原理的に可能となる.ここでは,典型的なRNSである一酸化窒素(NO)の代謝物および,8-ハイドロキシ-2′-デオキシグアノシン(8-OHdG)などのDNA酸化損傷代謝物の簡便かつ迅速なアッセイ法を報告する.
近年,生体の感染防御などの抗酸化制御システムを逸脱した,強い酸化力を有する活性酸素種(ROS),活性窒素種(RNS)やフリーラジカルなどが,生活習慣病などの疾患に関与することが報告され,大きな関心を集めている.酸化ストレスは,生体内の酸化力が抗酸化力を上回った状況と定義され,DNA,蛋白質,脂質などに直接反応して酸化損傷を与え,さらに,その酸化損傷物質は細胞内情報伝達などのシグナル分子として機能することも明らかにされている.
酸化ストレスマーカーには,ROS,RNSやフリーラジカルおよびその代謝物,さらに,核酸,蛋白質や脂質の酸化損傷物など数多く報告されている1).これらのマーカーを使った酸化ストレス評価は,酸化ストレスの種類や強さ,傷害の進行度を反映したものであり,種々の疾患の予防医学的観点から重要である2).酸化ストレス応答は個体差や生活環境による変動があるため,マーカー濃度の経時的変化の観察が重要であると考えられる.現在,マーカーの分析には,おもにHPLC, ELISAや比色キットが用いられているが,煩雑な操作や長い測定時間に課題がある.
筆者らは,半導体微細加工技術により作製したマイクロ流体デバイスを利用する迅速なアッセイ法の研究開発を行っている.例えば,分離分析のマイクロ流体デバイス化により,物理的な,試料,試薬や廃液の少量化のみならず,化学的な,界面反応や伝熱の迅速化および分離能の大幅な向上が原理的に可能となる.ここでは,典型的なRNSである一酸化窒素(NO)の代謝物および,8-ハイドロキシ-2′-デオキシグアノシン(8-OHdG)などのDNA酸化損傷代謝物の簡便かつ迅速なアッセイ法を報告する.
参考文献
1) 二木鋭雄,野口範子,内田浩二:酸化ストレスマーカー.学会出版センター,pp2-6, 2005
2) 吉田康一,二木鋭雄:酸化ストレスとその防止.バイオインダストリー 20:14-22,2003
3) Selley ML:Increased concentrations of homocysteine and asymmetric dimethylarginine and decreased concentrations of nitric oxide in the plasma of patients with Alzheimer’s disease. Neurobiol Aging 24:903-907, 2003
4) Omata N, Tsukahara H, Ito S, et al:Increased oxidative stress in childhood atopic dermatitis. Life Sciences 69:223-228, 2001
5) Napoli C, Ignarro LJ:Nitric Oxide and Atherosclerosis. NITRIC OXIDE-Biol Ch 5:88-97, 2001
6) Miyado T, Nagai H, Wakida S, et al:Development of a novel running buffer for the simultaneous determination of nitrate and nitrite in human serum by capillary zone electrophoresis. J Chromatog A 1014:197-202, 2003
7) Miyado T, Tanaka Y, Wakida S, et al:Simultaneous determination of nitrate and nitrite in biological fluids by capillary electrophoresis and preliminary study on their determination by microchip capillary electrophoresis. J Chromatog A 1051:185-191, 2004
8) 高橋伯夫,原克子:循環器疾患と酸化ストレス.臨床病理 51:133-139, 2003
9) 佐藤英介,井上正康:酸化ストレスの基礎と臨床.臨床検査 49:121-130, 2005
10) Panossian AG, Oganessian AS, Ambartsumian M, et al:Effects of heavy physical exercise and adaptogens on nitric oxide content in human saliva. Phytomedicine 6:17-26, 1999
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