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シリーズ最新医学講座 臨床現場における薬毒物検査の実際・7
確認分析法(臨床現場におけるGC/MSの活用)
著者: 原克子1 小宮山豊2 山本透3 高橋伯夫2
所属機関: 1関西医科大学附属病院中央検査部 2関西医科大学臨床検査医学講座 3関西医科大学附属病院高度救命救急センター
ページ範囲:P.1027 - P.1035
文献購入ページに移動ガスクロマトグラフィー質量分析(Gas Chromatography―Mass Spectrometry;GC/MS)1)は,ガスクロマトグラフィーと質量分析の組合せた機器で,高感度であり気化しやすい多成分混合物や微量化合物の定性,定量に用いる分析機器である.血液や尿などに含まれる種々の成分をまずGCで別々に分離(ガスクロマトグラム)し,分離された個々の成分を直接MSに導き試料分子に直接中性子を衝突させイオン化し,生成された分子イオンおよび分解イオンのマススペクトル(EIフラグメントイオン:検出器を通過したすべてのイオンを記録するtotal ion current;TICや特定の化合物に特徴的なイオンを検出するselected ion monitoring;SIM)を測定する.GC/MSには,化合物の分子量はもとより,その構造について多くのライブラリが備え付けてあり,容易に同定および定量が行える.これまでは,環境化学分析(特に最近では,ダイオキシン類分析),犯罪に関係した科学捜査に関する分析(科学捜査研究所),法医学の分野で広く用いられてきたが,病院の臨床現場,特に日常検査での分析には,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が主流とされ,GC/MSでの分析はほとんどなされていなかった.しかし,東京の地下鉄サリン事件,和歌山毒物カレー事件,新潟アジ化ナトリウム事件および薬毒物混入事件などを機に,中毒災害やテロリズム被害の防止に向けた認識が高まり,国内での対応策および中毒起因物質の分析施設が要求された.その一環として1998年当時の厚生省(現在の厚生労働省)より,全国の高度救命救急センターおよび救急病院に分析機器(GC/MS,HPLCなど)の配備2)がなされ,病院の中央検査部においても薬毒物分析が行われるようになった.
高度救命救急センターを有する当院もこれを受け,薬物,農薬,自然毒などの分析を行っており,GC/MSでは,主に農薬,自然毒,未知物質の同定を行っている.分析対象症例が中毒事故であるため,患者搬入時より適切な治療と特異的な拮抗剤投与など開始されるため,臨床現場への早急な起因物質の推定ならびに測定結果の報告が要求される.本稿では,当院におけるGC/MS分析での早急な臨床対応が可能な前処理や,中毒症例の経時的分析と治療について紹介する.
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