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文献詳細

雑誌文献

臨床検査50巻1号

2006年01月発行

文献概要

シリーズ最新医学講座 法医学の遺伝子検査・1

総説・法医学領域の遺伝子検査法の変遷

著者: 赤根敦1

所属機関: 1関西医科大学法医学講座

ページ範囲:P.99 - P.105

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法医鑑定

 ほとんどの大学(大学院)の法医学教室では業務として法医解剖(司法解剖,行政解剖)などの法医鑑定業務を行っている.法医解剖の目的は犯罪関与の疑いのある死体の死因を(外因死であればその手段を含めて)鑑定することであるが,身元不明の死体の場合には個人識別という鑑定事項がこれに加わる.また,事件・事故現場で発見された血痕,精液斑などの斑痕試料についても,誰由来のものであるかの個人識別を行う.

 人体の個人識別は,警察が所持品等で捜査するが,同時に身体から得られる種々の医学的な特徴(先天性身体特徴,多因子遺伝形質,後天性身体特徴)を調べて確認をとる.先天性身体特徴とは単一の遺伝子で決定される遺伝形質(メンデルの法則に従って遺伝される身体の各種構造や機能)で,血液型やDNA多型が該当する.多因子遺伝形質とは複数の遺伝子が関与する形質で,環境の影響を受けるものを含み,容貌,体格,指紋などが該当する.後天性身体特徴とは出生後の人生で体に刻まれた個人的特徴で,傷痕,手術痕,歯の治療痕,刺青などである.多因子遺伝形質と後天性身体特徴とが個人の特定に決定的であるが,死後変化で識別できない場合や特徴的な所見がみられない場合もある.そのような場合を含めて個人情報として有用なのが先天性身体特徴である.

参考文献

1) 澤口彰子,福永龍繁,武市早苗,他:臨床のための法医学,第5版,朝倉書店,pp142-146, 2005
2) Lincoln P, Thomson J:Forensic DNA Profiling Protocols, Humana Press, Totowa, New Jersey, 1998
3) 赤根敦:DNAの個人差とその応用.遺伝 54(10):27-30, 2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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