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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査50巻10号

2006年10月発行

雑誌目次

今月の主題 認知症の動的神経病理

巻頭言

認知症の動的神経病理

村山 繁雄

pp.1083-1084

 認知症は,dementiaの和訳として使用するよう,厚生労働省関係者より指導されており,新しい言葉で耳慣れない部分もあるが,認知機能の正常よりの逸脱が,本人の日常生活に障害をもたらしている状態と定義される.したがって,この状態は,いわゆる本人の病前の状態,ならびに本人をとりまく社会環境において,影響を受けるわけである.また時間軸で行くと当然ながら,連続性の変化を示す.したがって,認知症の診断は,本人の置かれた状況での許容域値を超えたときに,下されることになる.

 これは,癌と前癌状態と一部共通する部分があるが,単一遺伝子である程度規定されるものと異なり,ゲノムと外環境の両方が関与する点で,癌とは位相の異なる,手強い相手といえる.さらに問題なのは,認知症の診断のために,脳生検をすることは,今でも一部の国では行われているが,少なくともわが国では現実的ではなく,剖検を得ないと確定診断を下すことができない.さらに,脳は他の臓器に比べ,ブラックボックスの部分が大部分といっても過言ではない.取り出された脳をいかに形態学的に詳しく検索しようと,その脳が呈していた臨床症状のすべてを抽出することは不可能である.

総論

老化と認知症の臨床・画像・病理連関(動的神経病理)による解明―ブレインバンクプロジェクト

村山 繁雄 , 齊藤 祐子

pp.1085-1089

 高齢者ブレインバンクプロジェクトは,老化に伴う,運動・認知機能障害の克服を目指した在宅高齢者支援総合救急病院と,併設研究所の共同事業である.死体解剖保存法18条と,病院剖検承諾書を法的基盤とし,「篤志に基づくものは公的ドメインに属し,公共の福祉に貢献しなければならない」という,ブレインバンクの国際共通理念に基づき運用されている.資源の蓄積・管理・研究(共同研究)と連動し,高齢者の前方視的縦断研究,最新の手法を用いた後方視的神経病理学研究を続行中で,動的神経病理(臨床・画像・病理連関)は,研究の核をなす方法論である.〔臨床検査 50:1085-1089,2006〕

認知症:動的神経病理としてのMRI

德丸 阿耶

pp.1090-1098

 MRIは認知症診断において,脳腫瘍,血管性病変,硬膜下血腫,水頭症などの除外診断にとどまらず,変性認知症疾患の診断,鑑別に重要な役割を果たしつつある.画像統計解析手法が通常検査に応用されるようになったことが,MRI診断の役割を大きく広げ,かつ精密にした1).未曾有の高齢化社会の到来を前に,認知症を早期に正しく診断することは重要である.これまで研究目的で行われていた画像統計解析が容易に一般病院でも施行されるようになってきたことの意義は大きく,高齢者専門の一般病院での初期経験を述べ,動的神経病理における位置づけを示唆することができればと考える.〔臨床検査 50:1090-1098,2006]

動的神経病理としてのPET

石井 賢二

pp.1099-1105

 PETは,生きた脳の様々な機能を非侵襲的に観察することのできる検査法であり,全脳をカバーする断層撮影を経時的に行うことにより,疾患の発症・進展のプロセスを空間・時間軸上で表現することが可能となる.病理との対比を前提としたPETの位置づけ,脳代謝や神経伝達機能測定の意義,統計画像法や萎縮補正などのデータ解析法,最近話題になっているアミロイドイメージングを紹介し,PETと病理の相補的関係について述べる.〔臨床検査 50:1099-1105,2006〕

動的神経病理としての髄液バイオマーカー

金丸 和富

pp.1107-1110

 アルツハイマー病の髄液バイオマーカーの特徴としては,タウ蛋白の上昇とアミロイドβ蛋白(amyloid β42;Aβ42)の低下がある.さらに,リン酸化タウ蛋白(p-tau)の上昇が,より特異性の高い検査として報告されている.また,p-tauの上昇は,アルツハイマー病に移行する軽度認知障害の診断にも有用である.病理所見との対応では,p-tauの上昇は,アルツハイマー神経原線維変化と,また,Aβ42の低下は,老人斑やアミロイド・アンギオパチーと相関していた.レヴィー小体型認知症の髄液所見は,tauやp-tauは正常であるが,Aβ42やホモバニリン酸が低下している.〔臨床検査 50:1107-1110,2006〕

各論

アミロイドβ蛋白蓄積症

有馬 邦正 , 大出 貴士 , 坂元 綾子 , 木崎 菜美子

pp.1111-1120

 アミロイドβ蛋白が蓄積する主要な疾患は,アルツハイマー病,ダウン症候群,および脳血管アミロイドーシスであり,いずれも脳に限局して蓄積する.アルツハイマー病ではアミロイドβ蛋白は脳実質に線維束の塊となり老人斑の芯を形成する.アミロイドβ蛋白の沈着が一次的な原因となり,神経細胞の変性脱落,シナプスの減少,神経原線維変化の形成などが起こると考えられており,これはβアミロイド仮説と呼ばれている.〔臨床検査 50:1111-1120,2006〕

タウ蛋白蓄積=タウオパチー

齊藤 祐子

pp.1121-1129

 タウオパチーとして最も頻度の高いのはアルツハイマー病で,βアミロイド沈着に続きタウオパチーが生じ,神経細胞死と関連するという,アミロイドカスケーディング仮説が有力である.一方,1997年,タウ蛋白遺伝子異常によりタウオパチーが生じ,神経変性の一義的原因となりうることが明らかとなった.タウオパチーは,特殊鍍銀染色や免疫染色を施さないと評価が難しい.高齢者では,タウオパチーの頻度が高くなり,臨床病理学的に重要であるので,われわれは,嗜銀顆粒性疾患,神経原線維変化優位型疾患,進行性核上性麻痺,皮質基底核変性症を特に高齢者タウオパチーと総称している.〔臨床検査 50:1121-1129,2006〕

アルファシヌクレイノパチー

髙尾 昌樹 , Bernardino Ghetti

pp.1130-1136

 アルファシヌクレイン(α-synuclein)が,主に中枢神経系の神経細胞やグリア細胞に異常に蓄積し,臨床的に何らかの神経症状を生じる疾患あるいは状態をアルファシヌクレイノパチーと呼び,Parkinson病(PD),認知症を伴うLewy小体病(DLB),多系統萎縮症(MSA)などが含まれる.神経病理学的にPD,DLBはLewy小体,Lewy neuritesを,MSAではグリア細胞内のglial cytoplasmic inclusionsを中核とする.〔臨床検査 50:1130-1136,2006〕

ユビキチン蓄積

吉田 眞理

pp.1137-1142

 湯浅・三山型認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症は,タウやシヌクレイン陰性の神経細胞内ユビキチン陽性封入体を病理学的指標とする疾患で,前頭側頭型認知症の中で運動ニューロン疾患型として位置づけられている.ポリグルタミン病,神経細胞核内ヒアリン封入体病はユビキチン陽性核内封入体を形成する.神経変性疾患におけるユビキチン陽性封入体は,ユビキチン・プロテアソームシステムと病態との関連性を示唆している.〔臨床検査 50:1137-1142,2006〕

プリオン病

片山 禎夫 , 渡辺 千種 , 野田 公一

pp.1143-1148

 プリオン病は,1) 孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease:CJD)に代表される特発性プリオン病,2) クルー病,nvCJD,硬膜移植後CJDに代表される感染性プリオン病,3) プリオン遺伝子の変異によって発症する遺伝性プリオン病に大別される.臨床症状,抗PrP抗体を用いた免疫染色性を含む病理変化は,凍結脳を用いたWestern blotにより糖鎖のないnon-glycoformの分子量の違い(19Kdと21Kd)により,大きく異なる.さらに遺伝子変異の場所による違いにより,表現型が異なるが,プリオン遺伝子コドン129の多型により,それらの表現型が修飾される.〔臨床検査 50:1143-1148,2006〕

血管障害性認知症

東 靖人

pp.1149-1154

 血管障害性認知症の臨床診断基準は,血管障害自体の多様性を反映して,感度や特異度の問題や,不一致率の高さや,互換性のなさがみられる.本論ではNINDS-AIREN criteriaに基づき,症例と神経病理所見を提示して解説を行った.今後,神経病理学的な血管障害性認知症の診断基準を確立することが必要で,この目的には多数例の臨床症状,画像所見,神経病理所見をあわせて検討すること,動的神経病理が重要である.〔臨床検査 50:1149-1154,2006〕

話題

2つの遺伝性細小動脈症性脳症:CADASILとCARASIL

福武 敏夫

pp.1155-1159

1.はじめに

 脳病理学は,死後の病変から,疾患の拡がりや性質を推測し,病態解明に寄与してきた.この間,学問の性格はより臨床的にと変化しているが,その理由の1つは画像診断学の進歩による臨床-画像-病理対応の深化にあるだろう.その意味で,数十年にわたって,症例報告の蓄積の中から,欧米と日本からほぼ同時にCADASIL(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy)1)とCARASIL(Rはrecessiveの頭文字)2)という,既知の血管危険因子で説明のできない,遺伝様式の異なる2つの遺伝性細小動脈症性脳症の疾患概念が提唱されてきたのは偶然とは思えない.遺伝学の常で,先に優性のCADASILにおいて,1993年に原因遺伝子座が絞り込まれ1),1996年にNotch3遺伝子の変異が証明された3).劣性のCARASILの原因遺伝子は未解明だが,2005年,遺伝子10q上に絞り込まれた4).本稿では,この2つの疾患の小史,疫学,臨床症状,神経画像,病理像,遺伝子異常について解説する.

石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病(diffuse neurofibrillary tangles with calcification)

横田 修 , 土谷 邦秋

pp.1160-1164

1.はじめに

 石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病(diffuse neurofibrillary tangles with calcification;DNTC)1)の最初の剖検例は1965年の安藤ら2)のものである.以後の20数例の剖検報告の蓄積,および臨床,病理学的な特徴の検討は,そのほとんどすべてがわが国の研究者によってなされてきた.DNTCの病理学的特徴は,①アルツハイマー病と生化学的にも超微形態的にも区別できない神経原線維変化(neurofibrillary tangle)の出現,②アルツハイマー病と対照的にβアミロイドの沈着は非常に少ないか欠くこと,③側頭葉,次いで前頭葉に強調される脳萎縮,④大脳基底核や小脳歯状核における石灰あるいは偽石灰の沈着,という4点にまとめられる.以下,本症の臨床,病理学的な特徴を紹介する.

Familial PD

小尾 智一

pp.1165-1170

1.はじめに

 パーキンソン病はアルツハイマー病に次いで多い神経変性疾患である.現在,人口10万人あたり100~150人の有病率で,全国では約12万人が罹患している.パーキンソン病の原因には不明な点が多いが,最近の10年間でメンデル遺伝形式に従う家族性パーキンソン病の遺伝子が同定され(表1),パーキンソン病の病態メカニズムについての知見が大きく広がった.その存在が確実な遺伝子はα-synuclein,Parkin,DJ-1,PINK,LRRK2である.そして,ほぼ確実なUCHL1と,linkage analysisでその存在が示唆されているPARK3,9,10,11が挙げられる.これらはパーキンソン病の診断と病態の解明に大きく寄与するものと思われ,これまで報告のあった家族性パーキンソン病の遺伝子と臨床像について概説する.

紀伊半島のALSとPDC

小久保 康昌

pp.1171-1174

1.はじめに

 紀伊半島南部とグアム島,西ニューギニアは,筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS)の世界的な多発地域として知られている(図1)1).これらの地域には,パーキンソニズムと認知症を主症状とする特異な神経変性疾患であるパーキンソン認知症複合(parkinsonism-dementia complex;PDC)が多発しており,ALSと密接な関連がある.本章では,紀伊半島に多発するALSとPDCについて概説する.

内頸動脈狭窄症

今福 一郎

pp.1175-1177

1.はじめに

 内頸動脈狭窄は,頭蓋内,頭蓋外で生じうる.内頸動脈起始部狭窄は70%以上の狭窄は高度狭窄とされる.しかしこの狭窄が閉塞にいたったとしてもなんら症状を起こさないことも多い.時に片側内頸動脈が起始部で閉塞している患者さんに遭遇するが,自覚症状はなかったという患者さんもいる.つまり,無症候性の内頸動脈高度狭窄または閉塞がある.この理由は,ご存知のとおり,閉塞側の内頸動脈から頭蓋内で分枝するはずの前大脳動脈,中大脳動脈は,健側の内頸動脈から前交通動脈を介したバイパス,cross flowにより血流が維持されていることが多いからである.ではなんらかの症状を呈してくる,「症候性の」内頸動脈高度狭窄とはどのようなものか.主として2つの場合が考えられる.

 1) 内頸動脈狭窄部位を塞栓源とするartery to artery embolismを生じた場合.

 2) 前交通動脈や前大脳動脈が未発達でcross flowが期待できない場合.さらには,leptomeningial anastmosisなどの側副血行路の発達が悪い場合.

 1)の場合は塞栓による閉塞血管支配域の神経症状が出現する.2)の場合は,バイパス,側副血行路の期待できない広範領域の脱落症状を呈しうる.本稿でとりあげるのは,2)の場合であり,さらに内頸動脈は完全閉塞でなく,高度狭窄により,主として血行力学性機序により症状を呈する場合である.この場合,症状が脳血管障害によるものであることが見逃され,漠然と「認知症」と診断されて治療・回復の可能性が考慮されないことになりかねない.内頸動脈起始部の高度狭窄は,狭窄度が極めて強いときには,頸動脈エコーや頭頸部MRAでも閉塞との区別が困難な場合があり,閉塞か高度狭窄かの診断や側副血行路の状態をみるためには脳血管撮影検査が必要となる.

今月の表紙 細胞診:感染と細胞所見・10

アメーバ

水谷 奈津子 , 海野 みちる , 坂本 穆彦

pp.1078-1081

 アメーバは原虫に分類され,原生動物とも呼ばれる.単細胞でできているが,摂食・運動・代謝・生殖などの生存や活動に必要なすべての機能が備わっている.

 人体寄生原虫の分類によるとアメーバ目(Order Amoebiba)のエンドアメーバ科(Family Endamoebidae)に赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica;E. histolytica)・大腸アメーバ(E. coli)・歯肉アメーバ(E. gingivalis)が存在する.アカンソアメーバ科(Family Acanthamoebidae)にカルバートソンアメーバ(Acanthamoeba culbertsoni)などが分類されている.また,別の目にフォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)が分けられている1).

コーヒーブレイク

女優

屋形 稔

pp.1178

 世の男性にとってのあこがれは美しい女性であろうが,それを形にしたのは女優といえよう.形ばかりでなく内容も備わった女優となれば老若を問わず男女にとってあこがれの存在となりうるものである.

 ハリウッド女優をはじめとして過去から現在まで世界に存在した女優の数は満天の星の如くある.その中で限られた年代-つまり私自身の遭遇し得た身近な日本女優の中からその印象を記しておきたい.たとえ直接の接触がなかったにせよ,私の人生のどこかで豊かなあこがれを満たしてくれたからである.

シリーズ最新医学講座・Ⅰ 法医学の遺伝子検査・10

遺伝子検査による親子鑑定

湯浅 勲 , 梅津 和夫 , 赤根 敦

pp.1179-1189

はじめに

 親子鑑定とは何かといえば,これは「生物学的な親子関係があるかどうかを科学的に検査すること」であるといえよう.一般の親子鑑定は男と女と子の三人(トリオ)からその生物学的な親子関係を調べる.すでに当事者が死亡している場合,その周囲の人々から親子関係を推定する必要性があるが,これも法医学では親子鑑定と呼んでいる.検査材料は通常の親子鑑定で行われる血液や口腔細胞などの生体試料に限らず,遺骨などの遺物試料にも及ぶ.

 ヒトゲノムの中にある30億塩基対のDNAのなかで,個人間の相違は約0.07%といわれている.すなわち,任意に選び出した二人の間で,約200万塩基対が異なっていることになる.個人間で相違が認められる部分は変異があるといい,集団中にその変異の頻度が1%以上占めれば多型が存在するという.DNA多型には大きく分けて2種類ある.1つは塩基の配列が異なる単一塩基多型(SNP:本誌5月号参照)で,他方は一塩基以上の配列があったりなかったりする挿入欠失(indel)多型である.繰り返し配列による長さが異なる多型,すなわち,反復単位の個数が違う多型(VNTR多型やSTR多型:本誌3,4月号参照)もこれに分類できる.このような高い多様性とめざましく進歩した最近の技術や機器があれば,簡単に親子関係がわかると期待されるところである.しかしながら,遺伝子検査による親子鑑定は検査対象となるDNAから派生する特有な問題があるのも事実であり,重要なことはそのような効率性ばかりではない.①親子関係があるにもかかわらず否定する.②親子関係がないにもかかわらず肯定する.これら2つの誤謬をいかに減らすかが最も重要な問題である.また,医療の分野ではときおり双生児の卵性が問題になり,法医学教室は相談を受けることがある.卵性診断の原理も親子鑑定と本質的には同じである.本稿ではSTR多型を中心とした遺伝子検査による最近の親子鑑定法に加えて,卵性診断についても概略を述べる.

シリーズ最新医学講座・Ⅱ 耐性菌の基礎と臨床・9

主として市中感染で問題となる耐性菌・3

結核菌(非定型抗酸菌も含む)/基礎編

竹下 啓

pp.1191-1195

はじめに

 結核は,Kochが1882年に発見した結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を起炎菌とする慢性感染症である.1945年には,わが国の人口10万人あたり237人が結核で死亡していたと推定されているが,その後公衆衛生の向上,抗結核薬の開発により,結核による死亡率は低下した1).しかし,2005年においても30,000人近くの新患者が発生し,約2,300人が死亡しており,結核は今なお重要な感染症であることに変わりはない.

 結核の診断には,形態学,細菌学,さらには分子生物学などの様々な手法による検査が用いられており,結核の検査を理解することが結核菌そのものを理解することに通じる.そこで本稿では,結核菌の細菌学的特徴について触れた後,結核の検査診断について概説する.

結核菌(非定型抗酸菌も含む)/臨床編

鈴木 幸男

pp.1196-1200

はじめに

 かつて「国民病」と恐れられたわが国の結核の状況は,1951年に結核予防法が改正されて公費負担制度が確立したこと,および生活環境の改善や医療の進歩などにより,著しく改善されてきた.しかし,1997年には新登録患者数および罹患率が増加に転じ,さらに高齢者における結核の増加,結核集団感染の多発,多剤耐性結核などの諸問題が噴出したことより,1999年「結核緊急事態」が宣言された.その後,新登録患者数および罹患率は再び低下しているものの鈍化傾向にある.わが国の人口構成は少子高齢化にいっそうの拍車がかかり,かつ高齢になるほど結核罹患率は上昇することより,今後は高齢者を中心とした結核対策がますます重要になってきている.以下,耐性結核菌の治療を中心に述べる.

資料

ELISA法とリアルタイムRT-PCR法によるノロウイルス検出法の比較検討

山上 隆也

pp.1201-1203

 ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法とリアルタイムRT-PCR(reverse transcription polymerase chain reaction)法とでノロウイルスの検出結果を比較した.両法の一致率は72.9%であり,不一致例はELISA法とリアルタイムRT-PCR法とで型特異性と検出感度が異なることが要因と考えられた.さらに,ELISA法では偽陽性例もみられ,ELISA法のみでの病原診断には注意が必要と思われた.しかし,ELISA法はその簡便,迅速性からノロウイルス感染の診断補助を目的としたスクリーニング検査法として有用であると考えられた.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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59巻13号(2015年12月発行)

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59巻12号(2015年11月発行)

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59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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