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特集 ナノテクノロジーとバイオセンサ 各論 Ⅲ. マイクロチップ分析関連
3. 無痛針による微量採血分析から在宅で健康診断できるヘルスケアチップの開発
著者: 堀池靖浩1 甲田裕子2 小川洋輝 長井政雄
所属機関: 1独立行政法人物質・材料研究機構 2アドビック(株)
ページ範囲:P.1557 - P.1565
文献購入ページに移動わが国では近年,少子高齢化が進行し,高齢者が占める医療費のコストの激増が国家予算を圧迫するとともに,少子化による労働力の不足により国力を衰退させることが危惧される.この包括的解決の一策は,高齢者が働く意欲のある限り働き,培った知恵と経験を社会に還元できるよう元気で毎日を送れる「健康立国」を世界に先駆けわが国に創り出すことである.このためには予防が大切であり,簡便・迅速なバイオセンシング技術を早急に確立しなければならない.一方,μTAS(micro total analytical system)やLab on a Chip1)と呼ばれる小面積の基板に異なった分析部品を機能的に集積化して微量試料を分析する新研究分野が近年急激に発展し,その出口の1つとして種々のバイオチップの出現が期待されている.筆者らはその一貫として,微量の採血から在宅で簡便・確実に同時多項目を診断できる種々の診断用POCT(point-of-care testing)チップを開発している.図1にバイオチップ開発の目的とその展開をまとめたが,種々の診断チップが整うと,計測された多項目のマーカー値を医療施設に通信回線で送り,医療ブロードバンドネットワークと高精細ディスプレイを介して医師による問診が在宅で可能になる.検出マーカーを増やし,長期間の使用によって,医療施設に多数の方の健康・疾病マーカーの推移が蓄積されたデータベースが構築され,そのマーカーと疾病との相関関係を解明が可能になる.さらには,医師不在の寒村や離島の人々の遠隔診断が実現される.
本稿では,まず現在商用の各種POCT生化学分析装置を紹介し,筆者らの在宅検査を目指した無痛針から採取した微量の血液の電気化学法2)や比色法3,4)による分析によって健康・疾病マーカーを測定するヘルスケアチップを解説する.これらのバイオチップの製作については拙著5)に譲り,言及しない.
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