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シリーズ最新医学講座・Ⅰ 法医学の遺伝子検査・12
遺伝子検査の応用による個人認証システム
著者: 橋谷田真樹1
所属機関: 1東北大学大学院医学系研究科社会医学講座法医学分野
ページ範囲:P.1701 - P.1708
文献購入ページに移動法医学分野での個人識別(identification)とは,生体および死体またはその一部から個人を特定することを指す.生体や比較的新しい死体であれば性別,年齢,顔貌,歯型,指紋などに加えて手術痕や刺青なども有効な識別情報となる.また死後変化の進んだ死体,損壊の激しい死体やその一部,体液およびその瘢痕,さらには毛髪・爪などの生体試料からはDNAによる個人識別が行われている.DNAによる個人識別とはいわゆるDNA鑑定と呼ばれるものであり,ヒトゲノム上に存在する他人との塩基配列の違い,つまり多型を利用して行われている.DNA鑑定は犯罪捜査のための遺伝形質検査と親子などの血縁関係を明らかにするためのものとに大きく分かれている.
一方,個人認証(authentication)とは,そのヒトが本人であるかどうかを検証する作業の意味であり,本人認証とも呼ばれている.主に情報・セキュリティの分野で発達した技術で,例えばユーザー名とパスワードの組み合わせを使ってコンピュータの使用権限の確認や,管理されている区域への立ち入りの許可などに用いられる.ただし,セキュリティの向上のためにはパスワードを頻繁に変更する必要があるが,忘却の可能性が高まるほか,結局似たような番号に落ち着き,セキュリティの向上には寄与しないといわれている.そこで注目されているのがバイオメトリクス認証技術である1).これはヒトが持っている生体情報を登録し認証を行うものであり,法医学の分野で個人識別に利用している技術に他ならない.
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