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文献詳細

雑誌文献

臨床検査50巻4号

2006年04月発行

文献概要

今月の主題 検査室におけるインシデント・アクシデント 各論

病理検査の危機管理:Learn from the Errors

著者: 小林忠男1 西野俊博1 植田正己1 津田幸子1 馬場正道1

所属機関: 1恩賜財団済生会滋賀県病院病理科

ページ範囲:P.425 - P.432

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細胞診を含む病理検査業務の範囲は,手術や生検で患者から採取された臓器・組織・細胞から顕微鏡標本を作製し,病理診断に至る工程のことをさす.病理技師や病理医がかかわる医療事故の報道などからもわかるように,病理検査業務は生命と直結する重大なアクシデントの可能性を常にはらんでいる.その意味からも,臨床現場と同様のリスクマネージメントの考えが必要である.病理部門におけるインシデントおよびアクシデントの起こる過程を辿ると,検体の採取から始まり,検体の受付―標本作製―病理診断―診断結果の返却―標本の保存―標本の貸し出しおよび返却,とその幅は広い.しかし,病理検査の検体は,固形臓器や体液など形状や大きさが多種多様で一元的に必ずしも扱えない.また,直接検体にIDや番号をつけることができないことより,厳格にはそれぞれの工程における作業手順の確認を繰り返し行うことが望ましい.病理技師や病理医が一定の医療水準を確保できるだけの知識と技術を備えることと同時に,各臨床部門や他の職種との連携を深めて病院全体として情報を共有化し,他人事と考えずに医療安全対策を推進する必要がある.また,すべての医療機関で情報を共有化し,エラー事例から学び続けてお互いに注意を喚起するなど,全国レベルでも病理検査危機管理対策を構築することが望まれる.〔臨床検査 50:425-432,2006〕

参考文献

1) 横浜市立大学医学部附属病院の医療事故に関する事故調査委員会:横浜市立大学医学部附属病院の医療事故に関する事故調査委員会報告書.(www.yokohama-cu.ac.jp/ycu old/jimukyoku/kaikaku/bk2/bk21.html), 1999
2) 秋藤洋一:医療事故の概念とリスクマネージメント.別冊・医学のあゆみ 医療リスクマネージメントに向けて,医歯薬出版,pp3-6, 2003
3) 大澤進:検査部におけるリスクマネージメント.別冊・医学のあゆみ 医療リスクマネージメントに向けて,医歯薬出版,pp66-70, 2003
4) 鈴木悦,古屋周一郎,石田芳水:病理技術の安全性 リスクマネージメント,筑波大学の対策-医療事故防止をめざした病理検査システムと医療廃棄物処理.臨床病理 レビュー特集 132:133-140, 2005
5) 黒住眞史,真鍋俊明:病理部で行う精度管理のポイントは.検査と技術 32:857-860, 2004
6) 大橋健一:病理技術の安全性 リスクマネージメント,東京大学病院病理部の対策.臨床病理 レビュー特集 132:141-145, 2005
7) 真鍋俊明:病理部における医療事故防止と精度管理.臨床病理 51:251-256, 2002
8) 村田哲也:病理との付き合い方-病理医からのメッセージ(5)病理組織検査・細胞診のピットフォール.Medicina 42:1488-1492, 2005
9) 筑波大学付属病院,日本大学医学部付属板橋病院及び神戸大学医学部付属病院の安全管理体制の確保状況について,厚生関係審議会議事録,医療審議会,医療施設機能部会,2000.11.22
10) 検査ミス別人の肺組織切除国立がんセンター検体取り違え,朝日新聞記事 2005.9.23
11) 鐵原拓雄,安部陽子,大杉典子,他:迅速細胞診誤判定の検討.臨床検査 40:743-745, 1996
12) 乳癌と誤診,乳房を切除,朝日新聞記事 2005.12.27
13) 黒住昌史:寄稿「乳腺病理医の現況」,News Letter日本乳癌学会会報 4:11, 1999
14) Kronz JD, Westra WH, Epstein JI:Mandatory second opinion surgical pathology at a large referral hospital. Cancer 86:2426-2435, 1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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