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文献詳細

雑誌文献

臨床検査51巻1号

2007年01月発行

文献概要

今月の主題 乳癌と臨床検査 各論

乳腺細胞診の検体処理法(吹き出し法,剥がし法,すり合わせ法,圧挫法,オートスメア法)の検討

著者: 前田昭太郎1 柳田裕美1 片山博徳1 内藤善哉2

所属機関: 1日本医科大学多摩永山病院病理部 2日本医科大学病理学教室第二

ページ範囲:P.61 - P.69

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 わが国では乳腺腫瘍の確定診断に際し,最初に穿刺吸引細胞診が行われるのが一般的である.その理由は穿刺吸引細胞診の正診率が高く,簡便かつ安価であり,また迅速な診断が可能であるなど患者にとって組織診と比較して利点が多いことによる.

 乳腺細胞診の検体処理法としては通常吹き出し法,剥がし法,すり合わせ法が行われているが,どの処理法を行うかは施設によって異なる.しかし穿刺吸引材料の処理法によって細胞所見が異なるため,それぞれの処理法の特徴(長所,短所)を熟知していないと細胞診断上思わぬ落とし穴に陥るおそれがある.そこで本稿では,それぞれの検体処理法における細胞所見の特徴について解説した.

 乳癌では組織型診断のみならず,予後推定因子の検索も治療上,極めて重要である.当病理部では穿刺吸引細胞診で組織型診断を行うと同時に,細胞診材料を用いて①予後推定のための免疫染色(ER,PgR,HER2),②CISH法によるHER2遺伝子増幅,過剰発現の解析を行っているが,そのためには自動細胞収集装置を用いて細胞診標本を作製するオートスメア法が特に有用である.これらの事実は必ずしも周知されていないため,簡単に言及した.〔臨床検査 51:61-69,2007〕

参考文献

1) 前田昭太郎,横山宗伯,内藤善哉:臨床に呼応した迅速細胞診.日医大医会誌 1:102-109,2005
2) Maeda S, Hosone M, Katayama H, et al:Rapid diagnosis at the outpatient clinic for breast tumors by fine needle aspiration cytology. J Nippon Med Sch 65:416-420, 1998
3) 清水健,是松元子,小川さおり,他:乳腺穿刺吸引細胞診の診断精度向上に寄与する検体処理方法.日臨細胞会誌 43:20-28,2004
4) 前田昭太郎,細根勝,片山博徳,他:穿刺吸引材料の塗抹法とそれらが細胞診に与える影響.病理と臨床 23:611-614,2006
5) 田口鐵男:早期乳癌の全身性補助療法の動向―St. Gallenコンセンサス会議2005より.癌と化学療法 33:567-583,2006
6) Tsuda H:HER-2 (c-erbB-2) test update:Present status and problems. Breast Cancer 13:236-248, 2006
7) Katayama H, Maeda S, Hosone M, et al:Technical examination of HER2 status in breast cancer:An immunohistochemical study including correlations with cytological findings and estrogen receptor status. Thai-Japanese Workshop in diagnostic cytopathology 9:34, 2003
8) 前田昭太郎,片山博徳,岩瀬裕美,他:中皮腫の臨床診断―体腔液細胞診によるびまん性悪性中皮腫の確定診断方法を中心に.診断病理 23:167-176,2006
9) Katayama H, Maeda S, Iwase H:Basic examination of HER2 gene in breast carcinoma by chromogenic in situ hybridization. J Nippon Med Sch 73:2006 (in press)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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