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今月の主題 乳癌と臨床検査 トピックス
更年期障害に対するホルモン療法における乳癌の発生
著者: 加耒恒壽1 河野善明2 萩原聖子2
所属機関: 1九州大学医学部保健学科 2九州大学大学院医学研究院生殖病態生理学
ページ範囲:P.95 - P.98
文献購入ページに移動現在,更年期女性に対するエストロゲンとプロゲステロンを併用したホルモン補充療法(hormone replacement therapy;HRT)が乳癌発生のリスクの増加を伴うことは疑いの余地がない状況である1).1997年にCollaborative Group on Hormone Factors in Breast Cancerは51の疫学研究の分析から乳癌のリスクがホルモン治療を受けている女性で増加することの強いエビデンスを示した2).また乳癌のリスクは投与期間が長くなれば増加し,治療の中止で減少すると報告した.さらに2002年7月に大規模な無作為コントロール試験であるWomen’s Health Initiatives study(WHI)ではエストロゲンとプロゲステロンを併用したホルモン補充療法で乳癌の発生が増加したが,一方,エストロゲン単独療法では乳癌の増加はみられなかった3,4).これらの結果を受けて,乳癌発生のリスクが予想を超えたため,研究からこのエストロゲン・プロゲステロン併用療法のプログラムが中止された.米国でもこのことはメディアで大々的に取り上げられ,ホルモン補充療法を受ける女性が激減した.
本稿ではまず更年期障害に対するホルモン療法における乳癌の発生について大きな影響を与えたWHIの研究3)の内容を詳しく述べ,さらに重要な知見が得られた100万人を対象とした英国Million Women Studyの結果報告5)とわが国における状況についてふれる.
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