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文献詳細

雑誌文献

臨床検査51巻12号

2007年11月発行

文献概要

特集 遺伝子検査―診断とリスクファクター 3.遺伝子診断の実際 コラム

囊胞性線維症

著者: 竹田正秀1 茆原順一1 植木重治1

所属機関: 1秋田大学医学部臨床検査医学

ページ範囲:P.1426 - P.1426

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 囊胞性線維症(cystic fibrosis;CF)は常染色体劣性の遺伝性疾患であり,欧米においては出生児2,500人あたり1人の割合で発症する.現在その原因遺伝子として,cAMP依存性Clイオンチャネル(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator;CFTR)が単離され,本症は同遺伝子の変異によるものであることが判明している.CFの診断方法としては,臨床症候あるいは家族歴からCFを疑った場合,まず発汗試験を行い60mmol/l以上の高濃度のClを複数回検出すればCFと診断がなされる.一方,上記所見を満たさない非定型例も約2%存在し,その際CFTR遺伝子の変異の存在からCFと診断しえた症例が多く報告されていることから,遺伝子診断は本症において重要な診断根拠となる.CFTRの病的変異は約1,400種類存在するため変異の有無を検索することは容易ではないが,吉村らはPCR-SSCP(polymerase chain reaction-single strand conformation polymorphism)法,直接塩基解析法などによるCFTR変異の検出により,わが国では欧米で頻度の高い⊿F508変異の検出数は少なく,また欧米に稀な変異が存在することを報告している〔Therapeutic Research 26;1467-1475, 2005〕.地域や人種間でCFTR遺伝子変異の差異が認められるため,欧米人のスクリーニングシステムを用いてもわが国では変異が検出されない可能性が高い.そのためわが国独自のデータの集積とそれによるスクリーニング体制の確立が求められている.

 なおCFTR遺伝子変異に関する情報に関してはCystic Fibrosis Consortium(http://www.genet.sickkids.on.ca/cftr)やNCBIのデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/LocusLink/LocRpt.cgi)などを参照されたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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