特集 遺伝子検査―診断とリスクファクター
3.遺伝子診断の実際 コラム
Q熱(コクシエラ症)
著者:
高橋洋1
渡辺彰2
所属機関:
1坂総合病院呼吸器・感染症
2東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門
ページ範囲:P.1530 - P.1530
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Q熱は細胞内寄生菌であるコクシエラ菌(Coxiella burnetii)の感染に起因する動物由来感染症であり,インフルエンザ様上気道炎,肺炎,不明熱,肝炎など多彩な病型を呈する予後良好な熱性疾患である.本症の診断に際しては,病原体の分離が事実上困難であり,また,国内発症例では抗体価の上昇には時間を要する症例が多いことからPCR法が有力な補助診断法となる.16SrRNA,COM1,ICD,SODなど多数の標的遺伝子が異なるPCR系が報告されているが,筆者らは感度と再現性に優れたCOM1遺伝子増幅系を第一選択として多用している.血液,喀痰,咽頭粘液,気管支肺胞洗浄液,組織標本などの各種急性期患者検体を用いてコクシエラ遺伝子断片の検出が可能である.患者検体以外では動物由来の血液成分,排泄物,分泌物も検査対象となるため感染症の診断と同時に感染源となった保菌動物の検索も可能である.さらには生乳など食品成分をサンプルとした検討結果も報告されている.実際には動物由来検体ではsingle PCRで陽性が確認される場合もあるが,患者検体からの検出を試みる際にはほとんどの場合はnested PCRが必要となる.肺炎症例におけるPCR検索時の陽性率は気道検体のほうが血液検体よりは確率的には明らかに高いが,マイコプラズマ肺炎のように極めて高率に陽性化するものではない.したがって検出頻度を高めるためにはやはり良質の気道検体採取,血液や胸水,尿など気道外検体のPCRも併用するなどの対応が必要となる.