文献詳細
文献概要
今月の主題 血管超音波検査 話題
血管壁計測の新技術
著者: 長谷川英之1 金井浩1 市来正隆2 手塚文明3
所属機関: 1東北大学大学院工学研究科電子工学 2JR仙台病院 3仙台医療センター臨床研究部
ページ範囲:P.313 - P.317
文献購入ページに移動動脈硬化症における様々な病態は,血管壁に生じた動脈硬化性プラークの物理的な脆弱性(易破裂性)により引き起こされると考えられている.特に急性心筋梗塞・不安定狭心症・突然死など心血管イベントの発症は,脂質に富むプラークの壁が破裂し,血栓形成による血管内腔の一時的な狭窄あるいは閉塞に起因すると考えられており,プラークの易破裂性/安定性は動脈硬化の診断における重要なポイントの一つである.CTやMRI,従来の超音波断層法などはいずれも動脈壁の形状の観察が主であるが,もしプラークの機械的特性を計測し,易破裂性を経皮的に評価できれば,心筋梗塞や脳梗塞の発症を抑制できるものと期待できる.しかし,血管の硬さ(機械的特性の一つ)として臨床の場で従来測定されてきたものは,脈波伝搬速度(pulse wave velocity;PWV)1),動脈の内径変化の計測から算出された動脈壁の弾性率やstiffness parameter2)などの,血管長軸方向や横断面円周方向での平均的弾性特性であり,動脈硬化病変の局所弾性特性を評価できる臨床応用可能な方法は開発されていなかった.これに対し,われわれが開発した「位相差トラッキング法」では,心臓・血管壁の内部数百μm(超音波の波長オーダ)の厚さの層ごとの瞬時的な厚み変化(1拍内での数~数十μmの厚み変化)を経皮的に高精度に計測でき,壁にかかる脈圧を考慮することで,血管壁の層別の弾性率を描出することができる3~6).
本稿では,位相差トラッキング法について概説するとともに,経皮的に計測できる弾性率断層像から動脈壁内の組織を同定する非侵襲組織性状診断法“電子的染色法”7)について述べる.
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