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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査51巻6号

2007年06月発行

雑誌目次

今月の主題 骨粗鬆症と臨床検査

巻頭言

骨粗鬆症と臨床検査―予防と治療の確立に向けて

細井 孝之

pp.567-568

 骨量はすべての臨床検査データ中で加齢に伴う変化が最も大きなものの1つであり,本誌「臨床検査」で骨粗鬆症が取り上げられる意味はそのあたりにもある.加齢に伴う骨量減少を背景として発症する原発性骨粗鬆症の罹患者は,1,000万人ともいわれている.骨粗鬆症という病名の知名度は,一般にも決して低くはない.しかしながら,本症に関する診療が行き届いているとはいえず,国際的にも“under-treatment”の疾患として認識されている.高齢者人口の増加が続くなかで,罹患者がますます増えることが予想されるが,本症に関する啓発活動が続けられないかぎり,多病を特徴とする老年期疾患の診療の中に埋もれてしまう心配すらある.

 転倒や骨折は,加齢とともに増加し,高齢者人口が増加し続ける今日,ますます大きな問題になっている.骨粗鬆症は中高齢者における骨折の最大の原因疾患である.骨粗鬆症に伴う代表的な骨折は,脊椎の圧迫骨折,前腕骨遠位端の骨折,大腿骨頸部骨折である.わが国における大腿骨頸部骨折の発生数は,1987年約5万3,000例,1992年約7万7,000例,1997年約9万例,2002年約12万例と増加の一途をたどっており,その対策は喫緊のものである.

総論

骨粗鬆症とは(定義と分類)

福永 仁夫 , 曽根 照喜

pp.569-573

 骨粗鬆症の定義として,①「低骨量と骨微細構造の劣化」(国際コンセンサス会議),②「骨強度の低下と骨折リスクの増大」(NIHのコンセンサス会議),③脆弱性骨折,④骨形態計測,⑤X線写真の骨粗鬆化,⑥骨密度(WHOの診断カテゴリー),⑦脆弱性骨折の有無と低骨量(日本の診断基準)などが提唱されている.骨粗鬆症は,①原発性と続発生,②骨吸収亢進型と骨形成低下型,③骨代謝マーカーの測定値から分類される.

骨粗鬆症の頻度・発症原因・危険因子

藤原 佐枝子

pp.575-580

 わが国では,70歳代の女性の約30%は骨粗鬆症とされ,非常に頻度の高い疾患である.しかし,10年前に比べると骨粗鬆症の有病率は低下している.これは,日本人の栄養摂取の増加による体格の向上などによって,骨密度が増加したためである.骨密度に影響を与える因子として,遺伝的要因,年齢,性,体重,喫煙,過度の飲酒,低身体活動性,エストロゲン欠乏,カルシウム不足などが知られている.

診断・検査

骨粗鬆症の診断―日本のガイドライン

正木 秀樹 , 三木 隆己

pp.581-586

 高齢化社会が進むなか,臨床の場において骨粗鬆症を罹患している患者に遭遇する頻度は高まっている.骨粗鬆症の診断には,骨量(骨密度)の測定と脊椎X線による骨折の有無を評価する必要があり,さらに,血液検査にて続発性骨粗鬆症を除外する必要がある.その方法については,日本骨代謝学会より作成されており,本稿では,2000年度改訂版骨粗鬆症診断基準1)を中心に原発性骨粗鬆症の診断基準について記載する.

骨粗鬆症の検査法(放射線学的検査)

伊東 昌子

pp.587-591

 骨粗鬆症の診断あるいはモニタリングとしての放射線学的な検査には,X線写真による骨折リスクの評価,dual X-ray absorptiometry(DXA)をはじめとする骨密度測定および,X線写真またはcomputed tomography(CT)による骨ジオメトリーの評価法がある.X線の撮像条件は結果に大きく影響し,適切な条件下での検査を行うことは重要である.

骨粗鬆症診断の生化学検査

松本 貴行 , 渭原 博

pp.593-598

 骨粗鬆症は加齢や閉経後に生じる原発性骨粗鬆症と,薬剤や種々の疾患を原因として引き起こされる続発性骨粗鬆症に分けられる.続発性骨粗鬆症は進行が速く重症化するため適切な診察と画像診断,そして血液・尿検査(生化学検査と骨代謝マーカー)による鑑別診断が必要とされる.定期的な血液・尿検査は,骨粗鬆症の予防に有効である.

骨粗鬆症診断の骨代謝マーカー

片山 善章

pp.599-606

 特異性の高い骨代謝マーカーの出現により,骨粗鬆症治療の治療薬剤の選択・治療効果判定が可能となり,5種類の骨代謝マーカーの保険点数が認められている.骨密度測定と骨代謝マーカー測定により骨代謝回転を評価して,骨粗鬆症は代謝性骨疾患の1つであることが明らかになってきた.したがって,骨代謝状態を調べるには血液や尿で検査ができるといえるようになった.本稿の大部分は,文献「骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適性使用ガイドライン(2004年度版),Osteoporosis J 12:191-207, 2004」を参考にして記述したことを付記する.

治療・予防

骨粗鬆症の治療と予防―産婦人科の立場から

岡野 浩哉 , 太田 博明

pp.607-613

 2006年10月に『骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2006年版』が刊行された.今回のガイドライン改訂における特徴は,「脆弱性骨折予防のための薬物開始基準は,骨粗鬆症診断基準とは別に定める」とした点で,そのために骨折の危険因子を明確にしたことと,各治療薬剤のエビデンスレベルを検証し,推奨の度合いでグレード分類したことである.骨量減少者の管理に対応した「低骨密度+危険因子」という治療開始基準の明記は,実地臨床家にとって待望のものである.

骨粗鬆症の治療と予防―整形外科の立場から

中村 利孝

pp.615-619

 骨粗鬆症の骨折は強度の低下した骨に,転倒などによる外力が作用して生じる.最近,転倒頻度の高い高齢者では,バランス訓練により転倒頻度を減少させることができるという報告が増加しつつあり,太極拳では2~3か月で筋力が増加し,4か月以降では転倒頻度を40%程度低下する傾向が見られている.整形外科を受診する高齢の骨粗鬆症例では,薬物治療とともに転倒頻度低下をめざした運動療法による介入も必要である.

話題

グルタミン酸と骨粗鬆症との意外な関係

森山 芳則

pp.621-625

1.はじめに

 2006年秋,骨の恒常性にかかわる新しい制御機構に関する論文を発表した1).その内容を報じたTVや新聞記事,例えば,「グルタミン酸骨の溶解防ぐ(うま味だけじゃない)」(読売,2006年9月8日)をご記憶の方もいらっしゃると思う.この見出しにあるように,日本が世界に誇る調味料・昆布のうまみ成分であるグルタミン酸が骨消化を抑制していることを発見した.誤解されると困るのだが,グルタミン酸を調味料としてどんどん使うと骨粗鬆症が予防できるということではない.グルタミン酸が骨消化を抑制するシグナル伝達因子となっており,その抑制系が働かなくなると骨粗鬆症になってしまうということである.本稿では,グルタミン酸と骨粗鬆症との思いがけない関係について,その発見の経緯と概要について述べる.

ダイエットと骨粗鬆症

塚原 典子 , 江澤 郁子

pp.627-630

1.はじめに

 近年わが国は,若年者中心に痩身ブームで,やせ願望の強い者が多く,国民健康・栄養調査報告1)では20歳代の女性の約2割は低体重(body mass index;BMI<18.5以下のやせ)を示し,さらには10年前に比べても,20~40歳代女性で低体重が増加している現状が明らかとなっている.低体重は,とくに思春期を中心とした若年女性では,摂食障害を引き起こすなどの弊害が生じる可能性や,妊娠可能な女性の低出生体重児出産のリスクを高めることなども懸念され,大きな問題となっている.このような現状は,骨の健康にも悪影響を及ぼす深刻な問題として危惧されるところである.

日常生活における骨粗鬆症と健康・食事

白石 弘美 , 久保 宏隆

pp.631-639

1.はじめに

 骨粗鬆症の原因は,国民栄養調査からも栄養素の過不足が指摘されており1),日常生活での不適切な栄養摂取と,運動量の減少が危険因子とされている.骨粗鬆症の発症と合併症の骨折は,個人の社会生活におけるADL(activities of daily living:日常生活活動)とQOL(quality of life:生活の質)を著しく低下させることとなる.21世紀の日本人の平均寿命が世界一の長寿になるに及び,閉経後女性の余命の長期化に伴いADL・QOLの向上,維持には原発性骨粗鬆症(疾患を原因とした2次性骨粗鬆症以外)を予防する必要がある.

 この骨粗鬆症によって起こるQOLの低下を,各因子から評価する領域として,①身体面,②機能面,③社会面,④心理面など表12)にまとめたような評価領域の指標が挙げられる.特に骨粗鬆症ではADLの障害が,気分や気持ちに影響を与え,加齢とともに“うつ状態”に陥ることが少なくない.ここでは精神的・健康的な生活を送る目標として,表2に示した「健康日本21」の現状や骨粗鬆症予防のため,日本人の食事摂取基準3)にそった自己管理としての生活習慣全体を見直す栄養・食事管理について考えてみた.

今月の表紙 腫瘍の細胞診・6

呼吸器腫瘍―2

市川 美雄 , 海野 みちる , 坂本 穆彦

pp.564-566

 呼吸器腫瘍-1では,原発腫瘍の大半を占める扁平上皮癌,腺癌,小細胞癌,大細胞癌について記述した.本稿の呼吸器腫瘍-2では,比較的稀な腫瘍と転移性腫瘍について記述する.

1.腺扁平上皮癌(Adenosquamous carcinoma)

 腺癌細胞と扁平上皮癌細胞が混在して出現する(図1).腫瘍細胞は,腺癌および扁平上皮癌の基準を満たすものである.

 細胞診では,扁平上皮癌細胞の細胞質内空胞や腺癌細胞の細胞質が好酸性を呈するなどの,変性による細胞質の変化をとらえて,腺扁平上皮癌と診断しないように注意が必要である.また,優位を占める悪性細胞の組織型に目が取られ,少数しかみられない組織型を見落とさないことが重要である.

シリーズ最新医学講座 臓器移植・6

臓器移植(総論):合併症―移植の感染

熊谷 直樹 , 斉藤 和英 , 高橋 公太

pp.641-647

はじめに

 臓器移植は,末期臓器不全患者の廃絶した機能を提供者(ドナー)から移植した臓器により置換し,代行させる治療法である.例えば腎移植では,1954年に一卵性双生児間の移植をMurrayらが初めて成功させて以来,今日では末期腎不全に対する最良の治療法として確立されており,わが国では現在,心臓,肺,肝臓,膵臓(膵島),小腸移植が施行されている.移植療法には必ず臓器を提供するドナーが必要であり,提供者が生存中の家族である場合(生体腎移植)と死の直後である場合(脳死・心臓死移植)がある.わが国では臓器移植適応患者数に対する移植総数が極めて少なく,なかでも死体移植が極端に少ないのが現状である.わが国でも1995年より日本腎臓移植ネットワークが発足し,1997年には脳死ドナーからの多臓器提供を定めた臓器移植法の施行に伴い,日本臓器移植ネットワークとして改組された.しかし,献腎移植数は年間120~150例前後で,脳死移植も約50例/10年と低迷しており1),今後これらを増加させること,また臓器移植の恩恵を享受した移植患者(レシピエント)の長期成績を向上させることが最大の課題である.新規免疫抑制療法の導入2)により拒絶反応の抑制は容易になり,移植成績も向上したが,免疫抑制療法に伴う生体防御機能低下に起因して生じる,感染症対策の進歩も移植成績を安定させる大きな要因である.移植後に合併する感染症には病原体,また発生時期などにいくつかの特徴が認められており,そこでそれを熟知し,早期に対応することは患者管理において重要である.

研究

血栓の形態学的特徴と疾患との関連性について

畠 榮 , 岩知道 伸久 , 定平 吉都 , 竹本 千亜紀

pp.648-653

 血栓形成機序の異なる播種性血管内凝固症候群(以下DIC),血栓性血小板減少性紫斑病(以下TTP),急性冠症候群ならびに急性肺動脈塞栓症を対象に,各疾患で認められる血栓の病理組織学的特徴と抗血小板抗体等の免疫組織染色を用いて,疾患と血栓の種類の関連性を明らかにする目的で比較検討した.DICで認められる血栓はMasson染色,PTAH染色で陽性を示し,免疫組織学的には抗vWF抗体,抗CD42b抗体弱陽性のフィブリン血栓であった.TTPは抗CD42b抗体陽性の血小板が主体血栓であった.急性冠症候群の初期で処置された血栓は,抗CD42b抗体陽性の血小板が主体であったが,一般的にはPTAH染色で青紫色,抗vWF抗体陽性のフィブリン血栓で構成されていた.急性肺動脈塞栓症例では混合血栓であった.フィブリン血栓と血小板血栓を区別するには,PTAH染色と抗血小板抗体(CD42b)を併用することで鑑別が可能であった.

編集者への手紙

肝炎ウイルス血症における血清アミノトランスフェラーゼ値の上昇の機序について

小林 正嗣 , 木村 隆

pp.654-655

1.はじめに

 血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase;AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase;ALT)の変動について,先に筆者ら1)は,脂質代謝関連蛋白,特に中性脂肪水解酵素(triglyceride lipase)-肝性リパーゼ(hepatic triglyceride lipase;HTGL),リポ蛋白リパーゼ(lipoprotein lipase;LPL),ホルモン感受性リパーゼ(hormone sensitive lipase;HSL),および,脂肪トリグリセライドリパーゼ(adipose triglyceride lipase;ATGL)の産生に伴うアミノトランスフェラーゼの誘導(産生)が考えられることを述べた.

 すなわち,集団健診のbody mass index(BMI)区分別のAST/ALT比(ASTとALTの各平均値の対比)1)と中性脂肪水解酵素蛋白分子のアスパラギン酸(aspartate;Asp)とアスパラギン(asparagine;Asn)の残基数の和とアラニン(alanine;Ala)の残基数との比,すなわち,(Asp+Asn)/Ala比(表1)1)との間に関連性が推定されることから,血清アミノトランスフェラーゼが主として,HTGLやLPLなどの中性脂肪水解酵素蛋白の産生に伴い誘導され,血中に遊出したものである可能性が考えられることを述べた.

 本稿では,肝炎ウイルス血症における血清アミノトランスフェラーゼ値の上昇についても中性脂肪水解酵素の産生に伴う上昇である可能性が考えられることを述べる.

コーヒーブレイク

古きに若くはなし

屋形 稔

pp.614

 中国の古人の言に,「衣は新しきに若(し)くは莫(な)く,人は古きに若くは莫し」というのがある.まことに古いつきあいの人は得難い宝であることを昨今痛切に感ずる.一方,高齢化社会になったため90歳以上にならないと老人の仲間に入らず,それ以下は昔でいう壮年であることも有難い世ではある.

 私に臨床検査の仲間ができてきたのは昭和35年頃からであるから,おいおい半世紀になる.したがって懐かしい仲間の数も増え,追憶が豊かになってゆくのも幸せなことである.当初は仲間の会合も新潟に限られていたが,次第に隣国から遠国へと伸び交遊も拡大してゆくことになった.

海外文献紹介

Helicobacter pylori感染の検出のための生検に基づく方法の比較 フリーアクセス

鈴木 優治

pp.619

 H. pylori感染は世界中に広がり,ヒトの半数の胃に検出され,胃炎,十二指腸潰瘍,胃癌などを引き起こす.この細菌の検査法には種々のものがあるが,著者等は生検に基づく方法の感度,特異度,陽性的中率(PPV)および陰性的中率(NPV)をH. pyloriの16S rRNA遺伝子のPCRを基準に比較した.検討対象は消化不良症状を有する患者75人(男49人,年齢17~77歳)とした.内視鏡検査中に採取した胃前庭部の試料は40%尿素溶液を含む尿素寒天培地(尿素検査),市販迅速ウレアーゼ検査,組織学的検査およびPCRにより試験した.尿素検査の感度,特異度,PPV,NPVはH. pylori感染の診断が市販迅速ウレアーゼ検査および組織学的検査でなされたときにはそれぞれ97%,86%,84%,97%であった.市販迅速ウレアーゼ検査の感度,特異度,PPV,NPVは,H. pylori感染の診断が尿素検査および組織学的検査でなされたときにはそれぞれ100%,82%,80%,100%であった.尿素検査は市販迅速ウレアーゼ検査に匹敵する性能を示し,安価で迅速なウレアーゼ検査として使用できる.

A群β溶血性レンサ球菌により引き起こされる咽喉感染のより良い診断検査 フリーアクセス

鈴木 優治

pp.625

 レンサ球菌性咽頭炎は,主にA群β溶血性レンサ球菌(GABHS)が原因の口腔咽頭や鼻咽頭の急性感染である.この感染は急性リウマチ熱および急性レンサ球菌感染後糸球体腎炎の原因になり,この菌を確実に検出することが重要である.しかし,咽喉培養には結果に影響する因子の存在や偽陽性や偽陰性の問題がある.著者らは,咽喉培養およびASO抗体力価を基準試験として,咽喉痛患者における迅速抗原診断試験(RADT)の診断価値およびGABHSにより起こる咽喉感染の治療によく使用される抗生物質の効力を評価した.検討では,4~15歳の患者355人を対象に4つの臨床像(熱履歴,咳,扁桃滲出液,前頸リンパ節腫症)を記録し,咽喉培養とともにRADTを実施した.GABHS陽性率は咽喉培養19%,RADT 24%であった.咽喉培養を基準にすると,RADTは感度91%,特異度91%,陽性的中率73%,陰性的中率98%であったが,3あるいは4つの臨床像を有する患者の感度は97%であった.ASO抗体力価を基準にすると,RADTと咽喉培養には関係は見いだせなかった.Zithromaxは最も処方率が高く,高感受性を示した.

葉酸塩およびビタミンB12の生物マーカーは血液と脳脊髄液において関連する フリーアクセス

鈴木 優治

pp.639

 脳機能に重要な微量栄養素である葉酸塩およびビタミンB12はホモシステイン(HCY)代謝の必須物質であり,HCY増加は神経および精神疾患に関係する.著者らは脳における葉酸塩およびVB12の役割について検討した.検討では,腰椎穿刺を受けた患者72人の血液と脳脊髄液(CSF)を試料としてHCY,メチルマロン酸(MMA),シスタチオニン,S-アデノシルメチオニン(SAM),S-アデノシルホモシステイン(SAH),葉酸塩およびVB12を測定した.HCY,SAH,シスタチオニンおよびホロトランスコバラミン濃度は,血清・血漿よりもCSFのほうが低値であったが,MMAおよびSAM濃度はCSFのほうが高値であった.CSFのHCY濃度は,CSFの葉酸塩(r=-0.46),SAH(r=0.48)およびアルブミン(r=0.31)および年齢(r=0.32)と有意に相関していた.CSFのMMAとホロトランスコバラミン濃度に相関はなかった.高齢はCSFのHCYとSAHの上昇およびCSF葉酸塩の低下に関係していた.血清とCSFの葉酸塩濃度の相関は血清葉酸塩濃度に依存し,血清濃度が15.7nmol/l以上の場合には,r=0.69であった.これらの変化は低葉酸塩状態を示す重要な指標である.

あとがき フリーアクセス

片山 善章

pp.662

 骨粗鬆の「粗」,「鬆」はどのような意味があるのか,漢和辞典や広辞苑で調べてみた.「粗」の「そ」は大体意味は理解できる.「粗(あら)い」「こまかでない」あるいは「密」の対語であると記載されている.骨の骨塩量を測定する骨密度測定の「密」は「粗」の対語で名称がついている検査法である.「鬆」は「しょう」と読み「粗い」という意味で,「す」とも読むとあり,意味は「大根や牛蒡(ごぼう)などの芯に生じる孔(空洞)」である.骨粗鬆症は骨の構造から見ると,海綿骨の細かい網目状のネット構造が崩れて,網目の粗い構造に変化して骨が弱くなると説明されているが,牛蒡を輪切りにした状態で,外皮の部分が皮質骨,中心に向かって海綿骨に相当し,上品質で目詰まりが細かいのが正常であり,品質の悪い牛蒡が骨粗鬆症であると想像すればリアルである.

 80歳の高齢者が,寝返りしたのが原因で肋骨を骨折した.X線撮影の結果は,第11,12肋骨が完全に骨折している.本人は激痛で顔が引きつっている.骨粗鬆症は明らかであるが,治療はどうするのか.鎮痛剤で痛みを抑えて自然に痛みが消失するのを待つだけ.何とも痛ましい事故?で,本人も大変だが家族も気が滅入ってしまう.高齢者骨折は様々な要因によって起こるので,日常生活の環境づくりに十分な配慮が必要である.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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64巻12号(2020年12月発行)

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今月の特集1 やっぱり大事なCRP
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今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

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63巻9号(2019年9月発行)

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今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

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今月の特集2 COPDを知る

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63巻3号(2019年3月発行)

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今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

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増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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