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文献詳細

雑誌文献

臨床検査52巻1号

2008年01月発行

文献概要

今月の主題 インフルエンザ診療のブレークスルー トピックス

新型インフルエンザ:長野県の対策戦略と課題

著者: 高橋央1

所属機関: 1長野県立須坂病院感染制御部

ページ範囲:P.93 - P.96

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1.次のインフルエンザ大流行は甚大な災害となるか?

 人類は前世紀の百年間だけでも1918年のスペインカゼ(A/H1N1),1957年のアジアカゼ(A/H2N2),1968年の香港カゼ(A/H3N2)と,世界的な大流行(パンデミック)を3度も経験している.今世紀に大流行が再び起こる可能性は十分にある,と考えるのが妥当であろう.日本人にとっては大震災とともに,避けられない災難なのである.自然災害の多くは,被害が地域や国単位に限局され散発的に発生する.感染症の大流行は同時に全世界へ拡がるので,諸外国からの救援もそう期待できない.

 感染症による災害のなかで,性感染症のように個人によってリスク差が大きい感染症の流行では,梅毒の場合は世紀単位,今日の新興感染症の代表格であるHIV(human immunodeficiency virus)エイズでも十年単位で,世界中に拡散した.ところがインフルエンザの場合,潜伏期が1~2日と短い呼吸器感染症であるため,感染リスクの個人差は比較的小さく,爆発的に流行する.最近十年間に最大規模で流行した2004~05年のインフルエンザ・サーベイランスデータをみても,病院受診者は1~2週間で数十倍(対数表示で1目盛超)になっている(図1).また2004年にアウトブレイクしたSARS(serere acute respiratory syndrome)と同時期から散発している鳥インフルエンザA/H5N1を比較しても,患者の年齢層や死亡率に違いがあることがわかる(表1).

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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