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血清レチノール濃度低下は腎移植者の死亡率増加と関係する
著者: 鈴木優治1
所属機関: 1埼玉県立大学短期大学部
ページ範囲:P.84 - P.84
文献購入ページに移動 腎移植の成否は拒否反応を避けるための十分な免疫抑制の達成と感染または腫瘍発生から腎移植患者を保護する十分な免疫能力レベルの維持との間のバランスに依存する.腎移植後の主要死亡原因は冠状動脈疾患,感染,腫瘍である.ビタミンAは上皮統合性および免疫機能において中心的役割を担っており,適当なビタミンA濃度は腎移植患者において重要と考えられる.著者らは腎移植患者における血清レチノール濃度とすべての死亡との間に関係があるかどうかについて検討した.血清レチノール濃度は追跡中に生存していた移植患者よりも死亡した移植患者のほうが低値であった.Kaplan-Meier分析により,血清レチノール濃度は死亡率の高度予測因子であることが示された.また,Cox多変量回帰分析においては血清レチノール濃度低下は従来の冠状動脈疾患危険因子,高感度CRP値および推定GFR値の調整後に全死亡の高度予測因子として有意であった.血清レチノール濃度は腎移植患者における全死亡の独立的な高度予測因子であり,その濃度増加は抗炎症機構または抗感染機構を介して生存利得をもたらすと考えられた.
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