文献詳細
文献概要
今月の表紙 臨床微生物検査・12
多剤耐性緑膿菌
著者: 平泻洋一12
所属機関: 1東北大学大学院内科病態学講座 感染制御・検査診断学分野 2東北大学病院検査部
ページ範囲:P.1518 - P.1520
文献購入ページに移動1.多剤耐性緑膿菌とは?
緑膿菌は黄色ブドウ球菌とともに臨床材料から最も高頻度に分離される細菌である.敗血症,肺炎,慢性気道感染症,胆道系感染症,皮膚軟部組織感染症,眼科領域感染症など,多彩な感染症の原因となる.図1は慢性気道感染症の患者の喀痰のグラム染色像であるが,慢性・持続性感染症では緑膿菌はしばしばこのようにムコイド状の外観を呈する.現在,緑膿菌感染症に対しては,一部のセフェム系薬(モダシンTMなど),カルバペネム系薬(メロペンTMなど),フルオロキノロン系薬(シプロキサン注TMなど),アミノ配糖体系薬(アミカシンなど)が使用されるが,これらに耐性を示す場合,現存の抗菌薬では治療効果が期待できない.
1999年に施行され,2003年10月に改定された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」では,カルバペネム,フルオロキノロン,アミノ配糖体の3系統の抗菌薬に耐性を示すものを多剤耐性緑膿菌(multidrug-resistantPseudomonas aeruginosa ;MDRP)とし,これによる感染症を「薬剤耐性緑膿菌感染症」として5類感染症に分類し,定点報告の対象とした.表1に感染症法による検査室での判断基準を示す1).
緑膿菌は黄色ブドウ球菌とともに臨床材料から最も高頻度に分離される細菌である.敗血症,肺炎,慢性気道感染症,胆道系感染症,皮膚軟部組織感染症,眼科領域感染症など,多彩な感染症の原因となる.図1は慢性気道感染症の患者の喀痰のグラム染色像であるが,慢性・持続性感染症では緑膿菌はしばしばこのようにムコイド状の外観を呈する.現在,緑膿菌感染症に対しては,一部のセフェム系薬(モダシンTMなど),カルバペネム系薬(メロペンTMなど),フルオロキノロン系薬(シプロキサン注TMなど),アミノ配糖体系薬(アミカシンなど)が使用されるが,これらに耐性を示す場合,現存の抗菌薬では治療効果が期待できない.
1999年に施行され,2003年10月に改定された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」では,カルバペネム,フルオロキノロン,アミノ配糖体の3系統の抗菌薬に耐性を示すものを多剤耐性緑膿菌(multidrug-resistant
参考文献
1) 荒川宣親:薬剤耐性緑膿菌感染症.感染症の診断・治療ガイドライン2004(感染症の診断・治療ガイドライン編集委員会編,日本医師会感染症危機管理対策室/厚生労働省健康局結核感染症課 監),pp308-311,日本医師会,2004
. Antimicrob Agents Chemother 42:2006-2011, 1988
3) 平泻洋一,栁原克紀,松田淳一,他:長崎大学医学部・歯学部附属病院検査部におけるメタロ-β-ラクタマーゼの検出法と1991年から2005年の15年間におけるメタロ-β-ラクタマーゼ産生菌の分離状況.感染症学雑誌 82:285-291,2008
. Clin Infect Dis 37:26-32, 2003
掲載誌情報