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文献詳細

雑誌文献

臨床検査52巻4号

2008年04月発行

文献概要

今月の主題 歯科からみえる全身疾患 トピックス

ラクトフェリンによる口腔症状の緩和

著者: 玉置幸道12 北村政昭12 清水友12 安藤邦雄2

所属機関: 1昭和大学歯学部歯科理工学教室 2歯科ラクトフェリン研究会

ページ範囲:P.459 - P.464

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1.ラクトフェリンとは何か?

 ラクトフェリンは1939年に発見された,牛乳から単離された分子量約8万の糖蛋白質で,乳,涙など各種の分泌液および成熟好中球の顆粒に含まれている.特に,人の初乳はラクトフェリンを多量に含み,新生児は一日あたり7~10グラムのラクトフェリンを摂取している.個々の乳成分は単に栄養要求を充足するばかりでなく,多様な生理的機能性を持っている.哺乳類のなかで,人はラクトフェリンに対する依存度が非常に高いと推定される.

 ラクトフェリンは表1に示すように免疫賦活作用1),抗炎症作用2),鎮痛作用3),抗菌活性4),発癌予防5),癌による血管新生阻害6),脂質代謝改善7)などの多種多能な機能を有することが明らかとなり,免疫的寛容を導入する作用,癌ならびに慢性炎症により誘導される血管新生を阻害する作用,内因性および外因性のμオピオイド効果を増幅する作用など,多様な面を併せ持つ多機能蛋白質である.

参考文献

1) Brock J:Lactoferrin:a multifunctional immunoregulatory protein? Immunol Today 16:417-419, 1995
2) Hayashida K, Kaneko T, Takeuchi T, et al:Oral administration of lactoferrin inhibits inflammation and nociception in rat adjuvant-induced arthritis. J Vet Med Sci 66:149-154, 2004
3) 原田悦守,竹内崇:ミルクに含まれるラクトフェリンの脳内移行とその新規鎮痛作用.ペインクリニック 26:359-368,2005
4) Orsi N:The antimicrobial activity of lactoferrin:Current status and perspectives. Bio Metals 17:189-196, 2004
5) Tsuda H, Ohshima Y, Nomoto H, et al:Cancer prevention by natural compounds. Drug Metab Pharmacokinet 19:245-263, 2004
6) Shimamura M, Yamamoto Y, Ashino H, et al:Bovine lactoferrin inhibits tumor-induced angiogenesis. Int J Cancer 111:111-116, 2004
7) Takeuchi T, Shimizu H, Ando K, et al:Bovine lactoferrin reduces plasma triacylglycerol and NEFA accompanied by decreased hepatic cholesterol and triacylglycerol contents in rodents. Br J Nutr 91:533-538, 2004
8) 佐藤保,佐藤れえ子:口内炎および歯周炎に対するラクトフェリン応用の臨床的評価.日本歯科保存学会講演,1996
9) 池田祐子,玉置幸道,清水友,他:ラクトフェリンによる口腔疾患への新たなる試み.日本歯科評論 758:171-178, 2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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