約30年前までは,自己免疫による病気といえば関節リウマチや全身性エリテマトーデスをはじめとする膠原病くらいしか一般臨床家の間では知られていなかった.しかし,基礎研究の領域で免疫の仕組みが徐々に解明されるようになってから,膠原病のほかにギランバレー症候群・重症筋無力症等の神経疾患,バセドウ病・Ⅰ型糖尿病等の内分泌疾患,類天疱瘡等の皮膚疾患をはじめ多くの疾患が自己免疫により引き起こされていることが明らかとなってきた.さらに,近年ではこれまで全く学問的にも人的にも交流のなかった免疫と骨のつながりも明らかにされ,『Osteoimmunology』という領域が生まれるまでになってきた.
このなかで最も進歩してきた流れは,当初は実験室で基礎的にそれらの病態の自己免疫異常が証明されていたものが,すべての実地臨床家が検査できるようになってきたことである.これは基礎研究から臨床応用まで到達できた好例である.さらに,実験室のやり方からどこでも確実に行える方法が確立されるためには,蛋白の精製,実験器具・測定機器の進歩など多くの努力が払われており,それらすべての集大成として,われわれは現在わが国のどこにおいても質の担保された優れた検査をすることができている.