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シリーズ最新医学講座・Ⅰ 糖鎖と臨床検査・6
癌における糖鎖異常と臨床検査―フコシル化を中心に
著者: 森脇健太1 三善英知1
所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻機能診断科学講座
ページ範囲:P.699 - P.704
文献購入ページに移動糖鎖は翻訳後修飾を担う分子の中でもとりわけ重要な生体高分子であり,すべての組織・細胞に存在している.個体の発生・分化の段階でみられる糖鎖構造の劇的な変化はその生理的重要性をうかがわせるが,それだけでなく,癌・神経疾患・糖尿病などの数多くの疾患において異常な糖鎖が出現することから,各種疾患の病因・病態と糖鎖との深い関係が示唆されてきた.現在,臨床現場で使用されている腫瘍マーカーの多くは癌患者血液中にでてくる異常糖鎖に対するモノクローナル抗体を用いて測定されており,CA19-9やCA15-3がその代表例である.昨今隆盛を見せているプロテオミクスによるバイオマーカーの探索は蛋白質の量的変化に基づいて行われているが,早期癌における異常蛋白質の量的変化は極めて微量であるためその検出は困難と考えられる.しかし,そこに糖鎖修飾という概念を取り入れると(グライコプロテオミクス),蛋白質の質的変化をも捉えることができ,より疾患特異的マーカーを同定することが可能になる.
数多くある糖鎖の構成成分の中でフコースという単糖が付加されるフコシル化と呼ばれる反応は癌化に伴い変化し,癌における糖鎖構造の変化の中で最も重要なものの1つである.この現象を反映している代表例が肝癌におけるAFP(α-fetoprotein:α-フェトプロテイン)-L3分画(フコシル化AFP)の増加である.本稿では,なぜ肝癌特異的にAFP-L3分画が出現するのかという観点からフコシル化の分子機構について概説し,また,糖鎖を標的とした腫瘍マーカーとして近年新たに同定され,その臨床応用が期待されているいくつかをご紹介したい.
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