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文献詳細

雑誌文献

臨床検査52巻6号

2008年06月発行

文献概要

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あとがき

著者: 濱崎直孝

所属機関:

ページ範囲:P.718 - P.718

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 “エピジェネティクス”という言葉は1900年代後半に出版された生化学辞典や分子細胞生物学辞典の初版に掲載がないので,耳慣れない新しい言葉と感じる方も少なくないと思われる.生化学辞典 第4版(東京化学同人)によれば,「エピジェネティクス(epigenetics)とは,遺伝学(genetics)にエピ(epi-)という接頭語(外,あるいは,上の意味)を付けた新しい用語.遺伝学が遺伝子(変異)に直接起因する表現型を扱うのに対して,遺伝子配列だけでは決まらない表現型,または同一の遺伝子から異なる表現型が生じる機構などの解析を対象とする学問領域」と定義してある.硬い説明で要を得ないが,エピジェネティクスは哺乳類のゲノムインプリンティングや個体発生,細胞分化などの機序に対する研究領域で重要な概念である.要するに,エピジェネティクスは固有の遺伝子配列をもつ受精卵から成体にいたるまでの分化の過程で,同じ遺伝子から顔や手足の形成,頭部の方向性や各臓器の位置決定などに支配的な役割を果たしているものである.この過程はエピ(epi-),すなわち,遺伝子の外の機能で原則的にDNA配列の変化を伴わない,転写因子の選択や発現調節を通してなされる.経験的にわれわれは,「われわれの存在は根本的なところでは遺伝子で規定されているけれども,それだけではない」ことを肌で感じている.その感じがエピジェネティクスで説明できはじめたのである.エピジェネティックの機能は分化発生の完成とともに原則的には消失する.しかしながら,エピジェネティクスは成体においてもなお生理機能や疾病,老化現象などに関係することが明らかになり,いまや最も注目されている研究領域である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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