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あとがき フリーアクセス
著者: 伊藤喜久
所属機関:
ページ範囲:P.832 - P.832
文献購入ページに移動今月の特集は「腎移植」です.QOLの改善,患者予後,医療経済などあらゆる面から透析療法を凌駕します.他臓器に比べ,はるかにアクセスしやすい臓器です.もう20年前ですが,腎移植から生着まで尿中蛋白プロフィルを長期間追ったことがあります.普段の生活になんら支障なく過ごすことができる成功例でも,実はほとんどのケースは異常値を示しており,原疾患は何であれ,移植は末期腎不全から腎機能低下の初期段階に戻ってリスタートする治療であり,再び腎不全に至るには年余にわたるため,結果として残りの人生を十分健康な生活を保障しうるものとなります.この優れた治療法が,日本においてはなかなか定着しない.さらにいっそう生着率を高めるためには,拒絶反応と免疫抑制剤副作用,ドナーなどの問題が立ちはだかります.今やiPS細胞に夢を託して自己の腎臓を移植する飛躍的な発展の時代を目の前に迎えています.すべての移植治療のパイオニア的な役割をはたしながら,近い将来腎疾患の治療体系の中核となるのではないでしょうか.厳密にはホモとは言えない移植片に対し,これまでには経験し得ない新たな病態が出現し,ここから臨床検査も活性化し続けるはずです.
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