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シリーズ最新医学講座・Ⅰ 糖鎖と臨床検査・8
癌グライコーム研究へのレーザーマイクロダイセクション法の応用と大腸癌組織に見いだした新規な酸性糖脂質糖鎖構造
著者: 是金宏昭1 宮本泰豪2 谷口直之1
所属機関: 1大阪大学微生物病研究所疾患糖鎖学(生化学工業)寄附研究部門 2大阪府立病院機構大阪府立成人病センター研究所免疫学部門
ページ範囲:P.927 - P.934
文献購入ページに移動真核生物における蛋白質の多くは,その機能発現に生合成後の修飾およびプロセッシングが必須であることが明らかになってきている.病態形成をはじめとした様々な生命現象を分子レベルで理解していくにはゲノム中心の研究に加えて,これを補う蛋白質翻訳後修飾の研究が必要不可欠である.リン酸化,メチル化,硫酸化,ニトロ化,ニトロシル化など,多様な翻訳後修飾反応の中で,糖鎖付加反応は最も高頻度な修飾形態の一つであることが知られている.細胞の糖鎖構造は生理的状態や病態に依存して質的および量的に大きく変動する.例えば癌化に伴う細胞表面糖鎖の癌性変化は古くからよく知られており,これらの癌関連糖鎖の中にはCA19-9として知られるシアリルLea糖鎖のように,すでに腫瘍マーカーとして実地医療で利用されているものもある.近年,盛んになっている臨床癌試料を用いた糖鎖の発現プロファイリングの試みは,新規腫瘍マーカーの開発や治療標的分子の発見につながる可能性がある.しかし,臨床癌試料を用いて糖鎖プロファイリングを行う際に,注意,解決しておかねばならない点は多い.本稿では癌グライコーム研究において,今後,盛んに利用されると予想されるレーザーマイクロダイセクション(laser microdissection;LMD)法の有用性についてと,われわれが大腸癌の糖脂質構造解析の過程で発見した新規の酸性糖脂質構造について概説したい.
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