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文献詳細

雑誌文献

臨床検査53巻1号

2009年01月発行

文献概要

今月の主題 ウイルス感染症─最新の動向 総論

ウイルス感染と自然免疫

著者: 藤井暢弘1 横田伸一1 横沢紀子1 岡林環樹1

所属機関: 1札幌医科大学医学部微生物学講座

ページ範囲:P.17 - P.27

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 ウイルス感染に対する生体の防御機構は,感染初期においては自然免疫系が機能し,感染後数日を経て獲得免疫の成立に至る.自然免疫としては,まず生体に恒常的に存在している,補体,生体防御レクチン,NK細胞等がウイルスや感染細胞に対応する.さらに,病原体関連分子パターン(ウイルス蛋白や核酸)を上皮細胞,血管内皮細胞や免疫担当細胞に発現している病原体認識受容体(TLRsやRIG-I等)が感知しサイトカインの産生誘導が生じ,サイトカインネットワークを介して免疫担当細胞の成熟・活性化を起こし獲得免疫の成立を促す.一方,サイトカインの一種であるインターフェロンは強力な抗ウイルス効果でウイルスの増殖・拡散を阻止する.しかし,ウイルスはこれらの自然免疫系の多くの機能を抑制・撹乱する戦略を構築し,両免疫機構から逃れる能力を備えている.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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