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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査53巻11号

2009年10月発行

雑誌目次

特集 医療・福祉施設における感染制御と臨床検査

巻頭言

感染制御活動における微生物検査の意義

岩田 敏

pp.1215-1216

 医療における質の高い感染制御への取り組みは,患者サービス向上のみならず医療経済学的な観点や病院経営健全化の観点からも極めて重要な課題である.近年の感染制御はエビデンスに基づく感染対策と効果検証が不可欠であり,医療関連の感染制御の実践に際し,医師,看護師,薬剤師,臨床検査技師,事務職を含めた医療従事者が総力を結集する取り組みが求められている.わが国の多くの医療機関では,院内感染対策委員会および実働部隊としてのインフェクション・コントロール・チーム(Infection Control Team;ICT)が組織化され活動しているが,こうした委員会や組織が機能を発揮するためには,感染制御に関する職域毎の専門的な知識・技能を有する人材の育成と相互の協力が不可欠である.

 近年,感染制御に携わる医療従事者の分野ごとに資格制度が制定され,急速に普及しつつある.1999年に発足したICD制度協議会によるインフェクション・コントロール・ドクター(Infection Control Doctor;ICD),2000年に発足した日本看護師協会による日本看護協会認定感染管理認定看護師(Infection Control Nurse;ICN),2005年に発足した日本病院薬剤師会による感染制御専門薬剤師(Board Certified Infection Control Pharmacy Specialist;BCICPS)に加えて,日本臨床微生物学会では,2006年1月より感染制御認定臨床微生物検査技師(Infection Control Microbiological Technologist;ICMT)制度を発足させ,専門的な知識・技能を持った認定臨床微生物検査技師の育成と感染制御活動への貢献を図っている.この制度は,認定臨床微生物検査技師制度協議会(日本臨床微生物学会,日本臨床衛生検査技師会,日本臨床検査医学会,日本臨床検査同学院)が,「臨床微生物学と感染症検査法の進歩に呼応し,これらに関連する臨床検査の健全な発展普及を促し,有能な認定臨床微生物検査技師の育成を図り,より良質な医療を国民に提供すること」を目的として発足させた認定臨床微生物検査技師制度を土台として作られた制度で,医療関連施設内の感染制御に実務的に積極的に取り組んでいる認定臨床微生物検査技師のうち必要条件を満たした者を,医療関連施設における感染制御に強くかかわる臨床微生物検査技師であるとして位置づけ,認定するものである.ICMT資格制度の制定により,各医療関連施設における認定臨床微生物検査技師の認知度を高めるとともに,ICD, ICNおよびBCICPSと協調し,ICMTの資格を持った検査技師一人一人が,より質の高い効率的な感染制御を実践する責務を果たすことが期待されている.

総論 1.感染制御とは

感染制御とは

砂川 慶介

pp.1219-1223

はじめに

 2009年1月,東京都町田市の施設でインフルエンザウイルスによる院内感染,福岡での多剤耐性のアシネトバクターによる院内感染,2月には群馬県高崎市でのノロウイルスによる院内感染が次々とマスコミを賑わし,4月に入るとブタ型インフルエンザ(新型インフルエンザ)の世界的流行が報道され,社会の関心も感染に集中していた.

 ひとたび院内感染が発生すると,医療を受ける側にとっては感染に伴う苦痛に加えて,在院日数の延期,医療費の増加,後遺症や死亡率の増加など不利な面が増大する.一方,医療を行う側にとっても感染のリスクに加え,原因の解明やその対策に追われ多くの時間を割かれ,病院にとっては治療費の負担や,損害賠償,時には風評による受診者数の減少や転医の増加など望ましくない事態に陥る.

 院内感染が増加した要因として,医療従事者や社会の院内感染に対する認識の向上に伴う検出率の向上とともに,宿主の面からは易感染状態の宿主が院内に増加したこと,医療行為の面からはカテーテル挿入や人工呼吸器の使用など感染リスクの高まる処置や,免疫機能を低下させる薬剤の投与,原因微生物(特に細菌)の面からは治療に難渋する耐性菌の院内での定着・増加,環境の面からはワクチンにより感染症の発生数減少に伴う伝染性疾患の見落としや新興・再興感染症の出現での対応の遅れなどが考えられている(表1).

 このような状況下で,感染対策(感染制御)はどの医療機関にとっても重要な問題となりつつある.前述のとおり,ひとたび院内感染に遭遇すると,患者の不利益はもとより病院にとっても多大な経済的損害を被ることから,感染制御は非常に重要な課題である.感染制御を行ううえでは,医療従事者個々の認識が重要であることは言うまでもないが,個人の力では限界があり,組織的に対応することが対策上極めて重要である.

総論 2.感染制御活動における各職種の役割

1) 医師の立場から

賀来 満夫

pp.1224-1228

はじめに

 MRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus),多剤耐性緑膿菌などの薬剤耐性菌による感染事例やノロウイルス,インフルエンザウイルス,クロストリジウム・デフィシルなどによる集団感染事例,さらに新型インフルエンザの発生と感染の蔓延など,多くの感染症事例が報告されており,医療安全・医療の質保障の観点からも的確な感染制御の実践が強く望まれている.

 感染制御を実践していくうえで,特に医師の役割は大きく,感染制御活動をリードする実質的な責任者としての役割を担っている.ここでは,感染制御を実践したうえで,望まれるべき医師の役割・業務について概説する.

2) 看護師の立場から

高野 八百子

pp.1229-1233

感染制御にかかわる看護師の資格概要

 感染制御を実践する看護師は,ICN(Infection Control Nurse)感染制御看護師と一般的に呼ばれている.

 日本では看護協会が専門性をもった看護師の教育機関に施設の認定をするとともに,教育・研修を受けた看護師に対し専門看護師と認定看護師という資格認定を行っている.専門看護師は,大学院教育を受けたのち,複雑で解決困難な看護問題を持つ個人,家族および集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための,特定の専門看護分野の知識および技術を深め,保健医療福祉の発展に貢献し,併せて看護学の向上を図ることを目的として活動することが求められている.認定看護師は,6か月間の教育の後,特定の看護分野において,熟練した看護技術と知識を用いて,水準の高い看護実践ができ,看護現場における看護ケアの広がりと質の向上を図ることを目的として活動することが求められている.

3) 薬剤師の立場から

白石 正

pp.1235-1239

はじめに

 感染制御はいかなる医療機関においても必須といえるチーム医療で,各職種の専門性を活かした感染制御活動は職域を超えて実践していく必要がある.そのなかで,感染制御専門薬剤師の専門性は,医療スタッフに対する抗菌薬および消毒薬の適正な使用にかかわる指導あるいは助言を行うことにある.これらに関する知識は日常の薬剤管理指導業務の実践および自己努力によるものであり,その結果として認定試験などにより確認を受け専門薬剤師となることができる.そこで,本稿では薬剤師の感染制御における認定制度およびこれら専門性をどのように活かした活動をすべきかについて述べる.

4) 臨床検査技師の立場から

長沢 光章

pp.1240-1244

はじめに

 感染制御における臨床検査技師の役割として,単に環境調査や分離菌の頻度・薬剤感受性(耐性)率などの統計を報告するのみでなく,日常検査における正確で迅速な報告,病院感染を疑う事例の早期把握,院内感染対策チーム(Infection Control Team;ICT)における活動などが挙げられる.

 日本臨床微生物学会は,臨床微生物学や感染症検査全般にわたる高い専門的知識と経験を有し,実務的に医療施設内の感染制御に積極的にとり組んでいる認定臨床微生物検査技師のうち,必要条件を満たした者を感染制御認定臨床微生物検査技師(Infection Control Microbiological Technologist;ICMT)として認定する制度を2006年に発足した1)

5) 事務職の立場から

成田 和彦

pp.1245-1250

はじめに

 映画『ディア・ドクター』(監督:西川美和,主演:笑福亭鶴瓶)を観ました.

 映画の中で,香川照之氏が演じる製薬会社の営業マンの次のような意味の台詞があります.

 「自分たちも,人の生き死を預かっていると思えるときがある…」

 この台詞には,自身の役割に意義を感じた喜び以上に,医療スタッフに対するコンプレックスが現れていると感じました.病院の事務職である私も,専門職である医師,看護師,薬剤師やコメディカルの方々に対して,敬意と同時にコンプレックスを抱き続けてきました.

 本稿の執筆依頼が届いたとき,はじめはお断りしようと思いました.その最たる理由は,医学雑誌に執筆することについて,コンプレックスから抱く「居心地の悪さ」です.「事務屋風情がなにをぬかすか」と思われるのはないか,という恐れを感じてしまうのです.

 これまでに,日本環境感染学会に参加させていただいたり,他誌に拙文を掲載させていただいたりしたことはありました.しかし,それらは普段お世話になっている医師や看護師から直接依頼されてのことで,いわば「後見人」があってのことでした.今回は前触れもなく原稿依頼が届き,コーディネーターの先生もお会いしたことがありませんでした.例えば,思いがけず高級ホテルでのパーティーに招待されどうしたらよいかわからない状態,といったところでしょうか.

 また,本稿のテーマである「感染制御活動における各職種の役割―事務職の立場から」について,自分は語るに相応しくない,という思いもありました.東大病院(以下,当院)にあって,現在の私の所属は,管理課“物流・環境チーム”という部署です.物流・環境チームの主な業務内容は,「医療材料の管理・SPD(物品管理・供給センター)業務の運用」「入院時食事療養業務委託に関すること」そして「清掃業務・廃棄物など,院内の環境管理」です.物流・環境チームは感染制御チーム(Infection Control Team;ICT)活動に参加していますが,「病院感染対策委員会」のメンバーではありません.病院感染対策委員会の事務は,「感染対策センター」が所掌しています.感染対策センターは,病院の意思決定機関である執行部に直結した運営支援組織に属し,予算配分もされています.物流・環境チームがICTの中で求められる主な役割は,院内の環境管理です.したがって,「感染制御活動」の事務を取りまとめているわけではありません.

 それでも,本稿を書かせていただこうと思ったのは,病院の環境管理を進める中で感じている「障害」について,病院関係者で幅広く問題意識を共有できないかと考えたからです.病院にかかわらず事務職の仕事は,とどのつまり「そろばんをはじく」ことと言ってよいと思います.「お金がかかる」ことが障害で,環境管理が進められない病院は多いのではないでしょうか.それ以前に,環境管理において「本当にお金をかける意味があるのか」「お金の使い道は正しいのか」という疑問を抱く問題もあるのではないでしょうか.

 本稿で私は,「感染性廃棄物の管理」の取り組みについてご報告しながら,「感染制御活動における事務職の役割」について語ることを試みたいと思います.代表的あるいは象徴的な事務職の姿でないかもしれませんが,「そろばんをはじく」ひとつの形であることは,間違いないと思います.

総論 3.感染制御に必要な基本的知識

感染制御に必要な基本的知識―標準予防策,感染経路別予防策

矢野 邦夫

pp.1251-1257

はじめに

 感染対策においては「標準予防策」と「感染経路別予防策」を熟知することは極めて重要である1).特に,標準予防策はすべての医療現場でのすべての患者のケアで実施されるべき対策であり,その理解なくして感染対策は成り立たない.

 本稿では標準予防策の新しい要素である「咳エチケット」,「安全な注射手技」,「腰椎処置(脊髄造影や硬膜外麻酔など)における外科用マスクの装着」を詳細に解説すると同時に,アスペルギルス対策としての「防護環境」についても説明することとした.

総論 4.施設内感染に関連する微生物

1) 細菌

松本 哲哉

pp.1258-1262

はじめに

 米国CDC(Center for Disease Control and Prevention;疾病予防管理センター)は病院に限らず様々な医療施設や在宅ケアなどを包含する意味で,“医療関連感染”(healthcare-associated infection)という用語を提唱している.本誌で取り上げられている「施設内感染」という概念もいわゆる医療施設だけではなく,福祉施設なども含めた広い範囲が対象になっているものと考えられる.このような医療機関だけにとらわれない大きな枠組みでのとらえ方は患者の施設間の移動などを考えると当然のことであり,医療施設だけで感染対策が成功することはないと思われる.

 本稿ではこのような施設内感染に関連して,問題となっている細菌とその背景について総論的に解説を加える

2) 真菌

亀井 克彦 , 渡辺 哲

pp.1263-1268

感染管理から見た真菌の特徴

 真菌による感染が医療施設内で伝搬するケースとしてはカンジダなどの酵母によるカテーテル感染症などが知られている.しかし,感染の病原体としての真菌の大きな特徴の一つが環境中に空気中に浮遊しやすいことであり,また深在性真菌症の中で経気道的感染による肺真菌症が大きな割合を占めることから,本稿では室内気中の真菌に焦点を絞って解説する.

 真菌は本来胞子を作る能力を持った生物であり,これらの胞子は病原性微生物としては全体として比較的大型であるものの(Aspergillus fumigatusの場合,直径が2~3,5μm程度に達する)(図1,2),吸気により容易にヒト肺内に取り込まれ,しばしば呼吸細気管支,肺胞にまで到達する.このためこの空気中の胞子のコントロールが真菌感染症の発生を制御するうえで重要な鍵となっている.

3) ウイルス

中山 哲夫

pp.1269-1274

ウイルスの分類

 微生物が発見され多くの疾患は微生物が感染することで発症することが明らかとなったのは19世紀になってからである.患者から得られた血液,咽頭拭い液を実験的に感染させると発症することから感染性疾患であることがわかっても顕微鏡下で細菌が検出できず,また培養もできず,素焼きの濾過器で濾過した後の検体でも感染することから濾過性病原体の存在が知られてきた.タバコの葉に感染し枯れさせるタバコモザイクウイルスが結晶化されウイルスが生命体なのか議論されてきたが,細菌,真菌とは異なり培地で増殖はできず細胞に感染することで自己保存できる生命体で,分子生物学的研究が進みウイルスは「生命反応を有する高分子集合体」として捉えることができる.

 ウイルスの発見当初は電子顕微鏡により,ウイルスの大きさにより大型,中型,小型ウイルス,その形態から球形,正20面体,スパイクの有無,外殻蛋白(エンベロープ)の有無などの形態から分類されていた1).タバコモザイクウイルスの結晶は蛋白で構成され蛋白により感染し増殖すると考えられていたが,結晶中の5%を占める核酸が感染にかかわる物質であることがわかり,核酸の性状によりRNAを遺伝子として持っているウイルスとDNAを持っているウイルスに大別され表1に示した.ウイルスの分類の根拠となる基準は

 ①形態:ウイルス粒子のかたち,大きさ,エンベロープの有無

 ②物理学的性状:ゲノムの性状,安定性

 ③構成蛋白の種類と機能

 ④転写・翻訳の特徴

 ⑤増殖の仕方,宿主動物域

 である.

4) 原虫・寄生虫・医動物―特に施設内赤痢アメーバ感染について

竹内 勤

pp.1275-1279

はじめに

 周知のように感染症が重視される今日でも,わが国における原虫・寄生虫・医動物疾患の頻度そのものはそれほど高いものではなく,2003年の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(いわゆる感染症法)の改正で四類,五類に分類され,全数把握の対象となっている疾患でも,報告数は少ない.わずかに赤痢アメーバ症のみが近年の統計上,増加傾向を示しており,例えば2007年度の報告例は700例前後に達している.この増加の原因は必ずしも明らかにされたわけではないが,男性同性愛者間の感染や,従来あまり見られなかった女性の感染者の報告が目立っている1).通例,赤痢アメーバの感染は飲食物などが囊子に汚染され,それらが経口摂取されて感染するが,このようないわば定型的な感染も最近の途上国への旅行者の増加に伴いより多くが報告されるようになっている.

 しかし,いったん目をわが国の諸種施設に転ずると,赤痢アメーバを含む経口感染性の病原体,あるいは接触感染する医動物,特にヒゼンダニによる疥癬は,それらの感染率,予防・治療の困難さから見ても決して看過されるべきではなく,わが国においては今後の介護・福祉が老齢化人口の増加に伴い種々の困難が想定される中で,必ず対応を迫られる問題である.

 これまで知的障害者を含む諸種の更正施設で発生した経口感染症はかなり多数あるが,筆者らはこの十年以上もの間,国内の主に知的障害者の更正施設における赤痢アメーバ感染について,疫学的な状況,感染経路の解明,赤痢アメーバ株の分離,その性状,診断法の検討,治療法の策定などを検討してきた.本特集では感染制御に関する事項は別項目として取り上げられるので,本稿では,ここ十数年の筆者の教室における調査研究成果に基づき,特に疫学的な側面や,関与している赤痢アメーバ株の生物学的性状などについて概説したい.

総論 5.感染制御に関する法令

感染制御に関する法令

清 哲朗

pp.1280-1286

はじめに

 医療施設では,一般社会と比べ感染に対しより抵抗性の低い人(易感染者)の割合が高く,いったん施設内で感染症が発生すると感染拡大を招きやすく,かつ健康な方が感染した場合には問題にならない病原性の弱い微生物が,易感染者では致命的な結果を招く危険性が高いためその対策は重要である.また,福祉施設も高齢者の入所者が多く,一般社会よりは感染に対する抵抗力の弱い人が集団生活を行う場であるので,医療施設に準じた対策を講じることが望まれる.

 感染症全般の予防に関する基本的な法的制度は,「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下,感染症法)が大きな役割を果たしているが,院内(施設内)感染については感染症法での規制を受けない病原体が原因になることも少なくなく,これらも含めて医療安全の体制確保のための重要事項として,医療法に基づく院内感染対策の規定が定められている.

 厚生労働省は,感染対策についてこれまで,科学的根拠に基づく感染防止に関する留意事項などを通知により周知および徹底を促し,また,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA),インフルエンザなど医療施設内の感染が問題になる各種の微生物による感染の防止については,適時注意喚起や情報発信を行ってきた.医療施設ではない高齢者介護施設についても,施設の特性を踏まえた感染対策のありかたを介護施設の基準や通知で示している.

 本稿ではこれらの法令の主旨について概説する.

総論 6.医療安全・感染制御を考慮した病院設計

医療安全・感染制御を考慮した病院設計

筧 淳夫

pp.1287-1293

はじめに

 看護の世界で有名なF. Nightingaleは統計学的な手法を用いることにより,患者に影響を与える要因を分析して入院環境のあるべき姿を検討し始めた最初の人であると考えられる.Nightingaleが1858年に作成したといわれる「東方におけるイギリス陸軍の死因」の図,いわゆる「鶏のとさか」と呼ばれている図にはクリミア戦争で英国陸軍の兵士が死亡した原因を月別に示している.1854年10月と11月の2か月は英国がクリミア戦争に参戦した比較的初期の段階であり,その時期には負傷による死亡者が多くを占めていたが,それ以降になると圧倒的に感染症によって死んでゆく兵士の数が多くなってきている.

 彼女はこの図の解説の中で死因の感染症を「予防もしくは軽症化することのできた感染症(Preventible or Mitiigable Zymotic Diseases)」と記述している.それゆえに,1959年に彼女が記した「看護覚え書き」には,「看護が意味すべきことは,新鮮な空気,光,暖かさ,清潔さ,静かさの適切な活用,食物の適切な選択と供給―そのすべてを患者の生命力を少しも犠牲にすることなく行うことである」1)や「看護の第一の根本原則,看護婦が注意を向けるべき最初で最後の事柄…」は「患者を寒さでぞくっとさせることなく,患者が呼吸する空気を屋外の空気と同じように清潔に保つこと」1)といった患者の入院環境,特に感染対策に関する記述が数多く残されている.そしてその後彼女の名前を冠したナイチンゲール病棟が数多く造られるようになり,その病棟では患者の治療環境の一部として十分な換気や暖房といった環境要因に関する配慮がなされるようになっている.

 近年でも院内における感染対策については数多くの議論がなされているが,その中で物的な環境に関する議論と知識の普及はいまだ十分なものとはなっていないと思われる.日常の医療においても最近では入院患者がそもそも持っていた結核菌を原因として結核を発症することがあり,急性期医療施設における空気感染対策の必要性を耳にすることがある.また飛沫感染や接触感染と分類される疾患に罹患した患者へのケアにおいても,病室の造りや設備といった物的環境の問題をどのように作り込み,どのように維持管理するのかなどの課題に関してはまだまだ十分とは言い難い.一方,今年世界中に急激に広まった新型インフルエンザのように,影響力の強い新興感染症がパンデミックを起こし,入院治療が必要となる重症患者が急増した場合の病院における施設的な対応についてはわが国でほとんど検討されていない.

 本稿では,医療施設内における医療安全確保の大きなテーマの一つとなっている感染制御の問題について病棟部門を取り上げて,建築・設備上の検討課題について考えてみたい.

各論 1.様々な環境下での施設内感染制御

1) 小児病棟における感染制御

岩田 敏

pp.1297-1302

はじめに

 小児を収容する小児病棟においては,小児の感染防御能や免疫学的背景,行動の特殊性から,成人の病棟とは異なった視点からの感染管理が必要となる.本稿においては,小児の特殊性について概説し,その点を踏まえた形での小児病棟における感染制御の実際について述べる.

2) NICUにおける感染制御

佐藤 吉壮

pp.1303-1308

はじめに

 急速な新生児医療の進歩により新生児領域において死亡率は減少してきているが,その死亡原因として細菌感染症は依然として問題であり,早期発見および適切な治療が重要な課題である.また,新生児は成熟児であっても易感染性を有していることから感染対策には細心の注意が必要となる.本稿では新生児感染症と感染対策について述べる.

3) 易感染患者用病室(無菌病室)における感染制御

森 毅彦

pp.1309-1312

はじめに

 1970年代に米国において第一例目の骨髄移植が施行されて以来,高度な免疫抑制状態にある骨髄移植患者(最近では骨髄移植に加えて,末梢血幹細胞移植,臍帯血移植なども加わり,造血幹細胞移植という表現で総称している.)は感染予防の観点から無菌管理の中で治療を受けてきている.その際に患者が隔離される病室が「無菌病室」である.現在,わが国ではある一定基準を満たした無菌病室は急性白血病を中心とした特定の疾患の治療で使用する場合は健康保険適用上,「無菌治療室管理加算」が認められており,多くの施設において使用されている.

 本稿では主に造血幹細胞移植における無菌病室の利点および現状について述べる.

4) 透析施設における感染制御

秋葉 隆

pp.1313-1317

透析患者の易感染性と感染症の重要性

 最初に透析患者は「感染に弱い」ことを強調する.

 慢性腎不全で透析を受けている患者は細胞免疫の異常,例えば好中球機能,特に貪食能が低下している.この機序として貪食細胞受容体機能低下,運動能低下,化学遊走能低下,接着分子の発現の異常などが指摘されている.また,尿毒症の症状として,低栄養,亜鉛欠乏,副甲状腺機能亢進症,1,25水酸化ビタミンD欠乏症なども易感染性の要因として挙げられる.さらに,頻回の通院・入院,輸血など感染の機会が多いことや,透析室という大部屋で観血的な治療を長時間受けるという環境も,感染症が重要な予後決定因子となっている要因である.

5) 重症心身障害者施設における感染制御

庵原 俊昭

pp.1318-1321

はじめに

 重症心身障害児とは,重度の知的障害および重度の肢体不自由が重複している児童のことであり,20歳を超えると重症心身障害者と呼ばれている.心身障害児(者)の区分には,大島分類が用いられており(図),1~4までを重症心身障害児(者),5~9までを境界児(者)と定義している1)

 重症心身障害者施設とは,重症心身障害児(者)を対象として,長期にわたって医療と療育が行われる施設であり,1960~1970年にかけて日本各地に設置され,現在に至っている.なお,このような施設入所型の重症心身障害児(者)医療は日本独自のものであり,厚生労働省として責任をもつ「政策医療」の一つと位置づけられている.

 本稿では重症心身障害者施設における感染制御について解説する.

6) 高齢者入所施設における感染制御

鈴木 幹三

pp.1322-1326

はじめに

 高齢者入所施設には,常時介護あるいは医学的管理が必要な要介護者が入所する介護保険施設から,ADL(activities of daily living:日常生活動作)の自立した高齢者が入所する施設まで各種の施設が存在する.2006年の介護報酬の改定において,介護保険施設に関する基準のなかで,感染症対策強化が明確に規定された.2007年には医療法が改正され,介護保険施設においても医療施設と同様に施設内感染対策を見直す必要がある.厚生労働省から公表されている『高齢者介護施設における感染対策マニュアル』1)に基づき,高齢者入所施設における感染防止対策を述べる.

7) 救急医療と感染制御

竹末 芳生

pp.1327-1331

はじめに

 救急医療の問題点は,重症市中感染と他院での重症院内感染の双方を受け入れることであり,他院から搬送される場合は,多剤耐性菌の持ち込み対策として,入院時の監視培養を行っている施設も多い.疾患上特に問題となることは,熱傷患者における感染対策と人工呼吸器管理患者における人工呼吸器関連性肺炎(ventilator-associated pneumonia;VAP)である.本稿ではこれらについて解説する.

各論 2.微生物別の種類別にみた施設内感染制御

1) 細菌 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)

堀 賢

pp.1332-1336

はじめに

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は,わが国における医療関連感染症の最も主要な病原微生物である.感染予防策は継続的に実施されなければならないが,このためにはMRSAの院内伝播数を指標にして実施状況を間接的にモニタリングする方法が効果的である.本稿は,MRSAの伝播様式に基づいた対策について詳説し,当院で開発したMRSAを指標にした感染制御の包括的管理システムを紹介する.

1) 細菌 バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)

長尾 美紀 , 飯沼 由嗣

pp.1337-1339

はじめに

 腸球菌はヒトの腸管の常在菌であり,病原性は低く,健常人で感染症を起こすことは稀である.しかし,入院患者においては,尿路感染,血管留置カテーテル感染,創部感染を起こしうる.バンコマイシン(VCM)耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci:VRE)の治療薬はアンピシリン感受性菌を除いてはいわゆる抗VRE薬に限定されることと,院内伝播の頻度も高いため,早期発見および早期隔離が対策の基本となる.

1) 細菌 多剤耐性緑膿菌(MDRP)

朝野 和典

pp.1340-1342

はじめに

 多剤耐性緑膿菌(multi drug resistant Pseudomonas aeruginosa;MDRP)は,今日,最も重要な院内感染対策の標的細菌である.多剤耐性細菌としては,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)が問題となることが多いが,MRSAとMDRPを比べると特徴が明らかとなる.まず,第一に決定的に異なるのは,MRSAには,塩酸バンコマイシン(VCM)やリネゾリド(LZD)をはじめとする有効な抗菌薬が複数種類存在することである.今日世界的に問題となっているバンコマイシン耐性MRSAですら,リネゾリドは有効である.一方,MDRPは,唯一コリスチンが有効である以外は,ほとんどすべての抗菌薬が無効であり,しかもコリスチンはわが国では使用が承認されていない.すなわち,本邦で有効な抗菌薬は皆無の耐性菌であり,いったん感染症を発症すると,治療は極めて困難な感染症となる.

 このようなMDRPの特徴を知り,また感染対策を理解することで感染症を予防し,適正抗菌薬の使用により感染症の発症を予防することが第一の方策である.感染症に対しては,抗菌薬の併用による相加・相乗効果を期待する.

1) 細菌 ESBL産生グラム陰性桿菌

庄 武彦 , 村谷 哲郎 , 松本 哲朗

pp.1343-1347

はじめに

 1929年にフレミングがペニシリウムの産生する黄色ブドウ球菌の発育を阻止する物質,ペニシリンを発見して以来,抗菌薬の開発と細菌の耐性因子獲得の歴史が始まった.抗菌薬の開発ともに,細菌は様々な耐性因子を獲得してきた.そのひとつであるβ-ラクタマーゼはグラム陰性菌のβ-ラクタム薬に対する主要な耐性因子として知られている.1980年代になると,β-ラクタマーゼに極めて安定でグラム陰性桿菌に強力な抗菌力を有する第3世代セファロスポリン,セファマイシン,カルバペネムなどの広域β-ラクタム系抗菌薬の臨床使用が開始された.1960年代から腸内細菌科の細菌より主として検出されるようになったTEM-1,TEM-2,SHV-1のβ-ラクタマーゼは,ペニシリンをよく分解するが,第2世代以降のセファロスポリン,モノバクタム,カルバペネムをほとんど分解しなかった.このため,これら抗菌薬は各種グラム陰性菌や陽性菌に幅広い抗菌活性を示すので,わが国では特に好んで用いられた.

 しかし,1983年にKnotheら1)によって第2世代以降のセファロスポリンおよびモノバクタムを分解する肺炎桿菌とセラチアに関して報告された.この耐性因子は後にプラスミド上に存在する外来性のβ-ラクタマーゼであり,ペニシリンを分解していたSHV-型β-ラクタマーゼにアミノ酸置換が生じ,第2世代以降のセファロスポリンを分解する能力を獲得した変異酵素であることが明らかとなった.このように従来のβ-ラクタマーゼよりも加水分解される基質であるβ-ラクタム系抗菌薬の範囲が拡張されたため,狭域の基質特異性が拡張された酵素として基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase;ESBL)と呼ばれるようになった.

 本稿では,β-ラクタマーゼの分類,定義を示し,ESBLの検査方法,感染対策について解説する.

1) 細菌 その他のブドウ糖非発酵菌

金光 敬二

pp.1351-1354

はじめに

 医療関連感染の報告が多いのはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA;methicillin resistant Staphylococcus aureus),バンコマイシン耐性腸球菌(VRE;vancomycin resistant entrococci),セラチア,エンテロバクター,サイトロバクター,緑膿菌などである.緑膿菌は,ブドウ糖非発酵菌の代表であるが緑膿菌以外のブドウ糖非発酵菌による医療関連感染の報告も散見される.緑膿菌以外のブドウ糖非発酵菌にはどのようなものがあるのだろうか.これらの細菌は臨床検査ではどのような性質を示すのだろうか.環境や検体のどこから検出されるのだろうか.ブドウ糖非発酵菌による医療関連感染に対しどのような対策が必要なのだろうか.

 本稿では緑膿菌以外のブドウ糖非発酵菌による微生物学的特徴ならびに医療関連感染について事例などを通して考えてみることにする.

1) 細菌 クロストリジウム・ディフィシル

神谷 茂

pp.1355-1359

はじめに

 ディフィシル菌(クロストリジウム・ディフィシル:Clostridium difficile)はグラム陽性の偏性嫌気性細菌であり,当初培養が困難(difficult)なことより,Clostridium difficileと命名された.本菌はトキシンA,トキシンB,バイナリートキシンなどの種々の毒素を産生する.感染症治療の際に抗菌薬が投与され,腸内フローラが撹乱されることにより,本菌の異常増殖と上記トキシンの産生により,抗菌薬関連下痢症(antibiotic-associated diarrhea;AAD)や偽膜性大腸炎(pseudomembranous colitis;PMC)などのディフィシル菌関連下痢症(C. difficile-associated diarrhea;CDAD)を引き起こす.

 本稿ではディフィシル菌の細菌学的性状や同感染症の臨床を解説するとともに,強毒型ディフィシル菌の欧米における流行を紹介し,施設内感染対策を論じる.

1) 細菌 レジオネラ

舘田 一博

pp.1360-1365

はじめに

 レジオネラ症の感染源としては,冷却塔や噴水,給水・給湯設備などの頻度が高い.特に,院内感染型レジオネラ症の感染源としてはシャワー,加湿器,ネブライザーなどエアロゾルを発生する装置が重要である.本症はヒトからヒトへの感染伝播がみられないことから,院内感染型のレジオネラ症を1例でも認めた場合には,院内水系を介した集団感染が発生している可能性を考えて対応する必要がある.

 本稿では2009年に作成されたわが国の『新版レジオネラ症防止指針 第3版』と米国CDCのレジオネラ症に対する防止指針の内容を比較して概説する1,2)

2) 結核菌

永井 英明

pp.1367-1370

はじめに

 日本の結核の罹患率は結核対策により低下し2008年の結核罹患率は10万対19.4となった.しかし,欧米先進国の結核罹患率が10以下であり,最も低い国では5以下である状況と比較すれば依然として結核罹患率は高く,日本は結核の中蔓延国である.したがって,臨床現場では常に結核患者に遭遇する機会はあり,結核についての正確な知識と院内感染対策は必要である.

 近年,結核の病院内における集団発生がしばしば見られており,要因としては,高齢者を中心に塗抹陽性結核患者数の発生件数が増加したこと,免疫機能が低下した病態(悪性腫瘍,糖尿病,腎透析,免疫抑制剤使用,臓器移植など)の患者が増加したこと,結核未感染の若い職員が多いこと,結核患者の受診の遅れと医師の診断の遅れがあること,施設の構造や設備が感染防止に不適切でしかも密閉された空間が多くなったこと,気管支内視鏡検査,気管挿管や気管切開,ネブライザーなど咳を誘発する処置が増加したことなどが挙げられている.

 しかしながら,結核は患者数の減少とともに過去の疾患とみなされるようになり,結核に対する関心は国民の間だけでなく医療従事者の間においても薄れてきた.このような状況において,職員,患者への結核の院内感染を防ぐためには,厳格な結核感染対策とその周知徹底が必要である.

3) 真菌 酵母様真菌

永吉 洋介 , 泉川 公一 , 河野 茂

pp.1371-1377

はじめに

 深在性真菌症の多くは易感染性患者に日和見感染症として発症する.近年,医療技術の進歩により,先進的医療が多くの施設で施行されるようになり,医療施設においてはこれまで以上に日和見感染症に罹患するリスクを有する患者が多く存在する.

 医療現場で問題となる酵母様真菌は主にカンジダ属であり,本菌は皮膚,口腔,消化管,尿生殖器に常在する.従来,カンジダ症を含めた真菌症が院内感染制御の対象として認識されることはあまりなかった.しかし,近年,Candida parapsilosisのICU,NICU,救急施設における集団感染の事例なども報告されており1,2),アスペルギルスも含めて,感染制御の対象として認識する必要性が出てきている.また,カンジダ症に関する臨床的な問題点としては,アゾール系抗真菌薬に低感受性のnon-albicans Candidaの検出頻度が増高くなってきていることも挙げられ,施設内で検出されるカンジダの菌種,薬剤感受性についても,施設ごとにモニターしていくことも重要である.

 従来から感染制御の対象として代表的なメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphlococcus aureus;MRSA)や多剤耐性緑膿菌(multiple drug-resistant Pseudomonas aeruginosa;MDRP)などの細菌感染症と同様に,カンジダ症においても,医師のみならず,臨床検査技師,薬剤師も含めたコメディカルと協力しあい,感染制御を行っていくことが肝要である.本稿では,これらを踏まえたうえで,特にカンジダ血症について概説する.

3) 真菌 アスペルギルス

大野 秀明 , 宮﨑 義継

pp.1381-1386

はじめに

 アスペルギルス(Aspergillus)属は,通常われわれの日常環境中に存在する真菌であり,糸状菌の一種である.このAspergillus属は,主に空中に浮遊する菌の分生子が生体に吸入されるが,器質的肺疾患や全身性免疫不全などの基礎疾患がない場合は,マクロファージや好中球により処理され,発病に至ることは稀である.しかし,前記のような基礎疾患をもつ場合は,侵襲性肺アスペルギルス症(invasive pulmonary aspergillosis;IPA)など重篤かつ致死的な感染症を合併することから,免疫不全患者などが多く集中する医療施設では細心の注意が必要となる.すなわち,いかに環境からの感染を抑えることで致死的なアスペルギルス症の発病を防ぐか,さらに発病をいかに迅速に診断するかが患者の予後を決定するうえで重要な課題となる.

 本稿では医療機関などにおけるアスペルギルス症,特にIPAに主眼を置いた検査法や感染制御について概説する.

3) 真菌 クリプトコックス

前﨑 繁文

pp.1387-1390

はじめに

 Cryptococcus neoformansは肺クリプトコックス症やクリプトコックス髄膜炎の原因真菌である.クリプトコックスは世界各地に生息する酵母状真菌であり,環境中の様々な場所で長時間生息することができる.C. neoformansは1894年にSanfelice1)によってモモの果汁から初めて分離培養された.C. neoformansは正常のヒトから検出されることは極めて稀であり,ヒトの常在性真菌ではない.そのため,クリプトコックス症はヒトからヒトへの感染によって発症せず,多数のC. neoformansが生息する環境から感染すると考えられている.環境に生息するクリプトコックスにはCryptococcus neoformans var. neoformansCryptococcus neoformans var. gattiiの2菌種があり,それぞれ環境における生息する場所が異なっている(表1).C. neoformans var. neoformansは主に鳥類の排泄物中に生息し,C. neoformans var. gattiiは主にユーカリの樹に生息する.先に述べたようにクリプトコックス症はヒトからヒトに感染しないため,その感染制御としては環境中のクリプトコックスがヒトに感染することを中心に考える必要がある.

3) 真菌 ニューモシスチス・イロベツィ

安岡 彰

pp.1391-1394

はじめに

 Pneumocystis jiroveciiは長い間Pneumocystis cariniiと称され,原虫か真菌かを議論されてきた.1990年代以前は生活環の類似性や抗原虫薬であるペンタミジンが有効なことなどから原虫と分類されることが多かった.1988年にribosomal RNA遺伝子の相同性が真菌に近いことが報告1)されて以降,遺伝子レベルや微細構造,保有酵素の類似性などいずれも真菌に近いことを示すデータが得られ,Pneumocystisは真菌と分類されるようになった.

 Pneumocystisは種々の哺乳類の肺から発見されており,形態的にはほとんど区別がつかないため,以前は同一と見なされていた.しかし,遺伝子的にはそれぞれ異なっており,強い宿主特異性(例えばラットから分離されたものはラットにのみ感染し,ヒトには感染しない)があることが明らかとなってきた.そのため,これまで一属一種としてPneumocystis cariniiと称されてきたのをそれぞれに種の名前を付し,ヒトに感染するものはPneumocystis jiroveciiと命名された2)(P. cariniiは最初にラットから分離されたものにつけられた名前であることから,ラットのPneumocystisの種名となった).Jiroveciiは初めてヒトから本菌を見いだしたOtto Jirovecの名前に由来し,yee-row-vet-zeeと発音する.真菌の名前として最後に-ciiとiを2つ重ねるのが正式名となっている.

3) 真菌 コクシジオイデス

亀井 克彦

pp.1395-1399

コクシジオイデス症とは何か

 コクシジオイデス症とは真菌の一種であるコクシジオイデス(Coccidioides immitisあるいはC. posadasii)による感染症である.コクシジオイデスは日本国内には生息していない真菌であり,コクシジオイデス症は輸入感染症(この場合は,輸入真菌症)として扱われる.わが国ではこれまでに約60例の報告があるが1),15年ほど前から増加が始まり,近年は毎年数例がコンスタントに報告されるようになった2)

 原因菌であるコクシジオイデスは真菌のなかでも特別に感染力が強く(BSL3),病原体としては第3種に指定され,また,本菌による感染症(コクシジオイデス症)は第4類に指定されているため,コクシジオイデスの保管,取扱いはあらかじめ許可を得た施設で行うとともに,コクシジオイデス症を診断した医療施設には,すべての症例を報告する義務がある.流行地はアメリカのカリフォルニア,アリゾナを中心とした周辺の地域と,隣接したメキシコが多い.しかし報告は少ないものの,流行地域自体はアルゼンチン,ブラジルなど中南米に広範に及んでいる.これほどの病原性をもつ菌でありながら,外見上は発育が進むまで全く特徴がなく,ごくありふれた菌にみえる(図1).

4) ウイルス 麻疹・風疹・水痘・ムンプスウイルス

寺田 喜平

pp.1400-1403

はじめに

 麻疹,風疹,水痘,ムンプスなどのウイルス感染症はワクチン予防可能疾患であり,ワクチン接種によって予防や軽症化が可能である.多くの先進国ではこれら感染症に対しワクチンの2回接種が実施され,流行が著明に減少し,排除された国も多い.

 わが国でも2012年までに麻疹を排除することを目標に,2006年から麻疹・風疹混合(MR)ワクチンを乳幼児に2回接種することになったが,2008年の麻疹患者数は1万名を超えた.また,18歳以下のキャッチアップ接種が,5年間の暫定措置として中学1年生あるいは高校3年生の年齢相当者にMRワクチンを実施されているが,残念なことに接種率が低い.また,わが国では水痘やムンプスのワクチンは任意接種であるため接種率は約30%しかなく,毎年流行している.

4) ウイルス アデノウイルス

塩田 洋 , 田川 義継

pp.1404-1407

はじめに

 アデノウイルスは,眼科領域では角膜炎や結膜炎を引き起こす.アデノウイルスには54の血清型があるが,このうち強い病原性を示すのは8型,19型,37型,53型,54型であり,これらの感染によるものを流行性角結膜炎(epidemic keratoconjunctivitis;EKC)と呼んでおり,接触感染から発症する.そのほか3型や4型でも,よく似た感染を起こす.これらアデノウイルスは伝染力が非常に強く,院内感染や施設内感染(本稿ではまとめて院内感染と呼ぶ)を引き起こす病原微生物の一つとして,念頭に置いておかなければならない.アデノウイルス角結膜炎による院内感染が発症すると,その終息には大変な努力が必要であり,場合によっては病棟閉鎖や施設閉鎖にもなりかねない.また,アデノウイルスに対する特効薬はまだ開発されておらず,したがって感染予防対策が最重要課題となってくる.予防対策のためには,アデノウイルス角結膜炎とはどんな病気なのか,その診断法・検査法を理解し,どのような予防対策を講じるべきかを知っておく必要がある.本稿ではそれらを中心に述べていく.

4) ウイルス インフルエンザウイルス

川名 明彦

pp.1408-1412

はじめに

 院内感染対策を行ううえで,インフルエンザは大変厄介な疾患である.毎年必ず流行し,患者のみならず職員からも多くの感染者が出る.病院の中でいくら注意しても,病院外の日常生活の中にも多くの感染のチャンスがある.そのコントロールにはしばしば限界を感じることさえある.しかし高齢者や基礎疾患をもつ患者にとってインフルエンザは危険な感染症であり,感染は防がなければならない.さらに2009年春には豚由来の新型インフルエンザウイルスA/H1N1(以下,新型H1N1と略す)が出現し,インフルエンザの感染対策は重要度を増している.

 本稿では米国疾病管理予防センター(CDC)のガイドライン1)を中心にインフルエンザの施設内感染対策についてまとめる.新型H1N1の感染対策については一項を設けて言及した.

4) ウイルス RSウイルス

堤 裕幸 , 永井 和重 , 要藤 裕孝

pp.1413-1417

はじめに

 RSウイルス(respiratory syncytial virus;RSV)は毎年冬季に流行し,すべての年齢層に感染し,生涯に何度も感染を繰り返す.また,RSVは小児病棟では施設内感染を生じやすい.心肺に基礎疾患を有する児においては重症化しやすいことから,小児の入院施設における感染制御は重要である.RSV施設内感染は高齢者の施設においても問題となっている.施設内伝播予防策としてわが国でも広く利用されている米国CDCの“Guideline for isolation precautions:preventing transmission of infectious agents in healthcare setting 2007”によるとRSVの感染経路別予防策は接触予防策とされる.

 本稿では,まずRSウイルス感染症の臨床像,診断,治療などについて解説した後に感染制御対策について考える.

4) ウイルス ノロウイルス・ロタウイルス

中込 とよ子 , 中込 治

pp.1418-1422

はじめに

 ノロウイルスは,医療関連施設内における急性胃腸炎の集団発生の原因として重要である.このことは,2004年12月に福山市の特別養護老人ホームにおいて入所者7名がノロウイルス感染症により亡くなるという事件があって以来,社会一般の関心を集めるようになった.また,これを機に,厚生労働省が2004年11月以降2005年1月12日までの高齢者特別養護施設におけるノロウイルス感染症の緊急実態調査を行った.その結果,236施設中,疑い例を含め,約5,400例のノロウイルス陽性例があり,12名の死亡例があることが判明した.これはノロウイルス性食中毒の集団発生事例での死亡者が皆無であることとは対照的であり,社会におけるノロウイルス感染症の認識を一変させた.

 ロタウイルスは,乳幼児期の入院治療を必要とする重篤な急性胃腸炎の約半数の原因になっている.最近,ロタウイルス胃腸炎を予防するためのワクチンが過去30年にわたる努力の末に完成し,世界の多くの国で認可されている1).また,ロタウイルス胃腸炎による小児科入院の20~30%が院内感染に起因していることが知られている.

 本稿では,ロタウイルスとノロウイルスの基本的特徴について簡単に説明し,これらのウイルス感染症の感染制御について,臨床検査のポイントに言及して,解説する.

4) ウイルス B型,C型肝炎ウイルス

新谷 良澄

pp.1423-1426

はじめに

 B型肝炎ウイルス(HBV),C型肝炎ウイルス(HCV)は,血液および体液が,針で刺すなど皮膚を貫いて直接体内に入る,または粘膜に接することにより伝播する.医療現場では,感染者の血液で汚染された注射針ないし鋭利な器具で皮膚を損傷することによる感染が最も多いので,このような事故を未然に防ぐことが特に大切である.針刺し1回当たりの感染リスクは,HCV 2%,HBV(HBe抗原陰性)23~37%,HBV(HBe抗原陽性)37~62%とされており1),HBVにおけるリスクが最も高い.したがってHBV感染予防の原則が正しく守られるならば,HCVの感染予防にも十分である.

4) ウイルス HIV

照屋 勝治

pp.1427-1430

はじめに

 日本におけるHIV患者数は増加の一途をたどっており,2008年末時点でのHIV感染者およびAIDS患者の累計は15,451人となった1).今後,国内でのHIV患者数の増加に伴い,各医療機関においてHIV患者を診療する機会(確率)は加速的に増加することが予想される.また,診断の遅れが問題となっており,毎年の報告者数の3割弱がAIDS発症後に診断されているという現状を考慮すると,まだ診断されていない多数の潜伏感染者が,各医療機関をすでに受診していると考えるべきであろう.

5) 原虫・寄生虫・医動物 赤痢アメーバ

太田 春彦 , 大西 健児

pp.1431-1434

はじめに

 赤痢アメーバ症は消化管または肝の感染症として知られる.施設内感染がわが国でも報告されており,また,施設内集団感染の治療に難渋する例があり,標準予防策による感染予防が推奨されている.

 本稿では赤痢アメーバ症の診断に用いられる臨床検査を中心に,施設内感染予防のための具体的な方法についても概説する.

5) 原虫・寄生虫・医動物 クリプトスポリジウム

大西 健児

pp.1435-1438

クリプトスポリジウムとクリプトスポリジウム症

 クリプトスポリジウム属は1個の細胞からなる原虫(原生動物)で,その感染症をクリプトスポリジウム症という.クリプトスポリジウム属にはいくつかの種があるが,ヒトのクリプトスポリジウム症の大部分はCryptosporidium parvum(C. parvum)によるものと考えられている.クリプトスポリジウムは比較的新しく発見された原虫で,その感染症は世界各地から報告されており,熱帯,亜熱帯のいわゆる発展途上国では下痢のありふれた病原体である.最近ではHIV感染者の難治性下痢症の原因原虫として,いわゆる先進国においては発展途上国と関連する旅行者下痢症の原因病原体や給水システムを介して集団感染を起こす病原体として注目されている.クリプトスポリジウムは世界的に重要な病原微生物である.

5) 原虫・寄生虫・医動物 疥癬虫

大滝 倫子

pp.1441-1444

ヒゼンダニの形態と生態

 疥癬はヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei var. hominis)が皮膚角質層に寄生し起こる皮膚感染症である.

 ヒゼンダニ雌は体長が0.4mm,円形,乳白色で,前方に顎体部を中心に2対の脚,後部に2対の脚をもつ.前2脚には吸盤を,後2脚には剛毛をもつ.雄の体長は雌の約半分で第4脚目に吸盤をもつ.両者とも皺襞と棘を体表にもつ(図1).幼虫の脚は3対である.図2にヒゼンダニの生活環を示す.雄雌交尾後,雌は疥癬トンネルを角層内に掘り進み,1日2~3個の卵を約1か月間産み続ける.3~4日で孵化した幼虫は胸や腹部など適当な部位に移動する.そこで一時的な穴を角層に掘り,脱皮を繰り返し,若虫を経て成虫となる.生活環は10~14日である.

5) 原虫・寄生虫・医動物 シラミ

松岡 裕之

pp.1445-1448

はじめに

 シラミは翅をもたない昆虫である.吸血源の体毛や衣類に住み着いて常時吸血をするもの,ベッドに潜んで夜間に吸血に来るものなど種類により独自の行動をとる.シラミには疾病の媒介をするものもあるので注意を要するが,被害の主たるものは被刺咬部位に生ずる痒みである.吸血動物は吸血に当たり,血管を拡張させるためまず唾液を注入する.唾液には血管拡張物質,止血物質,麻酔物質など多くの生理作用をもつ物質が含まれるが,何回か刺咬を受けるうちに宿主側に唾液に対するIgE抗体が産生され,I型アレルギーが生ずるようになる.

 蚊による刺咬反応はよく知られているが,典型的なI型アレルギー反応である.すなわち刺咬を受けて数分後に,刺咬部位が発赤し,中央部に浮腫(膨疹)を生ずる.痒いと感じるのはこうなってからで,主犯の虫はまんまと吸血を済ませ場所を移動してしまった後である.蚊に比べシラミは吸血量が少なく,また,1か所当たりに注入する唾液量も少ないので,膨疹をきたすほど強い皮膚反応は起きない.しかし頻繁に刺咬を繰り返すことと,繁殖が早いため個体数が増えて,多数の刺咬が起きるため,寄生を受けた者に広範な痒み被害をもたらす.

 ヒトに被害を及ぼすシラミには,アタマジラミ,コロモジラミ,ケジラミ,トコジラミなどがある.以下にその形態や特徴を述べる.

各論 3.感染制御に必要な微生物検査の知識とポイント

1) グラム染色

川上 小夜子 , 斧 康雄 , 宮澤 幸久

pp.1449-1453

はじめに

 Gram(グラム)染色は,デンマークの内科医Hans Christian Joachim Gramによって1884年に考案された細菌の染色法で,染色性と形態からおおまかな菌種の推定が可能である.近年では,ガイドラインなどで病巣の塗抹検査を重視する記載が増えたことや,診療報酬の改訂が追い風となって,感染症治療における抗菌薬の適正使用を行うための迅速診断法としての有用性が認識されている.

 本稿では,グラム染色法のコツと,感染制御に役立つ塗抹鏡検法について概説する.

2) 血液培養

金山 明子 , 小林 寅喆

pp.1454-1459

はじめに

 血流感染症は死亡率の高い感染症であり,起炎菌,感染巣,患者の背景によっては40%を超すグループも認められる1,2).このため感染早期に行う経験的治療に引き続き,起炎菌決定後は感受性が確認された抗菌薬に絞り込み治療を行わなくてはならない(de-escalation).このようなことから血液培養検査は,微生物検査の中では髄液検査と並び,極めて重要度が高い検査である.一方で血液培養検査は採血から結果の解釈までのすべての工程において起炎菌の検出に影響を及ぼす要素を有しており,本検査にかかわる医療従事者はこれらを理解し検査を施行しなくてはならない.本稿では,微生物検査室で行う血液培養検査の内容を中心に,関連する事項も踏まえながら注意すべき点を述べる.

 図に自動血液培養装置を使用した場合の血液培養検査のフローを示した.

3) 喀痰検査

相原 雅典

pp.1460-1464

はじめに

 感染制御の原点は,制御すべき標的微生物を定めるところから始まる.一言で感染制御と言っても,制御すべき対象次第で制御法が異なるためである.下気道感染症で制御対象として最も重要な微生物は,汚染空気や飛沫から伝染する結核菌およびインフルエンザウイルスをはじめとする呼吸器系ウイルスであるが,本来起きてはならない術後感染のようなケースでは,伝染性が低い細菌でも制御対象とされる.感染制御というテーマにおける感染症検査室の役割は,制御対象となる病原体を迅速,的確に検出することであるが,最初の1例目の発見が感染制御全体の成否を分ける鍵となる.

4) 尿検査

高橋 俊司

pp.1465-1468

はじめに

 尿路感染症は病院感染症のなかで最も多く,米国の報告では病院感染症の40%を占め,その66~86%が尿道に留置されたカテーテルが起因となった尿路感染症,いわゆる尿道カテーテル関連尿路感染(catheter-associated urinary tract infections;CAUTI)である1)

 留置した尿道カテーテルは表面に細菌バイオフィルムが形成されて,抗菌薬に抵抗性を示すことが知られている.そのバイオフィルムは,尿路感染症治療の難治性因子となって持続性感染が成立し,耐性菌が定着することで病院感染の汚染源(リザーバー)になる.

 病院感染において尿を材料とする微生物検査は,尿路感染症診療はもちろんCAUTIを考慮した感染制御の視点からも有用な情報を提供することが重要である.

5) 便検査

柳沢 英二

pp.1469-1472

はじめに

 日常糞便の検査は,外来では主に腸管感染症原因菌を検出するために行われるが,入院では抗菌剤など投与後の菌交代による施設内感染原因菌の検出を主目的として,検査が行われる.本稿では糞便中に発育する感染制御上重要な微生物の検査法のポイントについて述べる.

各論 4.感染制御に役立つ迅速診断検査

感染制御に役立つ迅速診断検査

松井 秀仁 , 花木 秀明

pp.1473-1481

はじめに

 従来の微生物検査の主な流れは,臨床検体からの起炎菌の分離培養後,菌種の同定,さらに薬剤感受性試験を行う必要があり,結果を得るまでに数日から菌種によっては1週間以上の時間が必要とされてきた.その間は医師の経験的治療しか行えず,広域スペクトルをもつ抗菌薬が安易に使用される場合が多い.そのため,時に適切な治療が行えずに患者への負担が増加するだけでなく,抗菌薬の乱用により薬剤耐性菌の増加につながる危険性を含んでいた.しかし近年,感染症の迅速診断検査を可能にした様々な方法(イムノクロマト法,polymerase chain reaction;PCR)が確立され,臨床の現場で用いられるようになってきた.

 迅速診断検査のなかで,特にイムノクロマト法は操作方法が簡便で,特別な機器や熟練した技術を必要とせず,検体採取から数十分以内に結果が得られる利便性を兼ね備えている.そのため大学病院のような大きな施設から開業医などの個人の診療所においても幅広く使用されるようになり,今日の感染症診断には不可欠な方法となっている.

 また,PCRは起因菌の標的遺伝子を指数関数的に増幅させて検出することから,1反応当たり1~10コピー程の標的DNA量で検出が可能である.つまり1-tube当たり最低1個の細菌が存在すれば検出可能と考えられるが,このtemplate添加量は1μl程度が普通の添加量であるため,少なくともサンプル中の菌数は103個/mlが必要になる.確実に検出するためには104個程度が必要と考える.また,リアルタイム測定装置を用いればサイクルごとのDNA増幅を検出し,定量的な検査を行うことも可能である.

 本稿では,これら迅速診断検査のうち抗原抗体反応を用いた免疫学的検査法とPCRに代表される核酸増幅検査法について,それぞれの原理,特徴について述べる.ただし,単なる研究用の試薬として販売され,体外診断薬の認可を受けていないキットも含まれるので,その点についてはご注意願いたい.

各論 5.感染制御に役立つ遺伝子学的検査

感染制御に役立つ遺伝子学的検査

山本 達男 , 高野 智洋 , 矢部 静 , 樋口 渉 , 岩尾 泰久

pp.1484-1488

はじめに

 Multilocus sequence typing(MLST)は,ゲノム上に位置する複数個(通常7つ)のhouse-keeping geneの部分配列をもとにしてコンピューター上で型別する方法で,1998年以降グローバル分子疫学解析法の“gold standard”として定着しつつある1).その特徴は,①菌株の高い識別能力,②データ作製・解析の標準化の容易さ,③世界各地からの容易なアクセスと最新情報の共有にある.代表的な解析例には,黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus),肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae),インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae),ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)などがあり,さらに真核生物であるカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)などでも確立されつつある.それぞれでクローンの関連解析(eBURST解析)が行われている.

 Pulsed-field gel electrophoresis(PFGE)は1984年に開発され,その後広く疫学解析で用いられてきた代表的な標準法である.院内での流行解析では特に威力を発揮する.ゲノムの制限酵素切断パターンを比較する方法で,患者・感染者から同じ切断パターンの菌株が得られた場合には同じ菌株による流行であると判断し,一般に3つ以上の異なったバンドが得られた感染例では異なった菌株による同時多発例であると判断する.同一菌株による流行中ではあるが,ある菌株にゲノムの再編成(変異)が起こった場合には,当該菌株が著しく異なった切断パターンを与えることがある.

 病原性遺伝子のPCR検査は,病型の推定に役立つ.特定の遺伝子と典型的な臨床症状の関連が確立している例には,志賀毒素遺伝子と腸管出血性大腸菌感染症,コレラ毒素遺伝子とコレラ,cagA遺伝子と消化性潰瘍などがある.一方で,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)による深部感染症(肺炎,骨髄炎など)のように,医療現場の要望に応えられない場合も少なくない.

各論 6.感染制御に必要な抗菌薬適正使用の知識

感染制御に必要な抗菌薬適正使用の知識

三鴨 廣繁 , 山岸 由佳

pp.1490-1494

はじめに

 日本の感染症医療は,欧米の感染症医療と比較すると,抗菌薬の投与に関して,大きな違いがある.日本では多くの抗菌薬の投与量は,欧米の投与量の1/2~1/5程度と低くなっている.いずれの投与量が適切であるかを判断するためには,臨床比較試験を行うことが望まれるが,日本では比較試験のデータは極めて少なく,適正な抗菌薬の投与量について判断することが困難である.そこで,近年,抗菌薬の臨床効果を薬物の体内動態(pharmacokinetics;PK)と薬効(pharmacodynamics;PD)で評価する手法が確立されつつある.この手法によれば,薬剤低感受性菌や薬剤耐性菌の多い医療関連感染症では,日本の抗菌薬の投与量が欧米に比して少ない傾向にあることが科学的にも明らかにされてきた1)

 もう一つの問題点として,抗菌薬の感受性の評価方法の問題が存在する.従来から,日本で用いられてきた薬剤感受性の評価基準としてのブレイクポイントは,細菌検査室で汎用されている自動同定機器が米国製であることも関連して,米国のClinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)基準を用いて判定されている.CLSIの基準は,米国の投与量に基づいて決定されているため,日本の抗菌薬投与量での臨床効果が薬剤感受性試験の結果を反映しない可能性がある.

 この問題を解決するためにはpharmacokinetics-pharmacodynamics(PK-PD)より導かれるブレイクポイントを参考に,抗菌薬の投与量を決定することが望ましい2,3).このためには,ブレイクポイントに基づく感受性成績(susceptible-immediate resistant;S-I-R)ではなく,最小発育阻止濃度(minimal inhibitory concentration;MIC)の測定が望ましい.しかし,現状では日本の臨床検査室でMIC値を測定している検査室は必ずしも多くないことも問題点の一つである.

各論 7.感染制御に必要な予防接種の知識

感染制御に必要な予防接種の知識

佐藤 弘 , 多屋 馨子

pp.1496-1499

はじめに

 2009年8月現在,わが国では20疾患(ウイルス性12疾患,細菌性8疾患)に対するワクチンが認可されているが(表),このうち予防接種法に基づいた定期予防接種(以下,定期接種)に含まれる疾患は,ポリオ(急性灰白髄炎),麻疹,風疹,日本脳炎,インフルエンザ,百日咳,ジフテリア,破傷風,結核の9疾患のみである.

 これら9疾患は一類疾病(インフルエンザ以外)と二類疾病(インフルエンザ)に分類され,前者には接種を受けるよう努める義務,いわゆる努力義務が課せられているが,後者には努力義務は課せられていない.接種費用については実費徴収可能となっているものの,一類疾病は予防接種実施主体である市町村あるいは特別区による全額負担の場合が多い.また,一類疾病の接種対象は小児であることから,対象年齢以外でワクチン接種を希望する者,および対象疾患以外に対するワクチン接種を希望する者は,任意接種により疾患を予防していることが現状である.任意接種の場合,一部の市町村あるいは特別区で費用負担があるものの,通常は被接種者(あるいはその保護者)の全額負担となる.

 感染制御のための予防接種の目的の一つとして,感染症の流行を抑制することにより個々の感染・発症を予防するherd immunity(集団免疫)があり,これは前述の定期接種により効果がみられている疾患が多い.しかし,近年の流行の特徴として,従来,小児の疾患と考えられていた麻疹や百日咳が大人でも発生している.すなわち,小児期に予防接種を受けたが,免疫が獲得できていなかった者(primary vaccine failure)や,獲得した免疫が低下して発症した者(secondary vaccine failure)が存在することから,特に感染症に罹患する頻度が高い環境にある者,あるいは自身が周囲への感染源となった場合に周りへの影響が大きい者(例えば,医療機関に従事する者や小児との接触が多い職業の者など)においても,予防接種を受けることが感染制御のために非常に重要である.

 本稿では,感染制御の観点から医療機関に従事する者(以下,医療従事者)において必要と考えられる予防接種の一部について述べる.

各論 8.感染制御に必要な消毒薬の知識

感染制御に必要な消毒薬の知識

辻 明良

pp.1500-1504

感染制御と消毒薬

 感染制御とは,①感染症の発生を未然に防ぐこと,②発生した感染症を制圧することである.そのためには,適切な予防措置と適正な治療が重要である.感染が成立するには,①病原体,②感染経路,③宿主の3つの要因が必要であり,この3つが揃って初めて感染が成立する.そのため,感染対策は,この3つの要因のうちどれか1つでも取り除けばよいことになる.すなわち,①病原体を殺滅すること,②感染経路を遮断すること,③感受性のある宿主を正常化させることである.

 感染制御における感染対策の基本は,病原体を“持ち込まないこと”,“持ち出さないこと”,“拡げないこと”であり,病原体の排除と感染経路(伝播)の遮断である.その主な処理・処置が消毒薬の使用で,その不適切な使用は交差感染を起こし,院内感染を発生させ蔓延させる結果となる.消毒薬の特性をよく理解し選択し使用することが重要である.

各論 9.感染制御と臨床検査技師教育

感染制御と臨床検査技師教育

木下 承晧

pp.1505-1509

感染症の動向

 世界的な規模で感染症のアウトブレイク,薬剤耐性菌,新興感染症(emerging infection diseases;EID)や再興感染症(re-emerging infection diseases;RID)などの発生があり,これらを予防,減少させるために感染制御が求められている.

 2006年に感染症法の改正が公布され,結核予防法が統合されたほか,EIDなどが新しく届出の対象となった.バイオテロ対策として病原体の管理が強く求められ,臨床検査技師らが臨床検体から分離する病原体の所持,輸入,運搬,管理などの取扱いについても規定された.

特集 医療・福祉施設における感染制御と臨床検査 感染制御対策Q&A

交通外傷で救命救急センターに搬送された45歳男性が開放性結核と判明

青木 泰子

pp.1348-1350

症例:45歳男性.交差点の縁石に乗り上げ,破損した状態で停まっている車の中でエアバッグが作動し,人が倒れていると通行人より119番通報があった.救急隊現着時,JCS 200,血圧は触診で90mmHg,脈拍120/分,呼吸数24回/分,酸素飽和度40%,体温は低体温で測定不能であった.外傷性ショックの診断で救急救命センターに搬送された.

 直ちに挿管し,右頸静脈怒張,右呼吸音減弱を認め,胸部X線で右気胸を確認,胸腔ドレナージを施行した.これらの処置により,酸素飽和度および循環動態は安定した.意識障害の原因検索および胸腹部の損傷の評価のため,頭部ならびに胸腹CTを撮影したところ,左肺に空洞性病変が認められたため,気管から痰を吸引して抗酸菌塗抹検査を至急依頼したところ,ガフキー10号の報告であった.

 当日は土曜日であり,当直技師に問い合わせたところ,喀痰のPCR検査は,月曜日の朝に着手して結果判明は火曜日の朝になるとのことであった.駆けつけた会社の同僚に話を聞くと,数か月前から咳をしており,だんだんひどくなってきたこと,食欲もないようでかなり痩せたように見えることから,医療機関への受診を薦めていたが,受診していなかったようだとのことである.

心臓血管外科の術後患者にMRSA菌血症のアウトブレイク

草地 信也

pp.1378-1380

症例:心臓血管外科で大動脈弁置換術を実施した60歳の男性が,術後3日目に発熱し,血液培養でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出された.胸骨正中切開の縫合部位にも感染徴候があり,同部位の分泌物からもMRSAが検出された.この患者以外に,同じ病棟で最近1か月以内に心臓血管外科で手術を受けた腹部大動脈瘤の患者,心臓ペースメーカー植込み術を行った患者の2名がMRSAによる術後創感染を発症していた.なお心臓血管外科では周術期感染予防のための抗菌薬として,セファゾリンを手術直前から術後3日間使用している.

産婦人科病棟に入院中の褥婦に水痘発生

坂田 宏

pp.1439-1440

症例:5月5日に在胎40週1日で正常男児を出産した褥婦(30歳,初産)が5月6日に発熱した.皮疹を伴っていたため感染症専門医の診察を受けたところ水痘と診断された.この褥婦は,水痘未罹患,水痘ワクチン未接種で,産婦人科病棟の2人床に入院中であり,どちらの褥婦の新生児も出産当日から母児同室で母親が世話をしていた.

血液腫瘍内科病棟に入院中の患者にインフルエンザ発生

徳江 豊

pp.1482-1483

症例:インフルエンザ流行期の2月2~4日に,血液腫瘍内科病棟で発熱者が相次ぎ,2月4日に迅速診断を行った結果,9名中4名(全員5人床の同室に入院している男性患者)がA型インフルエンザと診断された.同日看護師1名もA型インフルエンザと診断された.2月5日には同じ病棟のそれぞれ別の病室に入院中の3名の患者(男性2名・女性1名)がA型インフルエンザと診断された.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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