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文献詳細

雑誌文献

臨床検査53巻13号

2009年12月発行

文献概要

今月の表紙 帰ってきた真菌症・12

スエヒロタケ(Schizophyllum commune)

著者: 亀井克彦1

所属機関: 1千葉大学真菌医学研究センター

ページ範囲:P.1620 - P.1622

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 スエヒロタケ(Schizophyllum commune)は文字通りキノコ(真正担子菌)の一種である.キノコは真菌の仲間であるが,ヒトに感染あるいは定着するキノコは大変少ない.これまでにスエヒロタケやCoprinus cinereus(和名:ヒトヨタケ)など数種類が知られているに過ぎず1),大部分の症例はスエヒロタケによって占められている.スエヒロタケは決して珍しいキノコではなく,全国各地の朽ち木などで頻繁に見ることができる(図1)が,わが国では食用には用いない.

 本菌による感染は,わが国では大部分がアレルギー性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary mycosis;ABPM)であり,拡張した気管支内に本菌が定着して,Ⅰ型あるいはⅢ型のアレルギー反応により気管支粘液栓子(図2)を形成したり,無気肺,好酸球性肺炎,気管支喘息などを引き起こす(図3).気管支喘息の合併はアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(allergic bronchopulmonary aspergillosis;ABPA)に比べると比較的少ない.欧米ではアレルギー性副鼻腔真菌症(allergic fungal rhinosinusitis;AFRS)の報告が多く2),また稀に侵襲性の感染を起こすこともある3).組織内の本菌の菌糸はアスペルギルス症に酷似しており,鑑別は容易でない(図4).本菌によるABPMは1989年に初めて報告されて以来4),急速に増加し,数多く報告されており5),臨床検査において遭遇する機会も多くなってきた.

参考文献

)diagnosed after a neutropenic episode. Med Mycol 40:217-219, 2002
. A case report. Rhinology 47:217-221, 2009
:an emerging basidiomycete pathogen. J Clin Microbiol 4:1628-1632, 1996
. Clin Infect Dis 18:305-309, 1994
(スエヒロタケ)によるアレルギー性気管支肺真菌症の1例~本邦報告例の臨床的検討~.日呼吸会誌 47:692-697,2009
6) 西村和子:感染性担子菌類の交配行動.千葉大学真菌医学研究センターHP=http://www.pf.chiba-u.ac.jp/news/tokushuu.pdf(2009年10月28日参照)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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