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文献詳細

雑誌文献

臨床検査53巻3号

2009年03月発行

文献概要

シリーズ最新医学講座・Ⅰ 死亡時医学検査・3

死亡時画像(Ai)とCT

著者: 塩谷清司1 河野元嗣2 菊地和徳3 植田光夫4 高柳美伊子4 早川秀幸5

所属機関: 1筑波メディカルセンター放射線科 2筑波メディカルセンター救命救急センター 3筑波メディカルセンター病理科 4筑波メディカルセンター検査科 5筑波剖検センター

ページ範囲:P.363 - P.367

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死後CT

 近年,世界的に解剖率の低下が深刻な問題となるに従い,死後画像が解剖の代替手段となりうるかどうかを検証するために,2000年頃から本格的な研究(日本ではオートプシーイメージング1,2),欧米ではバーチャルオートプシー3))が始まった.オートプシーイメージングを戦略,システムとすると,postmortem CT(死後CT)はその戦術の一つである.日本における死後CTは,1980年代半ばから主に救命救急病院で施行されはじめ,現在数多く施行されている4).この日本に特異的な状況は,監察医制度が十分に普及していないこと5),CTの普及率が世界一6)という二つの理由による.

 現在,日本の監察医制度は大都市でしか施行されておらず,人口の85%が監察医制度のない地域に住んでいる.監察医のいる地域の救命救急病院では,来院時心肺停止状態で搬送され心肺蘇生術を施行するも死亡した患者(=異状死)は,監察医が解剖を施行することによって死因が正確に診断されている.反対に監察医がいない地域の救命救急病院では,これらの異状死に解剖を積極的に施行することができないため体表面からの観察だけで死因を推定せざるを得ず,正確な死体検案書を作成することは困難である.一方,日本には世界中のCT装置の半数近くが設置されていると言われている.そこで,監察医のいない地域でも死因を正確に診断しようとする,そして,‘解剖はしてほしくないが死因は知りたい’という遺族の気持ちに応えようとする救命救急医が,苦肉の策として死後CTを利用するようになった.

参考文献

1) オートプシー・イメージング学会:ホームページ.  〈http://plaza.umin.ac.jp/~ai-ai/〉
2) 千葉大学Ai(エーアイ)センター:ホームページ.  〈http://radiology.sakura.ne.jp/Ai/index..htm〉
3) ベルン大学バートプシー:ホームページ.  〈http://www.virtopsy.com/〉
4) 第3回オートプシー・イメージング学会―全国救命救急センターアンケート―9割の施設が死後画像撮影の経験あり.メディカルトリビューン 39:14,2006(3月9日)  〈http://www.medical-tribune.co.jp/mtbackno9/3910/10hp/M3910141.htm〉
5) 中根憲一:我が国の検死制度―現状と課題.  〈http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/200702_673/067306.pdf/〉
6) Organization for Economic Co-operation and Development:OECD Health Data 2007-Frequency Requested Data (Health care resources-CT scanners per million population)
7) Shiotani S, Shiigai M, Ueno Y, et al:Postmortem computed tomography findings as evidence of traffic accident-related fatal injury. Radiat Med 26:253-260, 2008
8) 中園一郎:日本での死因究明制度の現状と問題点 法医学の立場から.新医療 35:19,2008
9) 検案に死後CTを導入―外表観察の限界を克服し,「真の死因」解明に貢献.メディカルトリビューン37:38,2004(6月3日)  〈http://www.medical-tribune.co.jp/mtbackno7/3723/23hp/M3723381.htm〉
10) Hayakawa M, Yamamoto S, Motani H, et al:Does imaging technology overcome problems of conventional postmortem examination? A trial of computed tomography imaging for postmortem examination. Int J Legal Med 120:24-26, 2006
11) 柳原三佳:補稿「ウィーン解剖事情」見聞録.焼かれる前に語れ(岩瀬博太郎,柳原三佳編),WAVE出版,pp204-219,2007
12) 検視にCT検査導入 変死体増加,誤認防止へ.共同通信2006年8月29日付
13) 国家公安委員会定例会議:第3議事概要(2008年10月9日).〈http://www.npsc.go.jp/report20/10-09.htm〉
14) 塩谷清司:Case 2腹腔内臓器損傷.オートプシー・イメージング―画像解剖(江澤英史,塩谷清司編),文光堂,pp72-75,2004
15) 山崎健太郎,塩谷清司:症例4腹部外傷 救急搬送症例.100万人のオートプシー・イメージング(Ai)入門(江澤英史編),篠原出版新社,pp74-75,2005
16) Aghayev E, Thali M, Sonnenschein M, et al:Post-mortem tissue sampling using computed tomography guidance. Forensic Sci Int 166:199-203, 2007
17) 塩谷清司:Case 6結核による喀血死.オートプシー・イメージング―画像解剖(江澤英史,塩谷清司編),文光堂,pp84-87,2004
18) Hamano J, Shiotani S, Yamazaki K, et al:Postmortem computed tomographic(PMCT)demonstration of fatal hemoptysis by pulmonary tuberculosis―radiological-pathological correlation in a case of rupture of Rasmussen's aneurysm. Radiat Med 22:120-122, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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