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今月の主題 妊娠と臨床検査 話題
羊水塞栓症の血清補助診断
著者: 木村聡12 金山尚裕2
所属機関: 1木村産科婦人科医院 2浜松医科大学産婦人科
ページ範囲:P.481 - P.484
文献購入ページに移動羊水塞栓症(amniotic fluid embolism;AFE)は産婦人科周産期領域において,母体死亡を起こす重要な疾患である.近年の産科医療の進歩によりわが国の妊産婦死亡率は漸減しているが,その中でAFEは減少しておらずAFEの占める割合は増加傾向にある.妊婦が分娩中や分娩直後に突然の息苦しさを訴えたり不穏状態となったりした場合,AFEの発症を念頭に置かねばならず,すばやい救命措置をとらなければその死亡率は50%前後に及ぶ.AFEは羊水成分が母体血中に流入して起こると推定されるが,いまだに明確な発症機序がわかっておらず,その解明が急がれている.AFEの危険因子として,羊水が母体血中に流入しやすい状態が考えられる.具体的には子宮内圧の高くなる状態,つまり陣痛促進剤投与による分娩誘発例や,羊水成分の入りやすい状態,つまり子宮を切開する帝王切開の症例や産道裂傷の大きな症例などが挙げられる.他のリスク因子としては母体の高齢(35歳以上),アレルギー体質,アトピー患者などが知られている.
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