文献詳細
今月の表紙 帰ってきた真菌症・5
文献概要
接合菌症はMucoralesに属する菌種が原因となるムーコル症とEntomophthoralesに属する菌種が原因となるエントモフトラ症に分けられる.エントモフトラ症の感染部位は鼻粘膜と皮下組織にほぼ限られ,また,わが国では熱帯,亜熱帯に発生する本症の症例はない.これに対して,ムーコル症は日和見感染として発生する重篤な感染症で,接合菌症の大半を占め,肺,鼻,皮膚などが侵される.病原性接合菌類はいずれも速やかに生育し,寒天培地上でシャーレの蓋に達する毛足の長い綿毛状の集落を形成する(図1).菌糸は幅広く,有性胞子として接合胞子(図2)を形成する.属の特徴となる構造として,仮根(菌糸の一部から生じる植物の根のような構造),胞子囊,柱軸(柄が胞子囊内に突き出た部分),アポフィシス(胞子囊下部の構造)がある.無性胞子は胞子囊胞子と呼ばれ,胞子囊内に形成され,成熟すると胞子囊壁は破れ放出される.
ヒトに対する主要なムーコル症原因菌を以下に示す.
ヒトに対する主要なムーコル症原因菌を以下に示す.
参考文献
1) 宮治誠,西村和子:医真菌学辞典 第2版,協和企画通信,1993
2) De Hoog GS, Guarro J:Atlas of Clinical Fungi, 2nd ed. Centraalbureau voor Schimmelcultures, Utrecht, pp59-124, 2000
3) 宮治誠:病原性真菌ハンドブック,医薬ジャーナル,pp115-116,2007
4) 山口英世:病原真菌と真菌症,改訂4版,南山堂,2007
5) 宇田川俊一:ムーコル症病原菌の菌学.マイコトキシン 34:7-13,1991
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