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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査53巻7号

2009年07月発行

雑誌目次

今月の主題 唾液の臨床検査

巻頭言

唾液の臨床検査

片山 善章

pp.759-760

 検体検査は尿,血液,髄液,穿刺液,関節液,消化液,羊水,精液,汗,組織片,遊離細胞,骨髄細胞など特殊なものを含め,多くの検査試料を対象として検査を行うが,大部分は血液(血漿,血清),そして尿が一般的に検査試料として用いられている.尿は無侵襲的に採尿するが,採尿の困難な,あるいは尿が出にくい患者さんには負担である.血液は採血しなければならない,いわゆる侵襲的になるので患者さんに苦痛を与える.また,採血は臨床検査技師や看護師,医師などの技術的に精通した医療スタッフが関与しないといけない制限がある.このような患者さんに負担がかかる試料採取は臨床検査が1950年頃に本邦に導入されてから現在まで続いている.

 患者さんに負担のかからない試料採取法については,20数年前に,「蚊」の吸血機構を臨床検査における採血に応用できないかというテーマの講演を聴いたことがある.インターネットで検索をしてみると「東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 蚊の吸血機構を採り入れた自動採血装置の開発」「蚊の吸血機構を採り入れた自動採血の試み.日本臨床化学会,大津,2001年6月」が見つかった.ほかにも生体工学関係の数大学が蚊の吸血機構を研究のテーマにしているが,現実的にはどこまで研究が進んでいるのか,話題になっていないことから推測すると具現化は困難か,もっと時間がかかるように思われる.

総論

唾液腺の構造と唾液の機能

鈴木 裕子 , 東城 庸介

pp.761-766

 口腔は唾液で常に湿った環境にある.唾液により咀嚼,嚥下,発声がスムーズに行われまた歯の表面も保護されている.唾液を分泌する唾液腺の組織構造を電子顕微鏡,免疫組織化学の知見をまじえて概説し,さらに唾液の機能と分泌機構について述べる.

唾液のORP数値を限定して“体調度”を確認

岡澤 美江子

pp.767-777

 人間の営みはまず口から始まり,排泄に終わります.一人ひとりの体には,それぞれ一つとして同じではない個性豊かな小宇宙の存在を確認する思いです.人間の体(小宇宙)は自然が作った最高傑作だということを実感してきました.私は,1944年(昭和19年)現東邦大学医学部の生化学の研究室に入り薬剤服用の化学変化の臨床研究・実験に着手.生化学教室で唾液を採取して,当時としては貴重な試験薬を用いて体内に起きる薬剤服用の経時効果の実験を繰り返しておりました.この生化学実験から唾液測定が体内の状況を知るのにいかに有効かという手掛りを得ました.大学を卒業し臨床医になって診療に従事していたときも,唾液測定への関心はいつも頭の中にありました.しかし,診療が優先する臨床現場ではどうするかという解決手法が身近にありませんでした.血液がそのまま唾液となるわけではありませんが,唾液は,血液中の成分が唾液の成分になっているので体内を巡る血液と同じ情報を数多く持っていることがわかっています.長年,願っていたテーマに結びつき私の心を揺り動かしたのは,21世紀は酸化・還元の時代になるという研究報告です.地球の環境クリーニングは落雷に起因すると新説を公表する医療機器の研究・開発リーダーで体の酸化度と健康について強い関心を持つ大友慶孝氏との出会いでした.

唾液検査の現状と近未来

山口 昌樹

pp.779-784

 唾液検査による全身疾患の診断のキーワードは,バイオチップ,バイオセンサ,バイオマーカーの3つである.唾液検査は,確かに安全性や自己採取・随時採取が可能であるなど,血液検査に比べて圧倒的に優位な点を有するが,これらだけでは全身疾患の診断技術を確立するのは難しい.唾液検体の採取/濃縮技術,迅速・低コスト・高感度な分析技術が驚異的な進歩を遂げる今,唾液検査の実用化の鍵を握るのは,既存の診断方法よりも圧倒的に優れているか,もしくは新たな付加価値を創造するような,唾液バイオマーカーの使い方であると考える.現在は,口腔疾患や感染症の唾液検査が一部で実用化されているのみであるが,ポイント・オブ・ケア検査では,近い将来,様々な全身疾患の唾液検査が可能となっていくであろう.

唾液,唾液腺の異常にかかわる疾患

柿木 保明

pp.785-791

 唾液は,口腔の機能や環境を正常に保つうえで極めて重要であるが,正常な状態では認識されていないことが多い.しかし唾液分泌低下や嚥下障害が生じると,唾液の存在が理解されることとなる.唾液分泌は,様々な因子から影響を受けているが,特に近年は,薬剤やストレスと関連した唾液分泌低下や口腔乾燥症が多くみられることから,単に老化が原因と決めることは避けたい.さらに寝たきりに伴う口腔乾燥や全身疾患の一症状として発現する場合は注意を要する.唾液や唾液腺の異常については,これらの複合した因子を考慮して対応することが必要となる.

各論

唾液採取―手技を中心に

白川 卓

pp.793-798

 唾液は古くから知られた臨床検査材料であるが,血液や尿のように十分に活用するには至っていない.その原因として唾液腺ごとに分泌される成分が異なることや生理的変動を受けやすいことが挙げられる.また,採取法や採取用具によっても測定値に変動が生じる.新しい測定技術の進歩や分子生物学における発見は唾液検査に新たな展開をもたらしつつある.しかし,いくら測定技術が向上してもサンプリングに問題があれば検査としては成り立たない.今後,唾液検査を普及させるためにはそれぞれの検査対象に応じた採取法を検討し,標準化することが重要である.

唾液採取法―器具を中心に

米田 孝司 , 内田 浩二 , 片山 善章 , 鈴木 宏一 , 木戸 博

pp.799-805

 唾液は生化学検査,感染症,ストレス,薬物,遺伝子検査などの臨床的意義があり,また,採取時に肉体的にも精神的にも苦痛を伴わないので自己採取も可能な利点を有する.しかし,唾液が検査試料として一般化されていない理由の一つには,唾液は耳下腺,顎下腺,舌下腺などの唾液腺から分泌される透明な液体で粘性がある点がある.唾液採取器具は唾液の気泡は除去できるが,検査における粘性の影響は無視できない.唾液の採取法および採取器具は非常に重要であるので脱脂綿棒,唾液採取容器(サリベット),passive drool(唾液をチューブに直接,または,ストローを通して,だらだらと採取すること)やその他について紹介および報告する.

唾液を検体とした新しいストレス評価法―唾液クロモグラニンAおよび唾液α-アミラーゼ活性によるストレス評価

廣瀬 倫也 , 加藤 実

pp.807-811

 近年,唾液中に分泌されるクロモグラニンAやα-アミラーゼの活性の測定が客観的なストレス評価法として確立されつつある.両者はいずれも,ストレスに対する交感神経活動の変化の指標となり,その反応は非常に速やかであるという性質から考えると,将来,臨床現場での応用が期待される.本稿では,ストレスと唾液クロモグラニンAやα-アミラーゼ活性の関係について行われた過去の研究報告を紹介し,クロモグラニンAやα-アミラーゼ活性の測定によるストレス評価の臨床応用の可能性について述べる.

歯髄,歯石および唾液斑からのDNA鑑定による個人識別

小室 歳信

pp.813-818

 法医鑑識領域における個人識別に際し,DNA鑑定は非常に古い試料からでも検査が可能であるとして,指紋や歯科所見あるいは血液型など,ほかの検査法を抑えて究極の鑑定法としての地位を確立し得た感がある.鑑定結果の信頼性は高いことから,犯罪捜査や裁判などで被疑者の特定や量刑にかかわる確定的な証拠資料として重視されている.したがって,検査の迅速性に加え人権擁護の観点からも鑑定の正確性が強く求められている.そこで,鑑定試料の特徴を考慮して,陳旧化した歯髄,歯石,唾液斑を試料とし,短鎖縦列反復配列多型を中心にDNA解析を行い,人獣鑑別,性別判定,人種鑑別および個人識別にかかわるデータを紹介する.

話題

唾液検査で排卵が予知できるか?

吉田 耕治 , 桑崎 雅

pp.819-822

1.はじめに

 排卵の予知は,生殖年齢のカップルにとって2つの意味がある.妊娠したいカップルは排卵に合わせて性交を行うことが推奨され,逆に妊娠を望まないカップルはその時期に何らかの避妊法を行うという2つの意味である.女性が,月経後毎日婦人科診察を受ければ,排卵時期が正確にわかるのは自明であるが現実的ではない.そこで,生殖年齢の女性が自己検査可能で,経済的で簡便,大きな負担なく行え,持続可能な方法でかつ有効性が高い排卵予知検査が望ましい.本稿では,その可能性があると思われるミニ顕微鏡とOvaCUE fertility monitor1,2)の2つの器機による排卵予知に焦点を当てて総説する.

喫煙マーカーとしてのコチニン,ビスフェノールA ELISA測定―唾液試料を中心に

米田 孝司 , 内田 浩二 , 片山 善章

pp.823-828

1.はじめに

 喫煙は肺およびバッカル/鼻腔皮膜組織からのニコチン吸収となり,ニコチンの吸収は非常に速く,肝臓のCYP2A6により8割はコチニンに代謝され,トランス3´-水酸化コチニンへと無害な物質に変わり,70~80%が腎臓から排泄される.図11)にニコチンとコチニンの代謝とCYP2A6多型について示した.さらに,吸収されたニコチンは主にトランス3´-水酸化コチニンとして排泄され,コチニン(15.0~24.5%),コチニンN-グルクロン酸抱合体(5.1~10.2%),トランス3´-水酸化コチニンO-グルクロン酸抱合体(5.3~12.9%)として主に排泄される1).体液中のコチニンは安定で約17時間の長い半減期がある.また,ニコチン代謝が短いので喫煙者が再度すぐに喫煙したくなり,無害なコチニンにならなかった残りの2割が有害な発癌物質などに転換されるともいわれている.したがって,血液,尿,唾液を試料とする場合は半減期の短いニコチンよりも長いコチニンのほうが有用である.喫煙者の接着分子sVCAM-1(vascular cell adhesion molecule-1)と血漿コチニンに正相関を認めたので動脈硬化症や喫煙高血圧と関連があるという報告や,Wilsonらは環境中たばこ煙曝露での白人子どもよりアフリカ系アメリカ人の子どもの血清と毛髪のコチニン濃度は有意に高値を示すと報告している.

 コチニンの分析にはLC/MS(liquid chromatography/mass spectrometry:液体クロマトグラフィ質量分析計),GC/MS(gas chromatography/mass spectrometry:ガスクロマトグラフィ質量分析計),HPLC(high-speed liquid chromatography:高速液体クロマトグラフィ)などがあり,特別の設備や複雑な操作を要求するが,ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay:酵素免疫測定)法は比較的簡便である.

 Accuracy-One社のSmoke-COTテストのように尿中コチニン濃度200ng/mlがcut-offとなるイムノクロマト法も市販されており,喫煙状態の判定のみの目的に使用されているが2),唾液使用には感度が低すぎる.石川ら3)~6)は抗アミノエチルコチニン抗体および抗6-アミノニコチン抗体を用いる非競合法の高感度なELISA法を報告しており,コチニンはビオチン化効率が高く,0.03fmolの測定感度を得ているが,抗体の特異性が低いという問題がある.

 近年,受動喫煙は大きな社会問題となり,受動喫煙の生体への影響および取り込み検査のために高感度コチニン測定の必要性が望まれている.現在市販の簡易キットは喫煙者を対象としているが,受動喫煙レベル感度のELISA試薬は少ない.血液,尿,唾液を試料とする能動的および受動的喫煙のコチニン測定ELISAキットを多く扱っている会社の製品と性能評価の一覧を表17)に示した.唾液をスポンジに吸わせてその唾液からニコチンの代謝物であるコチニンを測定する試薬もある.

唾液sIgA抗体と常在細菌叢

泉福 英信 , 河原井 武人

pp.829-833

1.はじめに

 唾液は,分泌型IgA(secretory IgA;sIgA),アミラーゼ,デフェンシン,ラクトフェリン,低分子ムチンなどを含む多くの抗菌物質を含んでいる.口腔では,口腔細菌がこれらの唾液中抗菌物質と戦いながら一定の常在細菌叢を形成している.近年,微生物の生き残り戦略としてバイオフィルムが注目され,多くの研究が行われるようになった.口腔においても口腔細菌が歯表面や口腔粘膜に付着して,増殖,凝集,菌体外多糖合成によりバイオフィルムの成熟が行われる(図1).成熟したバイオフィルムは,抗菌物質に対して抵抗性を有し,バイオフィルム内で菌体が殺されずに生きながらえるようにする.一方,抗菌物質である分泌型IgA,アミラーゼ,低分子ムチンは,歯表面のハイドロキシアパタイトに吸着し,獲得ペリクルを形成している.これらの抗菌物質は,Streptococcus sanguinisStreptococcus mitisStreptococcus gordoniiが結合するレセプターとしても機能する.よって,獲得ぺリクルとして形成されたこれらの物質にstreptococciが特異的に結合する.この現象によりstreptococciの初期付着が起こり,バイオフィルムが形成されるきっかけとなる.このような唾液成分とstreptococciの特異的な結合が起こることによって,streptococciを中心とする口腔細菌叢ができあがってくる.

 streptococciの多くは,幼児期に母親などから伝播し,口腔に定着するようになる.この口腔へのstreptococciの定着により,口腔粘膜上での免疫応答や,血管に入り込んだ結果,全身免疫応答が生じ,抗streptococci抗体が誘導されるようになる.口腔には,粘膜上の免疫応答により感作を受けたリンパ球が成熟し抗原特異的なIgAを分泌,唾液腺を介してsIgAが放出されるようになる.一方,全身免疫応答では血清中に抗原特異的なIgGが分泌され,歯肉溝浸出液を介して口腔に放出されるようになる.このように唾液中には,口腔細菌に特異的に反応するIgAやIgGが存在していると考えられる.

今月の表紙 帰ってきた真菌症・7

電顕で見た真菌―透過電子顕微鏡でみた細胞内構造

山口 正視

pp.756-758

 ご承知のように,ウイルスを除くすべての生物は細胞からできている.そして,その生物を構成する細胞の特徴が,細菌,真菌,動物,植物などの特徴を決めているのである.

 図1は,真菌細胞(クリプトコックス・ネオフォルマンス)の超薄切片の透過電子顕微鏡像で,図2が,その模式図である.生物は,原核生物と真核生物に分けられるが,真菌は後者に属し,その細胞は核膜で包まれた核をもっている.核には核小体があり,核膜には核孔がある.細胞質には,ミトコンドリア,滑面小胞体,粗面小胞体,液胞,リボソーム,ゴルジ体,紡錘極体のほか,マイクロボディ,脂肪滴,グリコーゲン顆粒,自食胞,微小管,微小繊維などがある.細胞質は,原形質膜で包まれ,丈夫な細胞壁が細胞を包んでいる.紡錘極体は,動物細胞の中心小体に相当する小器官で,細胞分裂に際して重要な役割を果たす.

映画に学ぶ疾患

「ゴースト」―再生医療

安東 由喜雄

pp.834

 不老不死の薬を作ろうとする無駄な努力は,古くは秦の始皇帝に始まり現代につながる.アンチエイジングなる学問が盛んに行われているが,人はいつかは死を受け入れなければならない.それはヒトという生命体にセットされた必然現象である.しかし事件,事故によって突然失われつつある命,臓器はどんなことをしても一度は元に戻さなければ,家族の心の整理ができないというものだ.最近までES細胞を利用し,様々な方法を介して目的の臓器に分化させる試みが行われてきたが,この研究にはヒトの受精細胞を用いる必要があり,今の倫理規定では実用化は難しいと考えられている.

 ところが,京都大学の山中伸弥教授は,いくつかの工夫を凝らし,この問題をあっさりクリアしてしまった.山中教授はヒトの皮膚の細胞を使ってiPS細胞と呼ばれる細胞を世界で初めて開発した.iPS細胞とは,線維芽細胞へ数種類の遺伝子を導入することにより得られた,すべての細胞に分化可能な分化万能性を持った細胞をいう.山中教授はこの発見で一躍「時の人」になった.

シリーズ最新医学講座・Ⅰ 死亡時医学検査・7

司法解剖,法医鑑定における死後画像検査の役割

池田 典昭

pp.835-839

はじめに

 法医学における重要な業務の一つである司法解剖における死後画像検査の有用性についてはすでにいくつもの報告があり,溺死診断における胸部X線写真の重要性については古くよりよく知られている1).また,法医学では死後画像検査を含めた画像検査は古くから法医レントゲン学として研究されており,南アラバマ大学放射線科Brogdon名誉教授の名著である‘Forensic Radiology’2)(法医レントゲン学)は1998年の刊行以来,法医鑑定時の参考図書として広く活用されており,間もなく改訂される予定である.その内容は,画像検査の個人識別への応用,射創の解析,小児および老人虐待の解析,生体鑑定への応用などであり,10年以上前の著書にもかかわらずMRIの利用にまで言及している.これはAiという概念が提唱されるはるか以前より法医鑑定における死後画像の有用性が認知されていたことを示しており,筆者も積極的に利用してきた3)

 しかしいかに死後画像検査が有用であろうが,それが司法解剖において万能というわけではない.ここでは死後画像が活用された例をいくつか挙げ,司法解剖,法医鑑定における死後画像の有用性と問題点について述べる.

シリーズ最新医学講座・Ⅱ iPS細胞・7

iPS細胞による網膜再生の可能性

渡辺 すみ子

pp.841-845

網膜再生の必要性

 世界には5千万人以上の,わが国では1991年の統計では約3万人の方が視覚障害者であると報告され,その失明原因の上位に,有効な治療法の開発が必要な網膜の疾患が挙がっている.この事実のみならず,高齢化社会がますます進展することを考えても視覚の維持,あるいは再生が重要とされるゆえんは容易に理解される.

 しかしながら,角膜についてはその再生が様々な方法により現実のものとして各所から報告されているのに対し,網膜再生はまだ道が遠いと言わざるをえない.その理由は角膜の機能,構造が比較的単純であるのに対し,網膜ははるかに複雑である.実際網膜は発生学的にも機能的にも中枢神経そのもので,複雑な神経ネットワークにより機能を発現する.また幹細胞という視点で考えても脳の神経幹細胞が極めてアクティブに研究され,細胞移植による神経再生の実現化が進んでいるのに対し,網膜幹細胞は研究人口も少なく,こと高等脊椎動物の網膜幹細胞についてはまだその実態は明らかでない.

 筆者らも,網膜の幹細胞やその後の細胞分化の分子過程を明らかにし,網膜再生を実現させようと考えている研究グループのひとつであるが,網膜幹細胞の代替,あるいは代替をこえる細胞ソースとしてiPS細胞による網膜再生の実現を視野に入れる時代が到来したと考えている.

研究

Screen filtration pressure法によるアスピリンの抗血小板効果の測定

奥宮 明子 , 石川 雄一 , 高嶋 依美 , 竹内 文絵

pp.847-852

 Screen filtration pressure(SFP)法に基づく全血血小板凝集測定装置を用いてコラゲンおよびADP凝集によりアスピリンの抗血小板作用を測定した.健常人血液(アスピリン無添加)では,透過光法終了直後の反応液を用いたSFP法は透過光法と同等の凝集を検出したが,全血を用いたSFP(WB-SFP)法と透過光法の関係は惹起物質により異なった.コラゲン凝集によるWB-SFP法は透過光法よりアスピリン測定感度が高かった.同法によるPATI(血小板凝集閾値係数)の同時再現性および日差変動のCVは各々7.1%,6.4%であった.さらに超低用量アスピリン(40mg/日)服用の薬効評価におけるWB-SFP法の有用性が示された.

Coffee Break

一度も無かった僕等の修学旅行

佐々木 禎一

pp.806

 最近TVなどで修学旅行で北海道にきている小,中および高校生にinterviewしている場面を結構目にする.皆楽しそうに答えているが,実は私たちは小学生の頃から一度も修学旅行の経験が無かった.私は小,中学校時代を小樽で過ごしたが,それはちょうど戦争の時期と重なった.しかしそれが修学旅行が無かった理由でなく,私の通っていた小学校だけの話であった.その経緯について想い出しながら書いてみようと思う.

 私は昭和10年(1935年)に小樽市立花園小学校に入学した.当時のY校長先生は厳格な教育者であり,他校と異なる獨特の教育方針を持っていた.例えばスポーツの対外試合は一切駄目で(しかし優勝を続けていたドッジボールは例外的にOKであった),そして修学旅行は他校に較べて小規模で最終学年の6年生の時に札幌日帰りの1日のみであった.

あとがき フリーアクセス

片山 善章

pp.854

 唾液を臨床検査試料として利用したのは1980年代からである.それは非侵襲的に検査試料が得られるというのが第一番目の理由で,唾液のほうが検査材料と適しているのが第二番目であろう.

 非侵襲的に得られる検査材料でもっとも汎用されているのは尿であることは誰もが認めている.河合忠,他『尿検査―その知識と病態の考え方―』(メディカル・ジャーナル社,1992年)の尿検査の歴史から一部抜粋をして以下に述べる.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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