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今月の主題 漢方薬・生薬と臨床検査 トピックス
生薬有効成分をつくる遺伝子のクローニング―甘草のグリチルリチン
著者: 斉藤和季12
所属機関: 1千葉大学大学院薬学研究院 2理化学研究所植物科学研究センター
ページ範囲:P.947 - P.949
文献購入ページに移動生薬の有効成分を見たときに誰もが思う疑問は,なぜこんなにも多様な化学成分を植物は作り出すのだろうと言うことであろう.この質問に答えるためには,生薬の基原となる植物のゲノムにコードされている有効成分の生合成遺伝子を同定してその機能を解明することが必須である.
甘草は七割以上の漢方処方に配合されており,その主要成分であるグリチルリチンには抗炎症作用や肝機能改善作用など多くの薬理活性が報告されている.また,グリチルリチンは甘味付与や味覚矯正の目的で食品添加物として多くの食品や調味料に用いられている.世界の甘草の年間取引額は40億円以上と見積もられており,大きな市場規模を有する.しかし,生産は中国を中心としたユーラシア大陸の東西にまたがる中央部に限られ,供給はほぼ野生植物に依存しており乱獲による資源の枯渇や採取後の砂漠化が危惧されている.それに伴って中国での輸出規制も現実化しつつある.したがって,生薬有効成分はどのような原理で生産されるのかという基礎的な学問的興味と,遺伝子資源の持続可能な有効利用と生産システムの確保,地球環境の保全などの応用的な面から,生産に関与する遺伝子の分子生物学的研究の推進は急務である.
本稿では,最近筆者らの研究グループで成功した甘草でのグリチルリチン生合成遺伝子のクローニングについて解説する.
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