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文献詳細

雑誌文献

臨床検査53巻8号

2009年08月発行

文献概要

学会だより 第98回日本病理学会総会

病理業務のIT化,自動化は病理の将来を救うのか?

著者: 長沼廣12

所属機関: 1仙台市立病院診察部 2仙台市立病院診察部病理診断科

ページ範囲:P.960 - P.960

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 第98回日本病理学会総会が2009年5月1~3日に京都市で開催された.多くの病理医・研究者が集まり,発表演題に対して熱い議論を戦わせていた.多くの病理医とは言え,近年は若手病理医の数は少なく,病院病理医の平均年齢は50歳を超えている.学会も病理医不足の危機感を募らせている.今回も病理の将来を考えるシンポジウム・ワークショップが行われ,いくつかの提言がなされた.

 2日目の朝「病理学の学生教育と卒後教育」のシンポジウムが開かれ,大学での病理学教育のあり方,方法について議論された.卒前教育のカリキュラムが大きく変わり,詰め込みより実践が重視されてきている.病理学は医学の基礎的学問として重要でありながら,授業時間が減らされる傾向にある.どうしたら効率よく学生に教えることができるか,大学関係者の苦労が感じられた.試みとして近年普及しつつあるバーチャルスライド(情報化された病理画像)を利用している事例が報告された.顕微鏡実習では学生人数分の顕微鏡,プレパラートを準備しなければならない.バーチャルスライドを使うと顕微鏡や多数のプレパラートが不要になる.学生は自宅でもウェブ上で,画像を見ながら勉強ができる.パソコン世代の若者には打って付けである.お金と時間を節約できるかもしれない.しかし,実際の現場ではまだまだ顕微鏡を使った病理診断が主流である.顕微鏡を見ないで卒業した研修医が現状の病理診断に興味を持つのか疑問である.若い病理医や研修医の教育という視点で,現場のIT化,効率化導入の意義を考慮する時期だと気づかされた.さらに,研究者も病院病理医も,それぞれが病理学の重要性やおもしろさを再認識し,自身が体現することが最も大切であると思った.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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