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文献詳細

雑誌文献

臨床検査53巻9号

2009年09月発行

文献概要

今月の主題 脳磁図で何がわかるか? 話題

脊髄磁場計測と臨床応用

著者: 川端茂徳1 四宮謙一1 大川淳1

所属機関: 1東京医科歯科大学整形外科

ページ範囲:P.1085 - P.1089

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1.はじめに

 近年,MRIなどの画像診断装置の進歩によって脊髄の圧迫や髄内病変などの形態的な異常は容易に把握できるようになった.しかし,高齢者などでは加齢変化により脊柱管が狭窄し脊髄が圧迫されていても,脊髄機能障害をきたさないことも多く,画像のみで脊髄機能障害を診断することはできない.

 脊髄機能診断法としては体性感覚誘発電位,経頭蓋磁気刺激筋誘発電位,針筋電図などの電気生理学的検査が現在一般的に行われているが,おおまかに脊髄障害の有無を診断できるのみで,詳細な障害部位診断は困難である.詳細な脊髄障害高位の診断には脊髄誘発電位によるインチングが有用である(図1)が1~3),体表からの測定では正確な診断ができないため4,5),硬膜外腔など脊髄の近傍に電極を設置する必要がある.電極の挿入は侵襲的かつ熟練を要するため,診断のために気軽に行う検査とはいいがたく,広く用いられていないのが実状である.

 一方,脳の分野では神経磁界測定が脳磁図計として臨床応用され,脳機能が体表から非侵襲的に測定されている6).電流は髄液・軟部組織で拡散し,骨組織で減衰するなど周囲組織の影響を大きく受けるのに対し,磁界は周囲の生体組織の影響を受けないため,神経磁界測定は電位測定に比べ体表から神経活動を評価するのに適している.

 筆者らは神経磁界測定を脊髄に応用して体表から非侵襲的に脊髄障害部位診断を行うことを目標に研究・開発を進めている.脊髄は脳に比べて深部に存在し磁界が小さいことなどから,ヒトの脊髄誘発磁界はこれまで測定が困難であったが装置の進歩により測定が可能になり,現在臨床応用間近なレベルに近づいている.

参考文献

1) Shimoji K, Higashi H, Kano T:Epidural recording of spinal electrogram in man. Electroencephalogr Clin Neurophysiol 30:236-239, 1971
2) 四宮謙一,古屋光太郎,佐藤良治,他:脊髄誘発電位を用いた頸部脊髄症の診断.臨床整形外科 24:11-21,1989
3) 川端茂徳,持田潔,小森博達,他:経頭蓋磁気刺激-脊髄誘発電位による術前高位診断.脳波と筋電図 27:153,1999
4) 町田正文:体表面誘導による脊髄誘発電位に関する研究.日本整形外科学会雑誌 56:1561-1568,1982
5) 武藤直子,四宮謙一:頸部皮膚上より導出した脊髄誘発電位の分析.日本整形外科学会雑誌 63:S960,1989
6) 中里信和,吉本高志:非侵襲性脳機能測定法 磁気脳波(MEG)の臨床応用.神経研究の進歩 38:238-246,1994
7) 川端茂徳,富澤將司,四宮謙一:脊髄誘発磁界測定による体表からの脊髄機能診断.脊椎脊髄ジャーナル 19:49-56,2006
8) 川端茂徳,小森博達,持田潔,他:磁束計を用いた皮膚上からの脊髄障害部位診断.脊髄電気診断学 23(1):1-5,2001
9) 友利正樹,川端茂徳,新井嘉容,他:脊髄誘発磁界を用いた脊髄不完全損傷の診断.脊髄機能診断学 29:47-52,2008
10) Kawabata S, Komori H, Mochida K, et al:Visualization of conductive spinal cord activity using a biomagnetometer. Spine 27:475-479, 2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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