臨床検査54巻2号

2010年02月発行

シリーズ－ベセスダシステム・2

パパニコロウ・クラス分類の意義と限界

著者： 越川卓¹

所属機関： ¹愛知県立大学看護学部病理学

ページ範囲：P.203 - P.208

パパニコロウ・クラス分類からベセスダシステムへ

　パパニコロウ・クラス分類¹⁾は，特に細胞診を専門とする人でなくても医学を学んだ人であれば誰でも知っているというほどよく知られた分類で，わが国においては長年にわたり子宮頸部細胞診を中心に細胞診全般において広く用いられてきた．一方，米国においては，すでに20年ほど前に子宮頸部細胞診の新しい報告様式としてベセスダシステムが提唱されている^2,3)．そのきっかけとなったのが，1987年11月2日のウォールストリートジャーナル(ニューヨークで発行されている米国の日刊新聞)に米国の子宮頸部細胞診検査の問題点が暴露された事件であった．米国ではPap test(パップ・テスト：パップはパパニコロウの頭文字をとった略語)あるいはPap smear(パップ・スメア)と言えば一般の人でも子宮頸部細胞診検査のことだとわかるほどよく知られた検査であるが，その検査で見落としが多く診断精度が低いという問題点が指摘され，社会問題にまで発展する大事件となった．

　この事件が契機となって，1988年12月には米国メリーランド州ベセスダにある国立保健研究所(National Institute of Health：NIH)において子宮頸部細胞診に関するワークショップが開催されることとなったが，そこで新しく提案された子宮頸部細胞診の報告様式がベセスダシステムである．その後若干の改良が加えられて2001年には2001ベセスダシステム⁴⁾が提唱され現在に至っている．ベセスダシステムの概要については，前号(54巻1号)の坂本穆彦教授(杏林大学)の論文を参照されたい．

参考文献

1) Papanicolaou GN：Atlas of exfoliative cytology. Harvard University Press, Massachusetts, pp20-21, 1954

2) Lunberg GD：The 1988 Bethesda System for reporting cervical/vaginal cytological diagnoses. National Cancer Institute Workshop. JAMA　262：931-934, 1989

3) Kurman RJ, Solomon D：The Bethesda system for reporting cervical/vaginal cytologic diagnoses. Definitions, criteria, and explanatory notes for terminology and specimen adequacy. Springer-Verlag, New York, 1993

4) Solomon D, Nayar R：The Besethda system for reporting cervical cytology. Definitions, criteria, and explanatory notes, 2nd ed. Springer, New York, 2003

5) 日本婦人科学会(編)：子宮頸癌取扱い規約　改訂第2版．金原出版，p20，1997

6) 飯島宗一，高橋正宜，田村潤，他：細胞診アトラスⅠ. pp158-159，文光堂，1989

7) Soost HJ, Baur S：Wiedergabe zytologischer Befunde und ihre Abklaerung. In：Gynaekologische Zytodiagnostik. Lehrbuch und Atlas. Georg Thieme Verlag, Stuttgart, pp235-241, 1980

8) 日本乳癌学会(編)：乳腺における細胞診および針生検の報告様式ガイドライン．金原出版，2003

9) 日本甲状腺外科学会(編)：甲状腺癌取扱い規約　第6版．金原出版，pp53-55, 2005

10) Well CA, Ellis IO, Zakhour HD, et al：Guidelines for cytology procedures and reporting on fine needle aspirates of the breast. cytology subgroup of the national coordinating committee for breast cancer screening pathology. Cytopathology　5：316-334, 1994