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今月の主題 骨髄増殖性疾患 巻頭言
新しい研究の展開
著者: 池田康夫1
所属機関: 1早稲田大学理工学術院先進理工学部生命医科学科
ページ範囲:P.225 - P.226
文献購入ページに移動 慢性骨髄増殖性疾患の概念は古く,William Damesheckの提唱に始まる.1951年,彼は慢性骨髄性白血病,真性多血症,本態性血小板血症,原発性骨髄線維症,赤白血病の5疾患が,一系統だけでなく複数の系統の血球の増加や肝脾腫,さらにはこれらの疾患の病態に互いの移行があることに注目し,一つの疾患概念として捉えようと考えたのである.その後,赤白血病は急性白血病に分類され,それ以外の4疾患が慢性骨髄増殖性疾患として理解されることとなった.多能性造血幹細胞の異常によるクローナルな腫瘍性疾患としての疾患概念が定着した慢性骨髄増殖性疾患であるが,それぞれの疾患の発症機序についての研究のブレイクスルーは何といっても慢性骨髄性白血病における1960年のフィラデルフィア染色体の発見,1983年のBCR-ABL融合遺伝子の同定である.BCR-ABL遺伝子が病因遺伝子であることが確立されたのを受けて,BCR-ABL阻害薬としてImatinibが開発され,期待通りの治療効果をもたらし,慢性骨髄性白血病患者に大きな福音を与えたことは歴史に残る快挙である.分子レベルで病態が完全に解明されたことから慢性骨髄性白血病は臨床的に全く独立した疾患として扱われるようになったが,残った真性多血症,本態性血小板血症,原発性骨髄線維症の病態解明への大きな示唆を与えることとなった.
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