文献詳細
文献概要
今月の主題 薬剤耐性菌制御の最前線 話題
PK-PDを考慮した抗菌薬療法
著者: 戸塚恭一1
所属機関: 1東京女子医科大学感染対策部感染症科
ページ範囲:P.539 - P.542
文献購入ページに移動1.はじめに
これまでに多くの抗菌薬が開発されて感染症の治療に貢献してきたが,一方で抗菌薬に対する新たな耐性菌も出現していることは事実である.これらの問題に対処するためには新薬の開発推進も依然として重要な課題であるが,現実的には容易なことではない.したがって,現状では感染対策などで耐性菌の拡がりを抑制するとともに,既存の抗菌薬をいかに適正に使用し,長持ちさせていくかが求められている.
抗菌薬の適正使用には多くの事柄が含まれているが,最も重要なことは抗菌薬をいかに上手に使うかである.抗菌薬にはそれぞれの抗菌薬に特有の抗菌作用と薬物動態が存在する.これらの特徴を最大限に活かした薬物療法を行うことが重要になっている.このような考え方に基づいた学問分野が抗菌薬の薬力学-薬物動態(pharmacodynamics-pharmacokinetics;PK-PD)である.耐性菌の抑制には抗菌薬の有効性を高めることが最も重要であり,当初は抗菌薬の効果的な使い方についての検討が主に行われてきたが,最近,抗菌薬の使い方と耐性菌の関係についての検討も行われるようになってきた.
これまでに多くの抗菌薬が開発されて感染症の治療に貢献してきたが,一方で抗菌薬に対する新たな耐性菌も出現していることは事実である.これらの問題に対処するためには新薬の開発推進も依然として重要な課題であるが,現実的には容易なことではない.したがって,現状では感染対策などで耐性菌の拡がりを抑制するとともに,既存の抗菌薬をいかに適正に使用し,長持ちさせていくかが求められている.
抗菌薬の適正使用には多くの事柄が含まれているが,最も重要なことは抗菌薬をいかに上手に使うかである.抗菌薬にはそれぞれの抗菌薬に特有の抗菌作用と薬物動態が存在する.これらの特徴を最大限に活かした薬物療法を行うことが重要になっている.このような考え方に基づいた学問分野が抗菌薬の薬力学-薬物動態(pharmacodynamics-pharmacokinetics;PK-PD)である.耐性菌の抑制には抗菌薬の有効性を高めることが最も重要であり,当初は抗菌薬の効果的な使い方についての検討が主に行われてきたが,最近,抗菌薬の使い方と耐性菌の関係についての検討も行われるようになってきた.
参考文献
1) 戸塚恭一:PK/PD検討の歴史.臨床と微生物 36:287-290, 2009
2) Craig WA:The hidden impact of antibacterial resistance in respiratory tract infection. Re-evaluating current antibiotic therapy. Respir Med 95 (Suppl A):S12-S19, 2001
3) 戸塚恭一:抗菌薬化学療法の新しい工夫-PK/PDの概念を導入した抗菌薬化学療法.日本内科学会雑誌 92:2187-2191, 2003
4) 戸塚恭一:主要抗菌薬のPK/PDブレイクポイント一覧.日常診療に役立つ抗菌薬のPK/PD,改訂版(戸塚恭一監),ユニオンエース,2010
5) 戸塚恭一:ABK 1日1回投与法(once a day投与)の承認に寄せて.日本化学療法学会雑誌 56:i-ii, 2008
6) Moore RD, Lietman PS, Smith CR:Clinical response to aminoglycoside therapy:importance of the ratio of peak concentration to minimal inhibitory concentration. J Infect Dis 155:93-99, 1987
7) Blondeau JM, Zhao X, Hansen G, et al:Mutant prevention concentrations of fluoroquinolones for clinical isolates of Streptococcus pneumoniae. Antimicrob Agents Chemother 45:433-438, 2001
8) Boak LM, Li J, Rayner CR, et al:Pharmacokinetic/pharmacodynamic factors influencing emergence of resistance to linezolid in an in vitro model. Antimicrob Agents Chemother 51:1287-1292, 2007
9) 菊池正彦:日中コラボレーションによる臨床試験展開―耐性化抑制を企図したlevofloxacinの用法・用量変更の事例を踏まえて.臨床と微生物 35:162-168, 2008
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