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文献詳細

雑誌文献

臨床検査54巻8号

2010年08月発行

文献概要

今月の主題 未病を考える 話題

酸化ストレス

著者: 酒居一雄1 竹内征夫1 越智大倫1

所属機関: 1日研ザイル株式会社日本老化制御研究所

ページ範囲:P.927 - P.930

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1 . はじめに

 ヒトをはじめとする多くの生物は,生命維持に必要なエネルギーの獲得に酸素を利用する.酸素分子は4電子による還元反応を経て最終的に水に変換されるが,その過程において数%ではあるが反応性の高い活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)が生成される.近年,この活性酸素種が老化,癌,糖尿病,高血圧といった生活習慣病をはじめとして数多くの疾病に深くかかわっているとともに,活性酸素種自体もシグナル伝達や免疫機構において重要な生理機能を担っていることが明らかにされてきた.

 酸化ストレス(oxidative stress)の定義は,Sies1)によると生体内において酸化力(pro-oxidant)が抗酸化力(anti-oxidant)を上回った状態とされている.酸化ストレスを惹き起こす要因は,生体内において発生する活性酸素種に由来する酸化反応である.ROSは呼吸による酸素消費に伴って発生するほか,炎症反応,放射線や紫外線,喫煙やアスベストなどの化学物質への曝露,激しい運動などにより発生する.一方,生体内には活性酸素種を消去する抗酸化機構が備わっており,活性酸素種による酸化から生体を守っている.

 活性酸素種の消去機構は抗酸化酵素と,抗酸化物質より構成される.抗酸化酵素としては,スーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)やカタラーゼ(CAT)などが知られており,それぞれスーパーオキサイド,過酸化水素を消去するほか,グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)のように過酸化脂質(LOOH)を還元する酵素も存在する.抗酸化物質としてはビタミンCやビタミンE,βカロテンといった抗酸化ビタミンのほか,リコピンやアスタキサンチンといったカロテノイド類,カテキンやクルクミンといったポリフェノール類など数多くの種類が知られており,その多くは食品として摂取される.こうした抗酸化物質は数々の疫学調査によって,健康維持,疾病予防に重要な役割を果たすことが示されている.生体内において上記の抗酸化機構を上回る過剰な活性酸素種が発生すると,酸化ストレスが発生,ROSによる酸化反応が亢進する.

 活性酸素種は生体内においてDNA,脂質,蛋白質,酵素などの生体高分子と反応し,その結果DNA酸化,脂質過酸化,蛋白質の変性,酵素の失活を惹き起こす(図1).酸化ストレスの上昇はこうした分子レベルの生体酸化損傷を増加させ様々な疾病や老化亢進につながると考えられている.そのため,酸化ストレスを正確に評価し,酸化ストレス低減のための対策を施すことは,病態把握,未病診断,病気予防,老化制御に役立つと期待されており,特に近年の健康志向,生活習慣病予防に対する社会的要請の高まりとともに,未病の検出に対する強いニーズがあることから,酸化ストレスマーカーに注目が集まっている.

参考文献

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10) European Standards Committee on Urinary (DNA) Lesion Analysis, Evans MD, Olinski R, Loft S, et al:Toward consensus in the analysis of urinary 8-oxo-7,8-dihydro-2′-deoxyguanosine as a noninvasive biomarker of oxidative stress. FASEB J 24:1249-1260,2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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