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特集 ここまでわかった自己免疫疾患 話題
4.IL-6阻害薬による感染症のマスキングとは?
著者: 梅北邦彦1 日高利彦2 岡山昭彦1
所属機関: 1宮崎大学医学部内科学講座免疫感染病態学分野 2善仁会市民の森病院膠原病リウマチセンター
ページ範囲:P.1367 - P.1370
文献購入ページに移動関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)の原因は明らかではないが,その病態形成には炎症性サイトカインの持続的な過剰産生がかかわっており,病態の増悪とも関連している.近年,腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor;TNF)やIL-6など炎症性サイトカインの作用を阻害する治療薬が開発され,これらは生物学的製剤と称されている.本邦では,炎症性サイトカインを標的とする生物学的製剤として4製剤が承認され,キメラ型抗TNF-α抗体であるインフリキシマブ,可溶型TNF受容体であるエタネルセプト,完全ヒト型抗TNF-α抗体であるアダリムマブ,ヒト化抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブ(tocilizumab;TCZ,商品名:アクテムラ®)がRA治療に用いられている1).これら生物学的製剤は従来の抗リウマチ薬と比較しても関節破壊抑制効果や治療の有効率,継続率が優れており,RA治療のパラダイムシフトを起こした2).
一方,生物学的製剤は炎症反応に重要なサイトカインの作用を阻害するため,感染症が合併した際に炎症反応が抑えられ,臨床症状や検査値異常が典型的な経過をとらないことがある.感染症の重症度に比較して非常に軽度な臨床症状にとどまることを“マスキング”と呼び,特にIL-6阻害薬の投与下では典型的なマスキングが報告されている3).
本稿では,炎症性免疫疾患の代表であるRAにおけるIL-6の病的意義とIL-6阻害薬について概説し,IL-6阻害薬による感染症のマスキングについて症例を提示し解説する.
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