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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査55巻2号

2011年02月発行

雑誌目次

今月の主題 腸内細菌叢

巻頭言

腸内細菌叢とヒトとのかかわり

岩田 敏

pp.112-113

 腸内細菌叢を構成する菌種は100種類以上,その数は腸内容1g当たり数千億個と言われているが,通常はBifidobacteriumやBacteroidesなどの偏性嫌気性菌群の数がEnterobacteriaceaeやEnterococcusなどの通性嫌気性菌/好気性菌群の100~1,000倍程度でバランスを保っている.小児期の腸内細菌叢は年齢によって異なるが,特に新生児期から乳児期にかけては成人の細菌叢とはかなり異なっている.とりわけ新生児期は細菌叢が形成される時期であることから,菌叢は多彩かつ不安定である.出生直後にはEnterobacteriaceae,Streptococcus(Enterococcusを含む),Staphylococcusが優勢菌種として出現するが,その後嫌気性菌群であるBifidobacterium,Bacteroidesが増加して最優勢菌群となる.Enterobacteriaceaeは年齢とともに減少する傾向があり,Lactobacillus,Clostridiumは逆に年齢とともに増加する傾向が認められる.

 腸内細菌叢は,良しにつけ悪しきにつけ,様々な場面でヒトとかかわっているが,どちらかといえばヒトの役に立っていることが多い.

総論

腸内常在菌の生体防御

辨野 義己

pp.114-119

宿主の生体防御をコントロールしているのが腸内常在菌である.なぜなら,腸内常在菌が棲む場である大腸はヒトの臓器の中で最も種類の多い疾患が発症する場である.21世紀になり,培養を介さない手法により,腸内常在菌の全容が明らかにされ,それらが現代医療のトップランナーになっている.特に,ストレスや加齢に伴う腸内常在菌の変動は宿主の生体防御の現れとして理解され,肥満における腸内常在菌の働きも論議されている.

プロバイオティクスと腸内細菌叢

神谷 茂

pp.121-127

腸内細菌叢は宿主と共生し,エネルギー産生,物質代謝の調節,感染症防御,免疫活性化,発癌への関与など様々な作用を有する.プロバイオティクスは生体内,特に腸管内の正常細菌叢に作用し,そのバランスを改善することにより生体に利益をもたらす生きた微生物であり,その腸管感染症への応用が報告されている.抗菌薬関連下痢症,ロタウイルス感染症,旅行者下痢症などには臨床研究を含めその有効性が報告されている.そのほか,コレラ菌,赤痢菌,サルモネラ,病原性大腸菌,カンピロバクターなどについても動物実験レベルでの効果が知られている.エビデンスを基にしたプロバイオティクスの評価が期待される.

腸内細菌叢の検査方法

小林 寅歹

pp.128-134

ヒト成人の大腸内には100種以上の菌種が常在し,菌量も内容物(糞便)1g当たり約1011(1千億)個に及んでいる.これらを腸内細菌叢と呼んでいる.ヒト腸内は出生直後,無菌であると考えられ,生後速やかに細菌が増殖し腸内細菌叢を形成する.新生児から乳児期の大腸内にはBifidobacterium(ビフィズス菌)やLactobacillus(乳酸菌)などが主で,加齢とともに多くの種類の細菌による腸内細菌叢となる.腸内細菌の役割は外部からの病原微生物の侵入・定着を阻害することや,体内に摂りこまれた食物の消化やアミノ酸,ビタミンの合成など有益な働きをしていると言われている.腸内細菌叢は宿主の状態,ストレスや病気などにより容易に変動し,摂取した食物や薬物によっても大きく影響を受ける.

ヒト腸内細菌叢のメタゲノム解析

服部 正平

pp.135-141

ヒト腸管内に生息する1,000菌種を超える菌種で構成される腸内細菌叢は,宿主への栄養やエネルギー源の供給,腸管細胞の分化や成熟,感染症の防御などの有益な効果を有する.一方で,炎症性腸疾患や肥満などの病気の素因にもなる.これまで,腸内細菌叢の実体および機能の解明はその複雑さや個人間での多様性などのため,大きな限界に直面していた.しかし,今日ではメタゲノム解析を応用することによって腸内細菌叢も含めた常在細菌叢全体の網羅的解明が可能になってきた.2008年には国際ヒト常在細菌叢ゲノム計画も開始され,ヒト常在菌研究が今後大展開される状況である.

各論 〈腸内細菌叢と疾患〉

アレルギー疾患

岩田 敏

pp.143-148

アレルギー疾患の原因として,ヘルパーT細胞であるTh1とTh2のバランスがTh2に傾き,Th2型サイトカインが増加して,IgEが産生される機序が考えられている.腸内細菌叢の形成が未熟な新生児や腸内細菌叢が形成されていない無菌動物の免疫系はTh2に傾いており,Th1/Th2の適切なバランスの発達には,腸内細菌叢の形成による経口免疫寛容が重要な役割を果たしている.この機序を利用して,プロバイオティクスのアレルギー疾患に対する効果が検討されている.

炎症性腸疾患

三上 洋平 , 金井 隆典 , 日比 紀文

pp.149-154

分子生物学・免疫学の飛躍的な進歩により,炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病など)の病態は“何らかの遺伝的背景を有する宿主が,腸内細菌や食事などの環境因子に対して過剰・異常な免疫反応が惹起され,慢性腸管炎症が生じるもの”と理解される.近年,環境因子の中でも特に腸内細菌が注目されている.現時点では遺伝子異常の結果として起こる腸内細菌パターンの乱れであるdysbiosisが病態発症に重要な役割を果たしていると考えられる.

過敏性腸症候群

福土 審

pp.155-160

過敏性腸症候群(IBS)とは,腹痛・腹部不快感と便通異常が持続する機能性消化管障害である.IBSの病因と病態生理の両面において腸内細菌叢の役割が重視されつつある.腸内細菌叢が撹乱される感染性腸炎に罹患した後にIBSが発症する感染性腸炎後IBSが注目されている.IBS全体としても,腸内細菌叢の異常が検討され,その代謝産物が症状の重症度を左右する結果が報告されている.慎重に計画された介入研究においても,腸内細菌叢の役割が証明されつつある.

大腸癌

石川 秀樹

pp.161-165

多人数に対する腸内細菌叢の測定が困難であったため,これまで大規模な疫学研究は少なく,腸内細菌と大腸癌の関係についてははっきりした知見は少なかった.しかし,筆者らは,乳酸菌を用いた無作為割付臨床試験を実施,乳酸菌の投与により大腸癌の前癌病変と考えられる異型の強い腺腫の発生を抑制することを見いだした.本稿ではこれらの成績などを紹介し,その乳酸菌による大腸癌予防の機序を考察した.

周術期感染症

草地 信也 , 浦松 雅史

pp.167-171

健常細菌叢は,抗炎症作用や腸管上皮の防御機能を高める作用を有する.周術期には,この細菌叢は手術侵襲,抗菌薬投与,絶食による腸管粘膜の萎縮などの影響でかく乱され,それがSSIや抗菌薬起因腸炎といった周術期疾患の一因となる.周術期感染性疾患を予防するためには,手術に応じた適切な予防的抗菌薬の使用が不可欠である.感染が起こった場合には,早期にこれを診断し,適切な治療を行いつつ,水平感染を防ぐことが重要である.

話題

抗菌薬と腸内細菌叢

大毛 宏喜

pp.173-176

1. はじめに

 抗菌薬が腸内細菌に及ぼす影響が問題となっている.NDM-1(New Delhi metallo-β-lactamase 1)産生菌は,インド国内で抗菌薬が処方箋なしに購入できることが一因とされる1).このような原因で,有効な抗菌薬が存在しない耐性菌が生まれるのは脅威と言える.膨大な数の細菌から構成される大腸腸内細菌叢は,それほどまでに抗菌薬に対してデリケートなのだろうか.また,耐性菌予防の観点から対策はあるのだろうか.

新生児と腸内細菌叢

城 裕之

pp.177-181

1. はじめに

 本稿では,主に新生児の腸内細菌叢(腸内フローラ)と感染症発症との関係について述べる.新生児の腸内フローラにおける異常が新生児の全身感染症発症に大いに関連があるからである.本誌の対象が医師と臨床検査技師であることから,新生児の全身感染症についての概略と腸内フローラがどのように全身感染症に進展するのかについての理解を深めるために,無菌動物を使った感染実験についても述べることとする.

食品と腸内細菌叢

福田 真嗣 , 大野 博司

pp.183-187

1. はじめに

 われわれヒトを含む動物の腸内には,腸内細菌叢(腸内フローラ)と総称される多種多様な細菌群が棲息している.ヒトの腸内フローラは細菌種として1,000種類以上,その総数は100兆個以上と言われ,われわれ宿主のからだを構成する全細胞数の10倍にものぼる菌が存在することが示唆されている1).これらは細菌同士,あるいは細菌と宿主細胞間で相互作用することにより“超有機体”(superorganism)とも称される腸内共生環境を形成し,時に宿主の健康増進に働いたり,あるいは癌・糖尿病・高血圧・心臓病・肥満などの生活習慣病,アレルギー・炎症性腸疾患などの免疫疾患や各種感染症を誘発したり,老化との関連も示唆されている.炎症性腸疾患モデル動物や大腸発癌モデル動物,肥満モデルマウスを無菌化することでその症状が発症しなくなるという事実からも2,3),これらの腸管関連疾患や生活習慣病の発症には単に宿主の遺伝子異常ばかりでなく,食品の代謝を介した腸内フローラによる宿主への影響,すなわち宿主-腸内フローラ間相互作用が病態形成の重要な要因であることは明らかである.

 腸内フローラのうち,われわれの健康に有益な作用を有する細菌はプロバイオティクス(probiotics)とも呼ばれ,予防医学の観点からも社会的に認知されつつある.実際,ヨーグルトなどの発酵乳製品が健康に良いことは以前から経験的に知られており,その摂取は腸内フローラに作用して腸内環境を改善すると考えられる.ビフィズス菌や乳酸菌などのいわゆる善玉菌の餌となり,それらの増殖を促進させる効果がある難消化性多糖を総称してプレバイオティクス(prebiotics)と呼ぶ.これらによる腸内環境改善効果も多数報告されており,またプロバイオティクスとプレバイオティクスを混合し,善玉菌による健康促進効果をより強化したものをシンバイオティクス(symbiotics)と呼ぶ.

 近年はこれらプロバイオティクスやプレバイオティクス,シンバイオティクスを含む機能性食品が社会に導入されてきており,宿主へ有益な効果があることが報告されている4).しかしながら,これら個々の機能性食品が実際に腸管内の微小環境中でどのように機能し,腸内フローラを含む腸内環境をどのように変化させることで宿主に有益な効果を与えているのかについての分子レベルでの実態の詳細は不明であった.これは,腸内フローラの構成が多種多様な細菌の集合体であり,宿主-腸内フローラ間相互作用の全体像を把握・解析する手段がなかったことが理由に挙げられる.

 近年,マイクロアレイ技術の進歩とともに,ある細胞集団に発現する遺伝子群を網羅的に解析し,その発現レベルを細胞・組織間で,あるいは同一組織における経時変化を比較検討することが可能となった.このトレンドは遺伝子発現にとどまらず,発現蛋白質を網羅的に解析するプロテオーム解析,代謝物を網羅的に解析するメタボローム解析など,様々なレベルでの網羅的解析技術が開発されてきている.さらには,最近のいわゆる「次世代」ハイスループットDNAシーケンサーの出現に伴い,複合微生物生態系が構築されている環境中の微生物遺伝子群や微生物発現遺伝子群をノンバイアスに網羅的に解析する技術であるメタゲノム解析1,3,5~9)や,メタトランスクリプトーム解析10~12)なども開発されつつある.

 本稿では,近年のトピックスである腸内フローラと肥満・食品成分について概説し,その後,筆者らの研究室で進めている,ゲノム・トランスクリプトーム・メタボロームなどの網羅的解析手法により得られた多量の情報について,多変量解析手法を用いて統合的に解析する“マルチオーミクス”解析手法を用いた食品成分摂食時の腸内環境の変動抽出法について紹介する.

漢方薬の作用における腸内細菌叢

渡辺 賢治

pp.188-192

1. はじめに

 漢方は中国の医学とよく誤解されるが,江戸時代に本邦で,「蘭方」に対して古来の自国の医学を指す言葉として命名された医学であり,「Kampo medicine」と言えば,PubMedのシソーラスにおいても日本の伝統医学と説明されている.医療用漢方製剤は,1967年に4種類認められたのを皮切りに,1976年には41種類となり,徐々に増加し,現在では148種類あり,それとは別に煎じ薬用には200種類の生薬が保険でカバーされている.

 2001年に文部科学省の医学教育モデルカリキュラムに漢方教育が入ったことから,80ある全国の医学部・医科大学において漢方教育がなされるようになり,漢方を日常診療で用いる医師数は83.5%にものぼり,本邦の医療に欠かせない存在となっている.

 しかしながら漢方の臨床研究は,①個別化医療である,②対象が人間全体であり,マルチターゲットであることが多い(例えば漢方の水毒という病態は頭痛,めまい,立ちくらみ,浮腫などを症状として呈し,五苓散などが処方される.水毒が改善されるとこれらの症状が同時に改善される),③患者主観を重んじる医療である,といった理由で,無作為化対照試験(randomized controlled trial;RCT)をはじめとした西洋医学的研究手法が適応しにくいため,こうした複雑系を一度に解析する新しい手法が求められている.

 一方,基礎研究に目を移すと,漢方薬は複数の生薬から構成され,さらに1つ1つの生薬の成分が複雑であることから,単一成分の研究のようには単純でない.さらに,生薬の中の成分が経口内服により,腸内で腸内細菌によって代謝,吸収された後,門脈を通って肝臓でさらに代謝されて,初めて薬効成分になるものもあり,複雑である.

 本稿では,漢方薬の薬効と腸内細菌叢との密接な関係について述べたいと思う.

今月の表紙 代表的疾患のマクロ・ミクロ像 非腫瘍・2

心弁膜症

小松 明男 , 坂本 穆彦

pp.110-111

 心弁膜症は,成因からは先天性と後天性,構造からは狭窄・閉鎖と閉鎖不全,とに大別できる.先天性心疾患には代謝障害も含まれるが,心奇形が圧倒的に多い.心奇形は全出生の1%にみられる.報告により若干の違いはあるが,Hurstの最新版によると,心室中隔欠損症が最も頻度が高く心奇形の28.3%,続いて肺動脈狭窄が9.5%で,大動脈弁閉鎖は6番目4.5%である1).組織像は補足的な意義を有する.心筋細胞の空砲変性,圧負荷に伴う心筋細胞の肥大,間質の浮腫などは心奇形でしばしばみられるが,各心奇形に特異的な心筋の病理組織像はみられない.年余の経過をたどる場合には,肺の小型筋性動脈の内膜の形態学的変化が続発性病変として病期を示唆する指標となる2)

 後天性の弁膜症は,リウマチ熱に関連した疾患と非リウマチ性とに大別できる.リウマチ熱に関連した疾患では,左心系すなわち僧帽弁あるいは大動脈弁の狭窄・閉鎖と閉鎖不全が主である.リウマチ熱に関連した僧帽弁狭窄は以前に比し,経済状態の向上および治療の進歩により現在では減少した.特徴的肉眼所見である弁の融合と石灰化すなわち魚の口(fish mouth)に例えられる変形した僧帽弁が特徴であり,診断根拠となる.組織像としては上記の肉眼所見に加え,アショッフ結節が認められれば確定診断となる.病理組織検体としてみることはあまりない.先進国においては,非リウマチ性心疾患の頻度がリウマチ性よりも高くなった.大動脈弁狭窄・閉鎖不全,膠原病による心内膜炎,粘液腫様変化による僧帽弁逸脱症,細菌性心内膜炎,非細菌性血栓性心内膜炎,僧帽弁輪石灰化などが代表的疾患である.本稿では現在増加の著しい大動脈弁狭窄を採り上げる.

映画に学ぶ疾患・12

「シャイン」にみる自閉症(アスペルガー症候群)

安東 由喜雄

pp.166

 単一の遺伝子異常で起こる遺伝性疾患の病態は,遺伝子解析技術の進歩に伴い,かなり解明されてきているが,いくつかの遺伝子変異や遺伝子の修飾によって起こると考えられる多因子遺伝による疾患はまだまだその病因がわからないものばかりである.喘息,高血圧,うつ病,自閉症,アスペルガー症候群,統合失調症などの精神疾患がこれにあたる.こうした疾患の場合,病態の発現に環境因子が加わるため,その病因・病態解析は困難を極めるかに見える.しかし近年,マイクロアレイやホール・ゲノムシークエンス,プロテオミクスの手法を用いた解析が進み,原因不明の疾患の原因遺伝子,原因蛋白質を同定しようとする試みが盛んに行われている.特にうつ病,統合失調症などの疾患は患者数が多いため,もし疾患の発症を左右する原因遺伝子が発見されれば,莫大な富,研究費を生む可能性があるため,基礎体力のある大手の製薬会社,検査会社では,特にこうした疾患の研究に力を注ぐようになってきている.

 ここ数年,アスペルガー症候群という疾患がマスコミに頻繁に登場するようになった.アスペルガー症候群を含めた自閉症の発症は,親の教育や心理社会的要因も重要であるが,遺伝学的な要因が深く関与していることは否定できない.岡田尊司氏の『アスペルガー症候群』によると,アインシュタイン,エジソン,ダーウィン,ディズニー,ヒッチコック,ゴッホ,ユトリロ,ショパン,ベートーベン,それにビル・ゲイツに至るまで,彼らの行動を見る限り,いずれもアスペルガー症候群に分類されるというから,必ずしも「病気」という分類は正しくないのかもしれない.

シリーズ-検査値異常と薬剤・12

―投与薬剤の検査値への影響―中枢神経系作用薬・Ⅵ

米田 孝司 , 片山 善章 , 澁谷 雪子

pp.193-202

抗不安薬

 ベンゾジアゼピン系については中枢神経系作用薬・Ⅲ(本誌54巻11号)を参照.特に,ジアゼパムやロラゼパムは前回にも報告したため簡略した.

研究

多項目自動血球分析装置XE-5000を用いた髄液測定の検討

手塚 俊介 , 阪野 佐知子 , 柳澤 賢司 , 緑川 清江 , 永井 信浩 , 原田 正一 , 佐藤 紀之 , 吉田 和浩

pp.203-206

 多項目自動分析装置XE-5000(XE-5000)は,血液以外に髄液,胸水,腹水,関節液などの測定を目的とした体液モードが搭載されている.今回,その性能と髄液を中心とした測定のルーチン導入が可能であるか検討した.再現性・希釈直線性・キャリーオーバー・目視法との相関では,満足できる成績が得られたが,経時変化で細胞数が減少する結果となった.スキャッタグラムのパターンを確認しながら目視法と併用することで,XE-5000での報告が可能と考える.

私のくふう

滑りにくい湿潤箱

西野 信一

pp.207

はじめに

 現在,免疫染色で使用されている湿潤箱は,ガラス棒の上にスライドグラスを乗せ作業を行っている.しかし,ガラス棒は滑りやすく,湿潤箱を持ち運ぶときにスライドグラスが滑りスライドグラス同士が重なったり,切片上の反応液がこぼれることがある.

 今回のくふうは,ガラス棒の代わりにゴムを用いることで滑りが軽減できるので紹介する.

学会だより 第42回日本臨床検査自動化学会

第42回日本臨床検査自動化学会

柴田 綾子

pp.208

 日本臨床検査自動化学会第42回大会は,「自動化が切り拓く明日の医療」をメインテーマとして2010年10月7日(木)~9日(土)の3日間開催された.今回の大会は演題数が過去最高の370演題,参加者は2,000名を超え,盛会であった.展示会場は機器を設置せずにプロモーションビデオを流し,機器の見学は自社にピストン輸送するメーカーもあり,新しい試みがみられた.

 特別講演は制御性T細胞の発見者である坂口志文先生(京都大学再生医科学研究所長)が,免疫応答の制御について制御性T細胞の基礎的な解説から,様々な疾患形成への関与,そして今後の治療への応用を含めて大変わかりやすく講演された.

あとがき フリーアクセス

池田 康夫

pp.210

 人間の腸の長さは約7mである.そしてその粘膜面の表面積は400m2もあると言われており,これは体表を覆う皮膚の約200倍と言うから,そこで何が行われているか? その重要性が伺われる.

 本号では“腸内細菌叢”を取り上げている.腸内には実に100種類以上の細菌が100兆個以上も住みついて“正常細菌叢”を形成しているというから,それらがヒトの身体にどのような影響を及ぼしているのか興味の尽きないところである.“正常細菌叢”と一言で言ってもその中には人体にとって有益なものもあれば,逆に有害なものもあるだろうことは想像に難くない.聞く所によると動物を無菌状態で飼育すると普通の動物よりも長寿になると言われており,“腸内細菌叢”もないにこしたことはないようである.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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64巻12号(2020年12月発行)

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今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

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今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

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今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

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63巻10号(2019年10月発行)

増刊号 維持・継続まで見据えた—ISO15189取得サポートブック

63巻9号(2019年9月発行)

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今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

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63巻4号(2019年4月発行)

増刊号 検査項目と異常値からみた—緊急・重要疾患レッドページ

63巻3号(2019年3月発行)

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63巻2号(2019年2月発行)

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今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

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今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
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今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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