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文献詳細

雑誌文献

臨床検査55巻4号

2011年04月発行

文献概要

今月の主題 静脈血栓塞栓症と凝固制御因子プロテインS 各論

静脈血栓塞栓症の予防

著者: 小林隆夫1

所属機関: 1浜松医療センター

ページ範囲:P.367 - P.372

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静脈血栓塞栓症(VTE)は本邦においては発症頻度が低いと考えられていたが,生活習慣の欧米化や高齢化社会の到来などの理由により,近年その発症数は急激に増加している.欧米から20年以上遅れて,2004年2月に本邦でもようやく複数の団体が参画してVTEの予防ガイドラインが策定され,さらに同年4月から「肺血栓塞栓症予防管理料」が新設されるに至った.実際には,入院時や術前にVTEのリスク評価を行い,適切な予防法を選択する.予防の基本は理学的予防法であるが,日本麻酔科学会の調査結果から理学的予防法の限界,抗凝固療法の積極的導入の有用性が示唆されているため,今後は適切な抗凝固療法の導入によりさらなるVTEの減少が期待される.ただし,抗凝固薬には出血の副作用も報告されているので,リスクとベネフィットを十分に勘案したうえで使用を決定し,投与中の出血の評価および止血対策にも心がけていただきたい.

参考文献

1) 小林隆夫:静脈血栓塞栓症ガイドブック改訂2版(小林隆夫編).中外医学社,pp1-252,2010
2) Geerts WH, Heit JA, Clagett GP, et al:Prevention of venous thromboembolism. Chest 119(1 Suppl):132S-175S,2001
3) 肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン作成委員会:肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン.メディカル フロント インターナショナル リミテッド,pp1-96,2004
4) 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断・治療・予防に関するガイドライン(2009年改訂版).循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008年度合同研究班報告)(http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009 andoh h.pdf)
5) 木倉睦人,小林隆夫,笠松紀雄,他:県西部浜松医療センターにおける静脈血栓塞栓症予防および患者発生時対応への組織的な取組み.県西部浜松医療センター学術誌 3:10-19,2009
6) Venous thromboembolism:reducing the risk. NICE clinical guideline 92:1-50,2010(http://www.nice.org.uk/guidance/CG92)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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