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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査55巻7号

2011年07月発行

雑誌目次

今月の主題 臨床生理機能検査におけるリスクマネジメント

巻頭言

生理機能検査部門におけるリスクマネジメントの特徴

石山 陽事

pp.619-620

 戦中・戦後の空白期間を経た1953年に真空管式心電計が米国から日本に寄贈され,初めて心電計が臨床に使われるようになった.これを契機に,その後,国産心電計や脳波計が次々に開発され,患者検査としての生理機能検査が普及しはじめた.しかし当時から大学病院の中央検査部は欧米の流れを受け検体検査が主であり,そのため検査業務に関するリスクマネジメント(危機管理:risk managementの日本語表記は“リスクマネジメント”ないしは“リスクマネージメント”となるが,本号では医療機器の規格であるJIS T 14971にならい“リスクマネジメント”で表記を統一する)も本誌や関連検査学会の中では検体検査の精度管理や感染症に関する記事が多かった.これに対して生理機能検査は患者を直接対象としていることから,むしろ多くの臨床系医学会(循環・呼吸・脳神経などの多くの関連学会や超音波医学会)や医療機器システム関連学会,例えば日本生体医工学会(旧日本エム・イー学会)などの臨床医学技術および医工学分野の中でリスク管理を議論することが多かった.その意味で今回本誌が生理機能検査に特化したリスクマネジメントを取り上げたことは,臨床の場で直接患者と向き合う医師や生理検査技師ばかりではなく,看護師などコメデイカルにとっても大変役立つ企画と思われる.

 通常医療におけるリスクマネジメントの目的は基本的に次の3つに分けられる.すなわち社会的に最も求められるものとして第1に“患者に対して安全な医療を提供すること”,第2に“病院という組織体の資産を守ること”,第3に“病院を法的に守ること”などである.病院における危機管理体制の方策については厚生労働省が2000年8月に発表した「リスクマネージメントマニュアル作成指針」が参考になるが,患者と直接接触の多い具体的な生理機能検査に関する記述は少ない.ある統計によると医事紛争の70%は医療過誤がないのに発生しており,その原因は患者と医療従事者の間に存在する接遇の問題や種々のコミュニケーション不足にあるとも言われている.したがって,その意味では患者を直接対象とする生理機能検査に関するリスクマネジメントについて知ることは病院全体の危機管理を見直すうえで役立つものである.

総論

医療におけるリスクマネジメント

本間 覚

pp.621-625

医学の急速な進歩と強力化は,医療における安全管理・危機管理・品質管理の導入を不可欠にした.各医療施設は危機(リスク)に関する管理体制および教育体制を構築して実施することが求められている.その中では医療事故(インシデント・オカレンス)を品質の“はずれ値”と捉え,経験深い熟練者(管理者)によって医療をよりよい業務手順のもとに整備し実施させる品質管理の向上が喫緊の課題である.

患者検査に必要な医療安全の知識

唐澤 秀治

pp.627-633

臨床検査においては,リスク,デインジャー,クライシス,ハザードの4つの言葉の相違を理解し,リスクマネジメントに役立てることが大切である.特にリスクに相当する事項は何としても乗り越えなくてはならず,デインジャーに相当するものは臨床の現場から排除しなければならない.現在の日本の社会状況は,苦情と暴力が多いという特徴があり,医療現場でも何らかのトラブルに遭遇する可能性がある.そのような場合には現場をサポートするトップマネジメントの役割が非常に重要である.

臨床生理機能検査の種類とリスク環境

川名 ふさ江

pp.635-642

生理機能検査におけるリスク環境として大きくは,検査前・検査中・検査後の3つに分けられる.検査前のリスクとして,患者誤認,接遇,待ち時間の問題,検査中のリスクとして患者の事故・トラブル,データの判読レベルとデータの質,検査者の性別によるトラブル,感染対策,検査後のリスクとしてデータ管理上の問題などが挙げられる.当院で行っている検査項目を紹介し,それぞれ検査項目ごとに,当院での事例を中心に起こりうるリスクとその対処法を述べた.

インシデント・アクシデントの分析と対策

川村 治子

pp.643-648

インシデントやアクシデント(以下,事例)を医療事故防止に活かす方法には2つある.個々事例と多数事例の活用である.前者としては,警鐘的な重要事例をRCAなどで詳細に分析し,より根本的なシステム要因を明らかにするものである.一方,後者としては,まず一つは,業務別に業務プロセスとエラー内容からなるマトリックスで事例を整理する.この手法は,業務のどこで,どのようなエラーがなぜ起きるのかの可視化を可能にし,事故防止教育や業務ルールの見直しに活用できる.もう一つは,新卒者の事例や夜間・休日の事例など,特定の対象や状況の事例に絞って分析するものである.おのおのの課題が明らかになり,対策立案に有用な示唆が得られる.

各論

循環機能検査とリスクマネジメント

司茂 幸英

pp.649-656

循環機能検査の主要なリスクは患者取り違え,技術的エラー,所見の見落とし,患者急変などに対するものである.患者情報・検査依頼情報のミスはシステム化により手入力操作を減らすことで対応する.技術的エラーや所見の見落としの対策は,教育研修の実施と,要点チェック表の作成および運用である.循環機能検査を受ける患者は急性冠症候群や不整脈などの生命にかかわる心イベントの発生や,治療で使用する医療用具にかかわるトラブルが多い.これらの対応策として患者の身体的状況・情緒的状態・意識状態などを的確に観察・判断できるスタッフの配置と,患者急変・防災対応の定期訓練の実施,加えて絶えず患者に注意を払える環境を構築することである.そのため検査への積極的な看護師の介入が推奨される.また患者急変時の迅速な対応に関して,検査室スタッフエリアと患者待合エリアが相互に見通せる検査室デザインが有効であると考えられる.

呼吸機能検査とリスクマネジメント

東條 尚子

pp.658-661

呼吸機能検査におけるインシデントおよびアクシデントには,患者取り違い,患者情報・オーダ情報の誤入力,検査実施項目の見落とし,結果の計算ミス,結果の送信ミスに加え,スパイロメータの精度管理不良,検査技師の検査技術レベルの問題など,様々なものがある.安全性を向上させるためには,施設の状況に応じて,検査情報システムを利用したコンピュータ化によるエラーの回避,スパイロメータの精度保証と検査技師の技量を担保する方策などを検討する必要がある.

神経生理検査とリスクマネジメント

飛松 省三

pp.662-666

神経生理検査(脳波,誘発電位,筋電図・神経伝導など)は針筋電図検査を除いて非侵襲的であるが,様々な技術的ポイントや落とし穴が存在する.これらの点に習熟していないと誤診を招きかねない.ここでは,“ヒヤリ・ハット”と表現されるインシデントに触れつつ,リスクを回避するための機器設定の知識,記録法・手技の統一,アーチファクトへの対処,トラブル対処法に主眼を置いて解説する.

超音波検査におけるリスクマネジメント

紺野 啓 , 谷口 信行

pp.667-672

当検査室における実例を紹介しながら,超音波検査や検査技師の特性に着目したリスクマネジメントについて解説した.リスクを軽減させるためには,こうした特性を考慮しつつ適切な検査室環境を構築し,インシデント・アクシデントレポートシステムや適切なトレーニングを通じて,リスクマネジメントについての認識と経験を醸成することにより,リスク回避を図ることが重要である.同時に,実際に生じたリスクに対しては,リスクマネジャーの適切な介入で損失発生を予防あるいは軽減することが必要かつ有効である.

話題

インターネット検索にみる生理機能検査のリスクマネジメント

小野 哲章

pp.673-678

1.はじめに

 未曾有の大震災,東日本大震災を目の当たりにして,地震以上に津波の怖さをあらためて思い知らされた.さらに,安全システムのお手本と言われた原子力発電所の多重安全システムがいともたやすく崩壊する様を見せつけられ,真の安全確保の難しさと,一度壊れた安全システムの復旧の至難さをだれもが実感したことであろう.

 医療安全は災害と違って個の問題ではあるが,医療といういわば“患者の安全を目的としたシステム”では,その対極にある“リスク”は許されない.しかし,1つのシステムである以上,“リスク”はある確率で起こりうるわけで,それをできる限り小さくするのが“リスクマネジメント”である.

ヒューマンエラーは原因か結果か―その対策は

河野 龍太郎

pp.679-681

1.ヒューマンエラーの考え方

 これまで医療従事者の間では,ヒューマンエラーは不注意で起こるというものの見方・考え方が支配的であり,このためエラー対策は“注意すること”という“竹やり精神論”を基本としたものであった.しかし,この竹やり精神論型安全対策には限界があることを理解しなければならない.ヒューマンエラー発生メカニズムの観点から,エラーは主に不注意で発生するという考え方は間違いであり,過去の事故事例を詳細に調べると,むしろ一生懸命に仕事をしていたためにエラーが発生したという事例が多くあることに気がつく.現代の複雑な作業環境においては,ヒューマンエラーがなぜ起こるのかを科学的に理解し,理に適った対策をとらなければならない.

 ヒューマンエラーの定義には様々なものがあるが,一般的には“システムの許容範囲を逸脱する判断や行為”としているものが多い.したがって,エラーを理解するには,まず,人間の行動はどのように形成されるのかを理解しなければならない.この行動には,必要な行動をしないエラー(omission error)とやるべき行為と違う行為のエラー(commission error)がある.ただし,人間のすべての行動を簡単に説明することは非常に難しいが,意思決定を伴う行動については,次のように説明することができる.

臨床生理機能検査業務に伴う感染事例と感染対策

金光 敬二

pp.683-686

1.はじめに

 検査部では検体を扱う業務が多く,検体をどのように取り扱うかということが感染対策の主眼となる.ところが生理検査室においてはヒトが被検者となるので,あらゆる感染経路によって感染が伝播する可能性がある.また,生理検査室では,様々な検査機器を使い検査が行われるので,検査機器をどのように管理するかが問題となる.ここでは,生理検査室に限った感染事例と感染対策を紹介する.

国際規格にみる医療機器のリスクマネジメント―事故事例から学ぶISO14971

萩原 敏彦

pp.687-690

1.すべての安全規格の上に位置するISO14971

 安全な医療を実施するために,様々な安全規格が作られてきた.例えば,世界中で広く用いられている医用電気機器の安全通則としてIEC60601-1がある.その通則を補うために,副通則としてIEC60601-1-2(EMC),IEC60601-1-6(ユーザビリティ),IEC60601-1-8(アラームシステム)などがあり,さらに個別の機器の安全を補うためのIEC60601-2-2(電気手術器),IEC60601-2-4(除細動器),IEC60601-2-18(内視鏡機器),IEC60601-2-25(心電計),IEC60601-2-37(超音波診断装置)などの個別規格の数は50を超えている.また,電気を使わない医療機器の規格として,沢山のISO規格も作られてきた.

 しかし,それら既存の規格は,対象範囲の医療機器に共通する事項だけについて要求事項を規定したものであり,それだけでは十分であったと言えなかった.そこで,漏れのない高い安全性を確保するために,開発しようとする医療機器自体にスポットを当てて,危害の源を特定して,リスクの推定と評価を行い,安全対策の方法とその検証方法などについて要求事項を規定した規格としてISO14971(医療機器―リスクマネジメントの医療機器への適用)が2000年に発行され,今では世界中で使われるようになった(図1).

緊急連載/東日本大震災と検査・1

被災地での感染症対策

岩田 敏

pp.692-695

はじめに

 この稿を綴るに当たり,最初にこのたびの東日本大震災でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに,ご遺族の皆様に対して深くお悔み申し上げます.また,様々な地域で地震や津波の被害を受けた被災者の皆様およびご家族の方々へ衷心よりお見舞い申し上げます.

 さて,東北地方と関東地方を襲った未曾有の災害,東日本大震災から2か月近くが経過し,東北新幹線をはじめとする被災地への交通,被災地および周辺地域のライフラインも徐々に回復し,瓦礫の撤去,仮設住宅の設営,産業再興への話し合いなど,復興へむけての作業が開始されている.一方,福島第一原子力発電所に関しては依然として予断を許さない状況であり,解決の糸口が見えない状態が続いている.そうしたなか,被災者の皆さんが避難している避難所などでの感染症対策が注目されている.16年前の阪神・淡路大震災の際には,1月ということもあり,避難所一帯ではインフルエンザが流行して,医療支援などのボランティアの中にもインフルエンザに罹患した方が多数認められたことを記憶している方は少なくないと思われる.今回,被災地ではどのような状況だったのであろうか.

今月の表紙 代表的疾患のマクロ・ミクロ像 非腫瘍・7

大腸憩室症のマクロ・ミクロ像

小松 明男 , 坂本 穆彦

pp.616-617

 憩室症は消化管では食道,胃,十二指腸など広範囲にみられる.しかし頻度のうえからは圧倒的に大腸に多いため,本稿では大腸の憩室症に限定して述べる.

 憩室症の定義は,粘膜および粘膜下層が固有筋層を越えて壁外に突出する状態である.原則として漿膜におおわれているため,腹腔内ヘルニア(おおわれていなければ脱)と解される.壁の全層が壁外に突出する真性憩室と,粘膜および粘膜下層のみが固有筋層を越えて壁外に突出する仮性憩室に分類されるが,大腸でみられるものは,ほぼすべて仮性憩室と言っても過言ではないと思われる.

INFORMATION

第3回ISMSJ(Integrated Sleep Medicine Society Japan,日本臨床睡眠医学会)学術集会 フリーアクセス

pp.657

第3回 ISMSJ(Integrated Sleep Medicine Society Japan,

日本臨床睡眠医学会)学術集会

日 時:2011年8月26日(金)~8月28日(日)

第33回第2種ME技術実力検定試験 フリーアクセス

pp.691

社団法人 日本生体医工学会

第2種ME技術実力検定試験実行委員会

 この試験は「ME機器・システムの安全管理を中心とした医用生体工学に関する知識をもち,適切な指導のもとで,それを実際に医療に応用しうる資質」を検定するものです.

平成23年度医療機器安全基礎講習会(第33回ME技術講習会) フリーアクセス

pp.696

社団法人 日本生体医工学会

財団法人 医療機器センター

 日本生体医工学会と医療機器センターは,関係各位のご協力のもと『医療機器安全使用のための卒後教育』を目的に,これまで30年以上にわたりME技術講習会を開催して参りました.平成19年4月に『改正医療法』が施行され,関係通知で『医療機器の安全使用のための研修の実施』が定められたことから,今年度も『医療機器安全基礎講習会(第33回ME技術講習会)』として下記の通り開催いたします.本講習会は,医療現場における安全性をより高めるための知識の習得や普及を図ることを目的としており,臨床医療機器の安全使用について学ぶ良い機会となりますので,多数の方のご参加をお待ちしております.

映画に学ぶ疾患・17

「ヤコブへの手紙」―人は何のために生きるのか

安東 由喜雄

pp.682

 誰かに必要とされ,誰かのために生きたい.意識しなくてもそういう思いの中で人は生きている.フィンランド映画,「ヤコブへの手紙」は,何よりもそのことを強く訴えかけている.主人公のレイラは,大好きだった姉が夫から度重なる家庭内暴力(DV)を受けているのを見るに見かねてその男を殺してしまい,12年の刑を終え,やっと釈放された.姉を守りたい一心で行った行為だったが,事後,肝心の姉はいくらDVを受けても結局は夫を深く愛し続けていたことを知り,姉の心のよりどころを無にしてしまった罪悪感にずっと苦しんできた.

 レイラは北欧の中年女性にありがちな肥満体型をしている.殺人犯のため終身刑のはずだが,ヘルシンキからかなり離れた田園地帯に住むヤコブという老牧師からの度重なる恩赦の嘆願書が功を奏し,彼がレイラを引き取る形で今回の釈放が叶ったようだ.姉に対する申し訳なさ,人を殺した自責の念,孤独感,12年の抑圧された刑務所での生活からくる心の荒廃などの錯綜した感情がそうさせるのか,彼女は何をするにも投げやり,反抗的で,見ているものがイライラするほど不快な行動をとる.牧師に対しての感謝の念もなければ,物事に対する感動も共感もない.一方,牧師は盲目であり字が読めないため,レイラに毎日数通送られてくる信者からの手紙の朗読とそれに対して返事を書く仕事を科す.牧師として,悩める人の心の叫びに答え,神へと導きそれを実感させるという作業が年老いたヤコブ牧師に残された唯一の生き甲斐であり,心の安らぎであった.

シリーズ-検査値異常と薬剤・16

―投与薬剤の臨床検査値への影響―代謝系作用薬

片山 善章 , 澁谷 雪子 , 米田 孝司

pp.697-705

高脂血症治療薬

1.クリノフィブラート(フィブラート系薬剤)

 白色~帯黄白色の粉末で,においおよび味はない.メタノール,エタノール(99.5),アセトンまたはジエチルエーテルに溶けやすく,水にほとんど溶けない.メタノール溶液(1→20)は旋光性を示さない.構造式は図1に示した.また,臨床検査値への影響および副作用は表1に示した.

 血清中はほとんど未変化体であるが,尿中に未変化体および代謝物(グルクロン酸抱合体および水酸化体)として出現する.肝臓での脂質の合成を抑制し,主に中性脂肪を減らす.スタチン系との併用は危険である.副作用で筋肉が破壊される恐れがある.

研究

本態性高血圧におけるNT-proBNPおよび高感度トロポニンTの評価

戸田 圭三 , 佐藤 幸人 , 原 智子 , 杉山 祐香 , 藤原 久義 , 鷹津 良樹 , 岩崎 敏明

pp.706-711

 現在,高血圧を管理するために収縮期血圧を測定しているが,降圧が得られても心肥大などの臓器障害が残存する例があり,このような症例では予後不良であることが報告されている.したがって,高血圧の管理において客観的で臓器特異的な代理指標が求められている.筆者らは,心不全,虚血性心疾患を除いた高血圧患者を対象として,循環器系バイオマーカーであるNT-proBNPと高感度トロポニンTの検討を行った.その結果,両者の分布は健常人より高値に推移した.規定因子の検討では,性別,年齢,血圧,心肥大,腎機能,血中ヘモグロビンがNT-proBNPや高感度トロポニンTと相関関係を認め,これらの因子は高血圧における独立した予後予測因子であることが報告されていることから,NT-proBNPと高感度トロポニンTが,高血圧において臓器特異的な代理指標である可能性が示唆された.

資料

尿沈渣分析装置アイキュー200スプリントの性能評価

大野 明美 , 長谷川 喜久子 , 小口 修司 , 柴田 綾子 , 菊池 春人 , 村田 満

pp.712-718

 アイキュー200スプリント(IQ200)はCCDカメラを用いた画像処理による尿沈渣分析装置である.基礎的検討結果は良好であり,鏡検法との比較では±1ランク一致率で95%以上となった.“鏡検による確認”と判断する再検条件を作成しIQ200で尿沈渣を実施した場合,約半数の症例が鏡検による再検となった.画像による成分判定や,データチェックロジックの構築により尿沈渣の報告の効率化に貢献できるものと思われる.

あとがき フリーアクセス

片山 善章

pp.720

 本誌で「検査室におけるインシデント・アクシデント」を取り上げたのは,2006年の50巻4号だった.各論としては,生理機能検査,輸血検査,微生物検査,病理検査,血液・化学・免疫検査,それぞれにおけるインシデント・アクシデントについて執筆いただいた.巻頭言は筆者が担当し,そのなかで触れた「日本医療機能評価機構」が公表した報告書の内容について再掲する.2005年の1年間で病院において,患者に重い障害が残った重大な医療事故は1,114件にのぼり,原因別では,「確認を怠った」が事故全体の14.4%でトップであった.そのほか「観察を怠った」が12.2%,「判断を誤った」が11.7%であり,同機構は「基本的な動作を徹底していれば防げたミスも多い」と分析している.本号で司茂幸英先生が述べられている循環機能検査インシデントの内容は誤記入31%,依頼確認ミス26%であり,やはり基本的なミスでインシデントが発生している.

 2006年の巻頭言にてもう1点,航空業界のインシデントレポートについて以下のことを述べた.「ちなみに航空業界ではインシデントレポートの質と量を決めるには5つの要因があるといわれている.①処罰に対する保護,②機密の保持と匿名化,③レポートの収集,分析を行う部門と処罰や人事管理を行う部門との分離,④報告者や施設への迅速で,役立つ,理解できるフィードバック,⑤レポートが記入しやすく容易に報告できること.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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バックナンバー

64巻12号(2020年12月発行)

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今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

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増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

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今月の特集2 どうする?精度管理

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63巻4号(2019年4月発行)

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63巻3号(2019年3月発行)

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増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

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今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

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59巻8号(2015年8月発行)

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59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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