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雑誌目次

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臨床検査56巻11号

2012年10月発行

雑誌目次

特集 教科書には載っていない臨床検査Q&A

巻頭言

巻頭言

山田 俊幸

pp.1145

 臨床検査医学・臨床検査技術学では大変多くのことを学びます.臨床検査技師国家試験の問題を一覧すると,放射線画像診断や治療を除けば医師国家試験に匹敵する領域がカバーされていて,専門である検査技術については相当深く,何と多くのことを勉強させるのだろう,という印象をもちます.

 要求される知識に対応すべく,教科書がいくつか揃っています.ただし,教科書はどうしても原則論や古典的方法論を無視するわけにいかず,実際の日常現場とはいくらかズレが生じます.例えば,生化学検査においては最新の自動分析機が普及し,その機種の特性を習得しながら日常業務をこなしていますが,教科書ではそこまでは踏み込み難い.新しいことをカバーするために本誌のような定期刊行物があり,一定の役割を果たしていますが,本誌には学術的な要求を満たす役割があり,上述のようなことに多くの誌面は割けません.そこで,そのような“教科書では得難い知識”を効率的に取り上げるために,Q&A形式にした特集本(本増刊号)を企画することにしました.

血液

Question 1 MDSにおける形態異常の判定について教えてください

波多 智子 , 宮崎 泰司

pp.1146-1147

ポイント

・乾燥,染色の良好な塗抹標本を作製しなければならない.

・診断意義の高い(カテゴリーA)異形成に注目する.

・他疾患でも異形成が出現することを認識する.

Question 2 骨髄増殖性疾患の分類とその診断基準について教えてください

久冨木 庸子 , 下田 和哉

pp.1148-1149

ポイント

・骨髄増殖性腫瘍は,融合遺伝子の形成や遺伝子変異によりチロシンキナーゼが恒常的に活性化され,複数系統の血球がクローナルに増殖する腫瘍である.

・真性多血症の95%以上,本態性血小板血症,原発性骨髄線維症の約半数にJAK2変異がみられる.

・“血球増加をきたす反応性,2次性の疾患の除外”が,“JAK2変異や,同等な遺伝子変異を検出すること”を用いて積極的に診断できるようになった.

Question 3 慢性骨髄性白血病におけるbcr-ablの定量方法と測定の意義について教えてください

片桐 誠一朗 , 田内 哲三 , 大屋敷 一馬

pp.1150-1151

ポイント

・CMLにおいてbcr-abl mRNAの測定は治療効果の指標として重要である.

・測定方法には定量(RQ-)PCRと定性(nested)PCR,TMA-HPA法(AmpCML)がある.

・RQ-PCRは国際基準(IS)で判断するのが望ましい.

・MMRはISで0.1%と定義され,AmpCMLでは100コピー/μgRNA未満と考えられる.

Question 4 急性白血病における遺伝子異常とその臨床的意義について教えてください

南谷 泰仁 , 黒川 峰夫

pp.1152-1153

ポイント

・遺伝子異常の種類が急性白血病の分類に取り入れられている.

・特定の遺伝子異常の有無が予後因子となる.

・異常な遺伝子を用いて微小残存病変の検出を行うことで治療効果の判定や再発の予測ができる.

Question 5 リンパ系腫瘍のWHO分類2008(第4版)の改訂点と診断のポイントについて教えてください

新津 望

pp.1154-1155

ポイント

・リンパ腫は,B細胞腫瘍,T/NK細胞腫瘍,Hodgkinリンパ腫に分類される.

・B細胞腫瘍とT/NK細胞腫瘍は,分化度の違いにより前駆細胞型と成熟細胞型に分けられる.

Question 6 多発性骨髄腫治療薬の管理について教えてください

三輪 哲義

pp.1156-1158

ポイント

・免疫調節薬(IMIDs)は強い血管新生抑制作用をはじめとし,多様なMM抑制作用を有する.

・2012年現在,わが国で使用可能なIMIDsであるサリドマイドとレナリドマイドは,妊婦への薬害の経緯から厳密な薬剤管理システムの元でのみ投与が可能である.

・薬剤管理の基本は厳密な薬剤の保管と妊娠回避である.

・妊娠回避から,男性と妊娠可能女性と妊娠のない女性の3群での薬剤保管が行われている.

Question 7 抗血栓薬のPOCTにはどのようなものがありますか?

松原 由美子

pp.1159-1161

ポイント

・抗血栓薬には,抗凝固薬と抗血小板薬がある.

・薬剤反応性の個体差が大きい抗凝固薬は,薬剤のモニタリングの臨床的有用性が確立されており,POCTも一部診療に導入されている.

・抗血小板薬は抗凝固薬に比し薬剤反応性の個体差が小さいと考えられていたが,近年ではその反応性の個体差が大きいことが示され,薬剤のモニタリングの必要性が唱えられている.しかし,その効果を日常診療で評価する検査法はまだ確立されていない.

Question 8 活性型血小板の測定法とその臨床的意義について教えてください

藤田 真也 , 野村 昌作

pp.1162-1165

ポイント

・血小板が活性化されると血栓形成に大きく関与する活性型血小板へと移行する.

・代表的な血小板活性化マーカーは,CD62P,CD63,CD40リガンド,マイクロパーティクルである.

・活性型血小板および血小板活性化マーカーの測定は,病的血栓の診断・治療の参考になる.

Question 9 造血幹細胞移植の生着判定はどのようにしていますか?

森 毅彦

pp.1166-1167

ポイント

・造血幹細胞移植後の生着は,一般的に末梢血血算における“3日間連続の好中球数500/μl以上”により判定される.

・同種造血幹細胞移植においては,時にドナー細胞の生着を確認する必要がある.ドナーと患者の細胞の置き換わり状態を評価することをキメリズム解析と呼ぶ.

・キメリズム解析は,ドナーと患者が異性である場合には骨髄細胞や末梢血の細胞を用いてXY(異性間)-FISH,同性である場合にはPCR-STR法を用いる.HLA不一致ドナーからの移植ではフローサイトメトリーを用いた検査法も有用である.

Question 10 ADAMTS13の測定法とその臨床的意義について教えてください

植村 正人 , 藤村 吉博

pp.1168-1171

ポイント

・ADAMTS13活性の簡便迅速な測定法としてFRETS-VWF73蛍光測定法とchromogenic ADAMTS13-act-ELISAが開発された.

・原因不明血小板減少と溶血性貧血があれば血栓性微小血管障害症(TMA),すなわち血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と溶血性尿毒症症候群(HUS)を包括した病態を念頭に置く.

・ADAMTS13活性著減例は“定型的”TTP,かつインヒビター力価が陽性であれば後天性TTP,陰性であれば先天性TTPを考える.

・“非定型TTP”やHUSではADAMTS13活性が中等度低下~正常範囲を示す.後天性TMAは特発性(一次性)と二次性に分類される.“定型的”TTPは特発性やチクロピジンによるTTPに多くみられ,TMA全体のほぼ1/3を占める.

免疫

Question 11 免疫血清検査のキャリーオーバーとその防止法について教えてください

堀井 隆

pp.1172-1173

ポイント

・サンプルプローブから連続的に検体を採取する機構の自動分析装置では,採取した検体が後に続く検体に影響を与えることがある.この場合,分析系に持ち込むキャリーオーバーと検体に持ち込むキャリーオーバーを考えなければならない.

・抗原抗体反応を用いた項目で,腫瘍関連マーカーや感染症関連検査など検体間で濃度差の非常に大きい項目では,注意が必要である.

・キャリーオーバーの回避には,ディスポーザブルチップを用いたサンプリング方式の分析装置を用いる.この方式はテストごとあるいは検体ごとにチップを交換するため,分析系への持ち込みも検体への持ち込みも回避が可能である.

Question 12 イムノクロマトグラフィ検査のしくみと操作・判定の注意点を教えてください

稲野 浩一

pp.1174-1175

ポイント

・イムノクロマトグラフィ検査は,抗原抗体反応を利用して抗原(あるいは抗体)を検出する目的で行われるものであり,一般的には目視判定用に金コロイドやラテックス粒子などの有色標識体の凝集反応が応用されている.

・どのイムノクロマトグラフィ検査キットも操作法は簡便になっているが,試料の前処理方法や反応時間など,各キットに固有の細かい点が異なるので,添付文書や操作図を必ず理解したうえで検査を行う.

・判定は指定された時間で行うことが重要である.指定された時間以降での判定は,偽陽性である可能性もあるので行わない.

Question 13 CEAやCA19-9などの腫瘍マーカーの臨床的有用性を教えてください

加藤 博之 , 山田 理恵子

pp.1176-1177

ポイント

・消化器の腫瘍マーカー(TM)は,消化器癌の早期発見には適していない.

・治療前に陽性であったTMは,予後の判定,消化器癌の手術や化学療法の治療効果判定に用いられる.

・治療後の再発の発見には,画像診断より早くTMが上昇することがあり,根治手術後の経過観察に有用である.

・TMの上昇の速度は,転移再発の部位の想定にも役に立つ.

Question 14 肝炎ウイルスマーカー評価の最近の動向とピットフォールについて教えてください

小方 則夫

pp.1178-1179

ポイント

・肝炎ウイルスマーカー,特に,B型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)の免疫血清・血漿マーカーは,診断目的としてだけでなく,最近では病態解析手段としても活用されている.

・2000年代前半の国立感染症研究所の調査1,2)によりHBVマーカー・HCVマーカーともにキット間格差が明確となった.最近も項目によっては新規測定法が登場し特性が相違する複数の検査キットが普及しているため,各キットの特性を理解したうえで目的に沿うように活用・評価することが必要である.

・検査室が採用している検査法の診療現場への伝達が重要である.

Question 15 梅毒検査は原理の異なるものを組み合わせて行っていますが,実際の陽性率などはいかがですか?

行正 信康

pp.1181-1183

ポイント

・診断薬の反応原理に基づく特異性と検出感度の違いが検査結果に影響する.

・梅毒病期や治療に伴う梅毒免疫抗体の変化が検査結果に影響する.

・これらの現象は,各診断薬における免疫グロブリンクラス(IgM,IgG)の反応性を考える必要がある.

Question 16 アレルゲンの確定においてRASTはどれくらい信用できますか?

萱場 広之

pp.1184-1185

ポイント

・RASTはアレルゲンの種類や検査方法によって差が大きいが,概ね80~85%が皮膚試験と一致する1)

・RASTスコアと有症率は相関がみられる.しかし,検索アレルゲンのRASTが陰性であっても食物アレルギーの否定ができるものではない.

・アレルゲン検査は患者の症状や経過などの詳細な問診から選択することが推奨される.

Question 17 輸血検査におけるカラム法の実施率と問題点を教えてください

岸野 光司

pp.1187-1189

ポイント

・カラム凝集法によるABO・Rh0(D)血液型検査および不規則抗体スクリーニングの検査方法の実施率は,全国的に試験管法に次ぐ検査法となっている.近年,カラム凝集法を導入する施設が増加傾向を示している.

・カラム凝集法は試験管法と異なり客観的に判定可能であるが,緊急時における検査では迅速に対応することが困難である.

・ABO血液型検査のウラ試験において,試験管法と比較し,カラム凝集法の反応強度が弱反応を示す傾向がある.

・試験管法より感度が高いため,自己対照や直接クームス試験を実施すると,健常人でも陽性反応を示すことがある.

Question 18 輸血感染症対策はどのように行われていますか?

松林 圭二

pp.1190-1191

ポイント

・血液センターでは,①問診によるハイリスク献血者の排除,②感染症検査の精度向上,③保存前白血球除去と初流血除去による製剤への細菌混入の低減化,④保管検体を用いた遡及調査,⑤血漿製剤の貯留保管などにより,輸血感染症予防対策を講じている.

・スクリーニング検査が陰性にもかかわらず,ウイルス遺伝子が検出される献血者の頻度は極めて低く,HBVで約1/13万人以下,HCVで約1/2,200万人以下,HIVで約1/1,100万人以下と推定される.

・医療機関では,受血患者の輸血前検体の凍結保管と輸血前後の感染症検査を実施することにより,輸血感染症の早期発見・早期治療が可能となり,感染拡大を防止できる.

Question 19 ABC検診による胃癌予防について教えてください

加藤 元嗣 , 小野 尚子 , 間部 克裕

pp.1192-1193

ポイント

・ABC検診とは,ピロリ菌抗体と血清ペプシノゲン値の結果に基づいて胃癌リスクの程度を評価して,そのリスクに応じて精密の胃癌スクリーニング検査に導く方法である.

・ABC検診は胃癌そのものを見つけ出す方法ではないが,精密検診の不要な人を除外して,胃がん精密検診の必要性の程度でABC群に分けることによって効率的な検診を行うことが可能である.

Question 20 免疫血清検査の非特異反応にどう気づき,どう対処したらよいか教えてください

青木 義政

pp.1194-1195

ポイント

・検査室では常に非特異反応が潜んでいる可能性を念頭に置き,その要因を認識しておくことが大切である.

・非特異反応の検出は日常検査だけでは困難なことが多く,管理試料を用いた精度管理から把握することは不可能である.臨床医からの指摘によって初めてその存在に気づくこともしばしばである.

・非特異反応は症例・事例ごとにその要因が異なるため,ある特定の対処法(解析法)だけでは原因の追及が難しく,場合によっては試薬・機器メーカーの協力が必要不可欠である.

化学

Question 21 生化学検査における,抗凝固剤の使い分けについて教えてください

清宮 正徳 , 澤部 祐司 , 野村 文夫

pp.1197-1199

ポイント

・各種採血管の検査値の一般的な傾向を整理する.

・異常値の確認に有効な採血管の組み合わせを知る.

・通常と異なる採血管を使用した場合の検査値の変化を調査(実際に測定)し,代用可能あるいは禁忌の検査項目を整理しておく.

Question 22 HDL-コレステロール,LDL-コレステロールの直接法の原理と問題点について教えてください

杉内 博幸

pp.1200-1201

ポイント

・前処理が不要で,血清と試薬を混合するだけで簡単に測定できる方法を直接法と呼ぶ.

・HDL-コレステロール,LDL-コレステロールの直接法の測定原理には,大きく分けて選択的可溶化法と選択的消去法がある.

・長時間保存の検体や特殊なリポ蛋白の増加した検体では,原理の異なる試薬間で測定値の差が認められる.

Question 23 総コレステロールの基準測定法Abell-Kendall法の利用法と問題点,およびJSCC基準法について教えてください

栢森 裕三

pp.1203-1205

ポイント

・Abell-Kendall法は,アメリカ合衆国のCDCの基準測定法として採用されている.この方法を基盤として,コレステロール測定の標準化に利用されている.

・コレステロールのJSCC基準法は,日本臨床化学会が2006年に勧告した方法である.

・どちらもコレステロールエステルを加水分解する方法は化学的な方法であるが,最終的にコレステロールを検出する方法はAbell-Kendall法が化学的測定法,JSCC法は酵素的測定法が採用されている.

Question 24 心血管マーカーの組み合わせと使い分けについて教えてください

石井 潤一

pp.1206-1207

ポイント

・急性冠症候群の診療では,トロポニン,BNPと高感度CRPの組み合わせが,より精度の高いリスク層別化や治療効果の予測を可能にする.

・トロポニンTとH-FABP両者の定性測定を外来受診時に実施し,心筋梗塞の診断やリスク層別化を行うことが推奨される.

・心不全と同様,急性冠症候群においてもBNPとNT-proBNPの重症度やリスク層別化における精度は同等である.

・シスタチンCはクレアチニンより正確に糸球体濾過値を評価できる.

Question 25 急性薬毒物中毒患者の,薬毒物同定検査の分析法とその使い分けについて教えてください

宮城 博幸

pp.1208-1209

ポイント

・中毒の原因となり得る薬毒物は無限に存在しており,やみくもに検査を行っても原因物質の特定に至らないことが多い.効率的かつ迅速な分析を行うためには,分析可能な項目を明確にし,施設にあった分析手順を作成することが重要である.

・原因物質を同定する際に最初に行う分析がスクリーニング分析である.スクリーニング分析には,①古くから法中毒領域で行われている試薬を用いた呈色反応を利用した方法,②市販キットを用いる方法,③質量分析計などの機器を用いる方法がある.

・原因物質の最終的な同定には,機器分析が必要となる.また,提出された試料は,適切に保存しておくことが重要である.

Question 26 HbA1cの測定法による相違,表示に関する国際的流れについて教えてください

雨宮 伸

pp.1210-1211

ポイント

・日本のHbA1c値はNGSP値に統一表示されることになった.

・従来のJDS値によるHbA1c標準化は高い精度で堅持されていたので,NGSP値も国内の標準化手順に従う必要がある.

・国際学会および雑誌でIFCC値(国際単位)を求める場合,欧米で掲載されている現時点のNGSP-IFCC換算式を用いることとなった.

・将来におけるIFCC値への移行が検討されている.

Question 27 高齢者における血清亜鉛測定の有用性について教えてください

倉澤 隆平

pp.1212-1213

ポイント

・多くの医師が考えているよりも,はるかに多くの,多彩な症状の亜鉛欠乏症患者が存在する.

・若年者にも存在するが,加齢に伴い血清亜鉛値低値者および欠乏症患者は増加の傾向にある.

・初診時血清亜鉛値により欠乏症の診断の推定を行い,補充療法による血清亜鉛値などの追跡により診断を確定し,確信をもった治療の継続と完了および現行補充療法の適否の推定を行う,というのが亜鉛欠乏症検査と診断の流れである.

Question 28 血清アルブミン測定BCG法と改良BCP法の長所・短所と,臨床検査法としての今後の見通しを教えてください

村本 良三

pp.1214-1215

ポイント

・改良BCP法は,従来のBCP法の問題点であった酸化型アルブミンと還元型アルブミンとの反応差を解消した測定法である.

・BCG法はアルブミンのみならずグロブリン分画とも反応するが,アルブミン結合物質による影響を受けづらい性質がある.一方,改良BCP法はグロブリン分画とほとんど反応しないが,アルブミン結合物質の影響を受けやすい性質がある.

・BCG法は1試薬系であり,改良BCP法は2試薬系である.改良BCP法は共存物質の色調による影響が回避可能な試薬構成となっており,乳糜や溶血の影響などを含め,現在最も正確度の高い日常検査法とされている.

Question 29 血液ガス分析と結果解釈の注意点を教えてください

福田 篤久

pp.1216-1217

ポイント

・測定前の攪拌は上下左右に転回しながら最低15秒間行う.

・換気能は,二酸化炭素分圧(PaCO2)を指標にする.

・酸素化能は,酸素分圧(PaO2)を指標にする.

・酸塩基平衡異常は,水素イオン濃度(pH)を指標にする.

感染症

Question 30 すぐに検査室に提出できない場合の細菌培養検体の保存方法について教えてください

荘司 路

pp.1218-1219

ポイント

・検体の保存が菌叢や起因菌検出に及ぼす影響を理解する.

・検査材料や目的菌などに応じた適切な保存方法を選択する.

Question 31 血液培養採取時に留意すべき点について教えてください

青木 洋介

pp.1220-1221

ポイント

・皮膚消毒にはイソジン®を用い,単に塗るのではなく皮膚表面の常在菌を落とすつもりでしっかりと塗布する.

・静脈血を用いて必ず2セットの血液培養を採取する.

・血液培養ボトルの蓋もイソジン®で消毒する.

・採取血と培養液との比率が1:5~10になるよう分注する.

・嫌気ボトル,好気ボトルの順に分注し,2時間以内に培養検査を開始する.

Question 32 基質特異性拡張型βラクタマーゼやメタロβラクタマーゼを産生するグラム陰性桿菌の検出方法を教えてください

石井 良和

pp.1222-1224

ポイント

・耐性菌の検出にとって正しく薬剤感受性検査が実施されていることが最も重要である.そのためには,検査に対して精度管理が常に正しく実施されていなければならない.

・CLSIがそのドキュメントに記載している基質特異性拡張型βラクタマーゼのスクリーニング検査と確認検査は有用な検査法である.

・メタロβラクタマーゼの検出法として,キレート剤の共存下においてβラクタム薬の感受性が回復することを利用した方法が有用である.本邦ではsodium mercaptoacetic acidが,諸外国ではEDTAがそれぞれ汎用されている.

Question 33 MRSAで問題となっているバンコマイシンのMIC creepとはどのような現象ですか?

杉田 香代子

pp.1226-1227

ポイント

・MIC creepとは,MRSAに対するVCMのMICが年々上昇している現象である.

Question 34 薬剤感受性検査でCLSIやEUCASTという言葉をよく耳にしますが,一体何のことなのですか?

赤松 紀彦 , 栁原 克紀

pp.1228-1229

ポイント

・薬剤感受性検査の判定基準は“ブレイクポイント”により設定されている.

・CLSIとはアメリカ臨床検査標準委員会のことである.CLSIのブレイクポイントはわが国の多くの検査室で採用されている.

・EUCASTとはヨーロッパ抗菌薬感受性試験法検討委員会のことである.CLSIとは異なる独自のブレイクポイントを提唱している.

Question 35 薬剤感受性検査で使われているブレイクポイントとはどういう意味ですか?

大塚 喜人

pp.1230-1231

ポイント

・薬剤感受性検査は,抗菌薬選択の際に測定結果と過去の各菌種に対するデータの蓄積が指標となる.

・ブレイクポイントは,S,I,Rに変換するための基準となる抗菌薬濃度値と言える.

・MIC値が最も低いからといって適正な抗菌薬選択とは言えない.

Question 36 マススペクトロメトリー法による病原体の迅速解析はどこまで可能ですか?

渡邊 正治 , 曽川 一幸 , 野村 文夫

pp.1232-1233

ポイント

・菌体の蛋白質を分析するためGram染色や生化学的性状などは必要としない.

・新鮮なコロニーをターゲットプレートに載せて質量分析計で測定し,結果は数分間で得ることができる.ただし,コロニーのできない微生物には対応できない.

・直接臨床材料からの菌種同定も一部の材料で試みられている.また,薬剤耐性菌の鑑別や株レベルのタイピングなども期待される.

Question 37 抗菌薬の薬効と相関するPK-PDパラメータについて,抗菌薬の種類別に教えてください

堀 誠治

pp.1234-1235

ポイント

・抗菌薬の種類により,殺菌の様式が異なり,薬効と相関のあるPK-PDパラメータが知られている.

・抗菌薬の薬物効果(治療効果)を増大するためには,PK-PDパラメータのターゲット値を超えるように用法・用量を設定する.

・Cmax/MIC,AUC/MICと治療効果との間に相関を認める薬物では,1回投与量を増大するほうが薬効増大に効果的であるが,TAMと相関を認める薬物では分割投与するほうが効果的である.

Question 38 成人の百日咳が増えていますが,乳幼児の場合と症状や診断方法に違いはありますか?

岡田 賢司

pp.1236-1237

ポイント

・成人の百日咳は増えているが,症状や診断方法に乳幼児と成人で基本的には違いはない.ただ,気をつけなければいけない点がある.

・乳幼児では,DTPワクチン接種歴,成人では咳の初発から受診までの期間などに注意しながら診断していく.

・発症から4週間以内なら培養および血清診断,4週間以降はペア血清による血清診断を行う.

Question 39 血中β-Dグルカンが上昇しない真菌感染症はあるのですか?

川上 小夜子

pp.1238-1239

ポイント

・接合菌症,クリプトコックス症の場合にはβ-Dグルカンは上昇しない.

・β-Dグルカンは真菌の主要な細胞壁構成成分だが,接合菌には存在しない.

・クリプトコックスの細胞壁骨格成分にはβ-Dグルカンが存在するが,厚い莢膜多糖の影響か,血液中の測定値はあまり上昇しない.

Question 40 クォンティフェロン®検査における判定保留,判定不可とはどのような意味ですか?

藤原 宏 , 長谷川 直樹

pp.1240-1243

ポイント

・判定保留は,その患者背景の結核感染率によって解釈が異なり,結核感染率が高いと想定される場合は,陽性相当と判断する.

・判定不可は,細胞性免疫応答が低下している,あるいは亢進しているためIFN-γを用いたassayでは判定ができないことを意味する.

一般検査

Question 41 eGFRの必要性と用い方について教えてください

堀尾 勝

pp.1244-1245

ポイント

・腎疾患の診療では腎機能の評価が必要である.腎排泄性薬剤の投与や造影剤を用いた検査(造影CT,造影MRI)時にも腎機能評価が必要とされる.糸球体濾過量(GFR)の実測が正確であるが,一般臨床では簡便な推算GFR(eGFR)が用いられる.

・血清クレアチニン値は筋肉量の影響を受けるため,筋肉量の少ない女性・高齢者では低めになる.性別,年齢の情報を加えたeGFRは血清クレアチニン単独の評価より正確である.

・血清クレアチニン,年齢,性別よりeGFR(ml/min/1.73m2)が算出できる.血清シスタチンC値に基づくeGFRも利用可能となった.

Question 42 糖尿病性腎症,慢性腎臓病の病期分類における尿中アルブミン測定の意義,利用法について教えてください

羽田 勝計

pp.1246-1248

ポイント

・尿アルブミン値の増加,すなわち“微量アルブミン尿”は,糖尿病性腎症の診断上最も重要な検査項目である.

・糖尿病性腎症・慢性腎臓病(CKD)ともに,そのステージは尿アルブミン値と糸球体濾過量(GFR)で分類されている.

・微量アルブミン尿は,糖尿病性腎症の進行のリスクであるとともに,心血管イベントのリスクでもある.

・集約的治療により,微量アルブミン尿の寛解(正常アルブミン尿への改善)が期待される.

Question 43 便潜血検査による大腸がんスクリーニングの有用性と限界について教えてください

斎藤 博

pp.1250-1252

ポイント

・免疫法便潜血検査(免疫法FOBT)は大腸がん検診法である.かつてと違い,現在では臨床検査法としての意義は限られる.

・FOBTの大腸がん検診法としての有効性については,がん検診の中でも最も確実な科学的根拠がある.複数のランダム化比較試験の一致した結果により,死亡率減少効果が確立している.がん検診法は内視鏡検査など診断検査とは異なり,その有効性の指標は死亡率である.

Question 44 糞便中の寄生虫の核酸検査法について教えてください

迫 康仁 , 伊藤 亮

pp.1254-1255

ポイント

・糞便検査が適用される寄生虫症が対象となる.

・核酸検査は,①糞便中に寄生虫が検出されにくい場合,②形態的に種の同定が困難か不可能な場合,③複数の寄生虫種が検出された場合,④紛らわしい異物が検出された場合,⑤分子疫学調査を行う場合などに適用される.

・一般的な核酸検査法であるPCR法を基にした検査法に加え,LAMP法を用いた検査法の報告も増加している.

・糞便中の虫卵,線虫の幼虫,シスト,オーシストなどに物理的破壊処理を施し,DNA抽出を行う.

病理・細胞診

Question 45 チャタリングの入らない組織標本作製のコツを教えてください

片岡 秀夫

pp.1256-1257

ポイント

・チャタリングとは薄切ブロック面に刃線と平行にすだれ状の凹凸が生ずることで,薄切切片にも凹凸が波のように生ずる.発生原因は,主に以下の4点であり,その原因に応じて対応する.①組織ブロック側:良好なブロック作製,②ミクロトーム側:ナイフを固定するネジの確実な固定,③ナイフ側:替え刃のネジの確実な固定.替え刃は硬組織用を使用,ナイフの引き角は45°以下に調整,④薄切法:薄切はメスをゆっくり一定のスピードで行う.

Question 46 迅速組織診の適正な標本作製時間は何分以内ですか?

片山 博徳

pp.1258-1259

ポイント

・組織の凍結開始から標本提出まで3~5分位を目安にする(1症例につき1凍結ブロックを作製).

・急速に組織の凍結を行う.

・精度の高い薄切,染色を迅速に行う.

Question 47 癌および組織型推定の決め手として使える市販のマーカーにはどのようなものがありますか?

弓納持 勉

pp.1260-1261

ポイント

・単独の抗体で良悪性および組織型の決め手となる抗体は存在しない.そのため,複数の抗体の組み合わせが必要となるが,組織および抗体の特性を十分認識することが重要である.

・しかし,いたずらに多くの抗体を組み合わせることは,診断をより困難としてしまう.HE染色およびPapanicolaou染色に勝る方法がないことを認識し,これらの情報に基づいた抗体の選択が重要となる.

・時にはネガティブデータも評価の対象としなければならないが,それが間違いなく陰性である保障が必要である.

Question 48 免疫染色の染色強度は結果の判定にどのような影響を与えますか?

伊藤 仁

pp.1262-1263

ポイント

・免疫染色の判定は,原則的(理想的)には陽性か陰性かであるが,染色強度が弱い場合や,背景染色が高い場合は判定が難しい.

・免疫染色の濃淡(染色強度)は,固定条件,切片の厚さ,賦活法,抗体の種類,抗体濃度,検出方法,組織の状態などにより大きく左右される.

・HER2など陽性率と染色強度を含めた評価方法では,厳密に標準化された方法に基づいて行われる必要がある.

Question 49 Pathologist's Assistantはどのような職種ですか?

青木 裕志

pp.1264-1265

ポイント

・PA制度とは,病理医師の担う業務の一部を病理技師が行うことを認定するための制度である.

・PAの業務範囲は,病理検体の切り出しや写真撮影,特殊染色や免疫染色の所見判定,テレパソロジーでの対応などを中心に検討されている.

・PAの制度化には,病理医師の業務量を軽減するほか,病理技師のレベルアップ,病理検査の標準化に繋がると期待されているが,法的な問題など解決しなければならない点もあるため,慎重に議論されている.

Question 50 臨床検査技師が剖検介助を行いうる法的根拠を教えてください

小松 京子

pp.1266-1268

ポイント

・わが国における死体の解剖とその保存は,健康政策六法死体解剖保存法に基づき行われている.病理解剖指針においては,

 臨床検査技師,看護婦等医学知識及び技能を有する者が,一部の行為につき解剖補助者として解剖の補助を行う場合には,病理解剖医は適切な指導監督を行わなければならないこと.

 また,血液等の採取,摘出した臓器からの肉眼標本の作製や縫合等の医学的行為には,臨床検査技師等以外を解剖にかかわらせることのないよう十分注意しなければならないこと.

と記載されている1)

Question 51 液状処理法と従来法では細胞所見にどのような違いがあるのですか?

古田 則行

pp.1269-1271

ポイント

・子宮頸部細胞診の液状処理法では,細胞の重積が少なく,薄く均等な細胞密度で,限局した範囲に塗抹された標本ができる.従来法では細胞が重積した場合や,炎症細胞,血液,粘液などに細胞が隠ぺいされ観察が困難となる場合があるが,液状処理法ではそれを防止できる.

・液状処理法では,細胞判定の妨げとなる乾燥が防止できる.

・液状処理法には,フィルター法,密度勾配法,重力接着法があり,それぞれ細胞所見が異なり,方法による細胞のみかた,判定法が必要となる.

Question 52 子宮頸部細胞診で中等度異形成がHSILに区分されているのはなぜですか?

吉田 朋美

pp.1272-1274

ポイント

・中等度異形成はハイリスク型HPV(特に16型)感染が多い.

・中等度異形成の病変の消退率,進展率は高度異形成に近い.

・中等度異形成がHSILに区分されているのは,中等度異形成の細胞診断の精度と再現性を保つためである.

Question 53 細胞診陰性標本の判定に医師は関与しなくてよいのですか?

竹中 明美

pp.1276-1277

ポイント

・専門医に提出しなかった陰性標本については細胞検査士に責任があり,専門医に提出した標本(特に悪性とした標本)については専門医に責任があるということになる.

・細胞診専門医や病理専門医が関与することで保険点数が加算される.しかし,細胞診陰性標本への医師による全例関与は,施設の状況にもよるが,困難である施設が少なくないと思われる.

Question 54 細胞検査士が国家資格化を目指す意義と問題点について教えてください

加藤 拓

pp.1278-1279

ポイント

・早期癌の診断,治療のための検査の中で容易に行うことができ,しかも結果報告を速やかに得られるのが細胞診検査であり,それを行っているのが細胞検査士である.

・細胞検査士の業務は責任が重く,常に生涯教育が必要な仕事であり,癌診断に欠かせない重要な職業である.しかし,社会的認知度が低いため,身分や社会的立場を確立させるためにも国家資格化を望む声が40年以上も前からあった.

精度管理

Question 55 精度管理に関する用語の異同について説明してください

細萱 茂実

pp.1280-1281

ポイント

・精度管理に関連する用語は,真の値を前提とし正確さと精密さを主な指標とする考え方に対し,測定の不確かさを用いる表現法が導入され,信頼性の評価法が変わってきている.

・測定対象に関するトレーサビリティ連鎖の体系が計測技術の中軸となるが,トレーサビリティ連鎖からのばらつきの大きさを客観的,定量的に表す指標が不確かさである.

・測定値のばらつきの大きさが許容されるか否かを評価する際の基準となる許容誤差限界は,生理的変動に基づき設定する考え方と,技術水準に基づき設定する考え方がある.

Question 56 患者データを利用した精度管理について,具体的に実例を挙げて教えてください

片岡 浩巳

pp.1282-1283

ポイント

・患者データを利用した精度管理は,管理検体が使えない場合や反復測定を効率的に実施するための精度管理法である.

・正確度とは,検査値が“真値”に近い値であることを示す尺度である.

・平均,標準偏差などの統計的アプローチを適用する場合は,取り扱うデータが正規分布であることが前提である.

・患者データを利用した管理法は,検出基準が一般化されていないため,各施設の患者層の分布や精度保証の水準によって,個別に基準を設定する必要がある.

Question 57 海外・本邦には様々な標準物質がありますが,実際の利用法を教えてください

白井 秀明

pp.1284-1287

ポイント

・標準物質の使い方を理解するためには,臨床検査の計量学的トレーサビリティ体系を知り,日常検査で測定される値についてどのように正確さがトランスファーされているか知っておくべきである.

・臨床検査で用いる標準物質の用語と意味を知る.

・標準物質の利用法としては,日常検査に用いるスタンダードは製造メーカーから供給される標準液(キャリブレータ)を使用すべきである.また,測定値の正確性を確認するためには,認証値付の実試料標準物質を用いるとよい.

Question 58 血清アルブミン測定標準化を将来どう進めたらよいのですか?

村本 良三

pp.1288-1289

ポイント

・血清アルブミン測定におけるトレーサビリティ連鎖は現在のところ確立されていない.基準測定操作法,純物質系アルブミン標準物質,常用基準測定操作法,実用標準物質の確立が必要である.また,標準物質を患者血清へトレーサビリティできる日常検査法の確立が必要である.

・現在,血清アルブミン測定の日常検査に使われている方法は,BCG法,BCP法,改良BCP法の3法である.3法の反応性は互いに異なり,特に低アルブミン血症の患者血清において測定値の乖離が生じる.標準化には測定法の統一化が必要であり,また正確度の高い検査試薬の普及が必要となる.

・血漿蛋白国際標準物質としてIRMM ERM-DA470k/IFCCがあるが,改良BCP法試薬間においても反応性が若干異なる.標準化には試薬処方の統一化も必要である.

Question 59 血液凝固,線溶検査の標準化/ハーモナイゼーションの現状について教えてください

福武 勝幸

pp.1290-1291

ポイント

・臨床検査の外部精度管理を行うためには,同一項目内の検査法間で検査自体の標準化が行われている必要があるが,血液凝固検査では標準化が進んでいない.

・臨床検査の標準化を行うには標準物質を確立することが必要であるが,検査対象が単一物質でない検査項目については標準物質に代わる工夫(ハーモナイゼーションなど)が必要となる.

・プロトロンビン時間は,国際標準化比(INR)という手法で,ビタミンK阻害薬による経口抗凝固療法のモニタリングについては標準化されているが,その他の項目については検討が続いているものの実用化には至っていないため,現状では測定法間差がある.

Question 60 HTLV-1遺伝子検査の標準化作業で明確になった注意点について教えてください

佐々木 大介 , 長谷川 寛雄 , 栁原 克紀

pp.1292-1293

ポイント

・ヒト細胞の場合,細胞1個につき染色体は2セット存在しているので,通常の遺伝子であれば1細胞当たり2コピーの遺伝子単位がゲノムDNA上に存在する.

・plasmid DNAや細胞株より抽出したDNAなど,各施設独自のものが使用されている.plasmid DNAの場合は,DNA量よりコピー数を求めることができる.

Question 61 基準値と基準範囲とはどう違うのですか? 病態識別値との区別についても教えてください

河合 忠

pp.1294-1295

ポイント

・基準値は,ある意思決定の基準となる計測値または計測結果を意味し,その使用目的によって様々なものがある.

・基準範囲は,国際的に定義された定量検査に適用される用語で,厳密に選ばれた基準個体(“健康人”)の多数集団の測定値のうち,通常,中央部に分布する95%を含む範囲であって,広義の基準値の一つである.

・定義通り基準範囲を求めるのは,現実的に極めて困難であり,実際はそれに近似の方法で求めたものまで含めて引用されているので,標準化は進んでいない.

・病態識別値は,臨床専門家集団の経験または臨床疫学的根拠に基づいて求められたもので,基準範囲と全く異なるものである.

資格・認定

Question 62 日本で海外の臨床検査技師の資格取得は可能ですか?

坂本 秀生

pp.1296-1298

ポイント

・臨床検査技師を国家試験としている国では,その国の受験基準を満たすことが必須.

・臨床検査業務には生理学的検査および静脈採血を含まない国が多く,臨床検査とは検体検査のみを海外では意味する.

・米国の臨床検査技師資格は,国際資格として日本にいながらにして得ることも可能.

Question 63 認定臨床微生物検査技師やICMTなどの資格を取得する意義について教えてください

佐藤 智明

pp.1300-1301

ポイント

・認定臨床微生物検査技師を取得しても,多くの場合は昇給や昇任は期待できない.また,認定技師取得分野以外の業務担当へのローテーションの対象となる場合もある.

・認定技師,ICMTの認定資格は5年ごとの更新制で,更新には学会発表や研修会参加などによる規定単位の取得が必要である.

・認定技師は後進の育成も重要な役割である.

・認定臨床微生物検査技師やICMTは発展(認知)途上の資格であり,取得の意義は今後の取得者の行動にかかっている.

あとがき フリーアクセス

伊藤 喜久

pp.1302

あとがき

 世界の中で日本の臨床検査は独自の位置づけにあります.米国のclinical pathologyから検体検査部門を切り離し,さらに中央検査室の中から生理機能検査を加え,実践医療の現場から臨床研究,教育,医療サービスを発展させてきました.多くのすぐれた臨床検査技師の輩出は現在の興隆の中心をなすものです.多くの大学に臨床検査医学講座,保健学科が設置され,全国に検査技師養成専門学校が開かれているのも他国に類をみません.明治以来の欧州の学術を継承して病態解明が推進され,独創性の高い研究が発表され高く評価されています.なかなかみえにくい部分ですが,薬学,工学などの領域は,学術研究,さらに企業の製品を通じて検査のコアな部分を支えています.このようにあらゆる領域からの新しい追い風を受け,独自の体系を維持しながら,病態生理(基礎)と検査・測定・分析(応用)の2本柱が厚い層を成す,これが日本の臨床検査を特徴づけています.

 これまで雑誌「臨床検査」は,病態生理というプローブで医学,医療全体を探索し,近未来の新たな創造への道筋に光を当て続けてきました.発見,発明,応用展開とこれらを生み出す智,創意工夫の魅力もお伝えしてきました.これからもこの理念は本誌の底流をなすものですが,さらに実践応用にも対象を広げreaders'-oriented reviewの視点から,読者のみなさんの関心が今どこにフォーカスされ,何をどのように学び,どこまでoutcomeを望まれているかを考えながら,新たな時代のニーズに応じた研究,教育専門誌の果たす役割の可能性を求め始めています.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

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今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

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今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

今月の特集1 骨髄不全症の病態と検査
今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

今月の特集 超音波検査報告書の書き方—良い例,悪い例

64巻5号(2020年5月発行)

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今月の特集2 EBLM(evidence based laboratory medicine)の新展開

64巻4号(2020年4月発行)

増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見

64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

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59巻10号(2015年10月発行)

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58巻5号(2014年5月発行)

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今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

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今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

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57巻12号(2013年11月発行)

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今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

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今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

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今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

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今月の主題2 血液形態検査の標準化

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