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文献詳細

雑誌文献

臨床検査56巻4号

2012年04月発行

文献概要

今月の主題 感染症検査における境界値の取り扱い方 巻頭言

感染症診療と境界値

著者: 岩田敏1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部感染制御センター

ページ範囲:P.347 - P.348

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 感染症の診断・治療・予防においては様々な判断の基準があるが,感染症検査では,その結果が必ずしも血液生化学検査のように数値化されていない場合もあり,検査結果を評価する臨床検査技師や医師・看護師・薬剤師の判断により,感染症検査の情報が日常診療の中でどのように評価されているか,また評価されるべきかは様々である.もちろん近年は感染症検査も標準化が行われており,共通の尺度で検査結果を評価することが可能となってきてはいるが,微生物の培養検査では,検査の過程でヒトの判断が入るという点で,必ずファジーな部分が含まれることになる.

 例えば,薬剤感受性検査の方法は様々であり,検査結果は一応感性(S),中等度感性(I),耐性(R)というような形で臨床現場に返されてくるが,結果を受け取った臨床医はその結果をどのように判断しているのか,あるいは判断したらよいのか,ということは,患者への治療を行ううえで極めて重要な点である.Rと判定された抗菌薬を敢えて選択する医師はおそらくいないと考えられるが,それでは同じSと判定された複数の抗菌薬の中からどの抗菌薬を選択するのがベストなのであろうか.同じSでも作用機序や体内動態は抗菌薬の種類によって異なっているし,そもそもSの範囲にだって幅があるわけなので,よく効くはずのSとあまり効かないかもしれないSがあるのではないだろうか,抗菌薬の投与量や組織移行との関係だってあるのではないだろうか,等々,考えれば考えるほど,単純に薬剤感受性検査の表面的な報告を受けて,抗菌薬を選んではいけないような気がしてくるのは,感染症を専門としている医療従事者も,感染症を専門としていない医療従事者も同じであると思われる.薬剤感受性検査の結果を正確に評価し,感染症診療に役立てるためには,S,I,Rの裏に秘められた意味を裏読みする技も必要とされる場合があるということであろうか.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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