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シリーズ-感染症 ガイドラインから見た診断と治療のポイント・3
急性中耳炎
著者: 工藤典代1
所属機関: 1千葉県立保健医療大学健康科学部栄養学科
ページ範囲:P.789 - P.795
文献購入ページに移動はじめに
急性中耳炎は小児,特に乳幼児が罹患しやすい上気道炎の1つである.夜間に耳痛を訴え子どもが突然泣きだした後,朝になって耳漏が出ていたのに気がついたということを,子どもをもつ親ではよく耳にし,経験することもある.欧米の報告によると急性中耳炎は生後1歳までに62%,生後3歳までに83%が少なくとも一回は罹患するとされているありふれた中耳の感染性疾患である.
治療は,数年前までは各診療医それぞれの判断に任されていた.すなわち,抗菌薬の選択や鼓膜切開などの判断は各診療医にゆだねられていた.
しかし,第3世代セフェム薬が広汎に使用されるようになった1990年代から,急性中耳炎の起炎菌である肺炎球菌とインフルエンザ菌において,抗菌薬に対する耐性菌が急激に増加し,急性中耳炎にも治りにくい症例や入院治療を要する症例の報告が相次ぐようになった1,2).そのような背景から,本邦で初めて「小児急性中耳炎診療ガイドライン」3)が作成され,公表されたのは2006年3月であった.その後,2009年に改訂4)され現在に至っている.
本稿では,ガイドラインからみた急性中耳炎の診療について述べる.
急性中耳炎は小児,特に乳幼児が罹患しやすい上気道炎の1つである.夜間に耳痛を訴え子どもが突然泣きだした後,朝になって耳漏が出ていたのに気がついたということを,子どもをもつ親ではよく耳にし,経験することもある.欧米の報告によると急性中耳炎は生後1歳までに62%,生後3歳までに83%が少なくとも一回は罹患するとされているありふれた中耳の感染性疾患である.
治療は,数年前までは各診療医それぞれの判断に任されていた.すなわち,抗菌薬の選択や鼓膜切開などの判断は各診療医にゆだねられていた.
しかし,第3世代セフェム薬が広汎に使用されるようになった1990年代から,急性中耳炎の起炎菌である肺炎球菌とインフルエンザ菌において,抗菌薬に対する耐性菌が急激に増加し,急性中耳炎にも治りにくい症例や入院治療を要する症例の報告が相次ぐようになった1,2).そのような背景から,本邦で初めて「小児急性中耳炎診療ガイドライン」3)が作成され,公表されたのは2006年3月であった.その後,2009年に改訂4)され現在に至っている.
本稿では,ガイドラインからみた急性中耳炎の診療について述べる.
参考文献
1) Teele DW, Klein JO, Rosener B : Epidemiology of otitis media during the first seven years of life in children in greater Boston : a prospective, cohort study. J Infect Dis 160:83-94,1989
2) 工藤典代,留守卓也:入院治療を要した乳幼児の難治性中耳炎 最近の動向.Otology Japan 11:275,2001
3) 日本耳科学会,日本小児耳鼻咽喉科学会,日本耳鼻咽喉科感染症研究会(編):小児急性中耳炎診療ガイドライン(2006年版),金原出版,2006
4) 日本耳科学会,日本小児耳鼻咽喉科学会,日本耳鼻咽喉科感染症研究会(編):小児急性中耳炎診療ガイドライン(2009年版),金原出版,2009
5) 遠藤廣子:小児科で診る急性中耳炎 小児科入院例の検討から.Otology Japan 16:201-204,2006
6) Maruyama Y, Hoshida S, Furukawa M, et al : Effects of Japanese herbal medicine, Juzen-taiho-to, in otitis-prone children―a preliminary study. Acta otolaryngol 129:14-18,2009
7) 宇野芳史:小児難治性反復性中耳炎に対する短期鼓膜換気チューブ留置術の有効性について.Otology Japan 17:194-202,2007
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