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文献詳細

雑誌文献

臨床検査56巻8号

2012年08月発行

文献概要

今月の主題 多剤耐性菌の検査と臨床 話題

多剤耐性Gram陰性菌に対する抗菌薬併用療法

著者: 舘田一博1

所属機関: 1東邦大学医学部微生物・感染症学講座

ページ範囲:P.901 - P.903

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1.はじめに―抗菌薬の併用療法

 今日,感染症を取り巻く状況はますます難しいものとなっている.その理由として,耐性菌の増加と蔓延の問題は重要であり,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)はもちろんのこと,最近では多剤耐性緑膿菌(multiple drug-resistant Pseudomonas aeruginosa;MDRP)やバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococcus;VRE)などの問題が大きく社会問題として取り上げられている.MDRPは,カルバペネム系薬,フルオロキノロン系薬,アミノグリコシド系薬の3剤に同時に耐性を示すことから,単剤による抗菌薬治療は困難である.

 また,非定型病原体が関与する頻度の高い市中肺炎などにおいては,βラクタム系薬+マクロライド系薬,あるいはβラクタム系薬+フルオロキノロン系薬などの併用療法を余儀なくされる症例を経験する.日本呼吸器学会が発行している「成人市中肺炎診療ガイドライン」1)においても,ICUでの治療が必要となるような重症肺炎症例では1群(カルバペネム系薬,第3・4セフェム系薬+クリンダマイシン,モノバクタム+クリンダマイシン,グリコペプチド系薬+アミノグリコシド系薬)に2群(フルオロキノロン系薬,テトラサイクリン系薬,マクロライド系薬)の薬剤を併用して治療を行うことを推奨している.

 本稿では,抗菌薬の併用療法の目的と意義,それが実施される状況について概説するとともに,MDRP感染症に対するオーダーメイド併用療法の可能性に関して,ブレイクポイント・チェッカーボード法について紹介する.

参考文献

1) 日本呼吸器学会:「呼吸器感染症に関するガイドライン」 成人市中肺炎診療ガイドライン,2005
2) Tateda K, Ishii Y, Matsumoto T, et al : 'Break-point Checkerboard Plate' for screening of appropriate antibiotic combinations against multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa. Scand J Infect Dis 38:268-272,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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