icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床検査57巻1号

2013年01月発行

文献概要

異常値をひもとく・1【新連載】

支持体により電気泳動移動度が異なり,免疫グロブリン定量値にも乖離を認めた多発性骨髄腫

著者: 藤田清貴1 小林香保里2 亀子文子3

所属機関: 1群馬パース大学保健科学部検査技術学科 2佐久総合病院臨床検査科 3信州大学医学部保健学科検査技術科学専攻

ページ範囲:P.86 - P.92

文献購入ページに移動
はじめに

 臨床検査で見いだされる異常蛋白質の代表的なものはmonoclonal蛋白(M蛋白)であり,そのクラスは血中濃度に比例しIgG型,IgA型,IgM型の順に多く,M蛋白の約85%は3つのいずれかのクラスに属する.それ以外では,Bence Jones蛋白(Bence Jones protein;BJP)型が約12%,IgD型が約3%,IgE型が0.1%以下の頻度と報告されている.特に,IgD型,IgE型M蛋白は見逃されやすい異常蛋白質であり注意が必要である.

 また,日常検査では異常蛋白質と体液性成分との結合や相互作用,あるいは測定試薬(物質)との反応によって病態を反映しない異常値や,奇妙な電気泳動パターンに遭遇し判断に迷うことが少なくない.これらの現象は,一般に異常反応1),あるいはピットフォール(pitfall)と呼ばれているが,日頃の精度管理だけで発見できるものではなく,異常データを見いだし,的確に対処できなければ誤診につながる可能性が高い.

参考文献

1)藤田清貴:序論-異常反応について.生物物理化学 51:223-226,2007
2)Takemura Y, Ikeda M, Kobayashi K, et al:Plasma cell leukemia producing monoclonal immunoglobulin E. Int J Hematol 90:402-406,2009
3)藤田清貴:見逃されやすい異常蛋白質.臨床検査で遭遇する異常蛋白質,医歯薬出版,pp66-151,2010
4)鎌田まり子,矢中寿江,稲葉龍太郎,他(東北地区電気泳動セミナーグループ):セルロースアセテート膜と反応するIgG-κ型M-蛋白の免疫化学的特性.生物物理化学 31:313,1987
5)藤田清貴,櫻林郁之介,草薙睦子,他:セルロースアセテート(Separax)膜とIgM-κ型M蛋白の反応様式に関する研究.生物物理化学 41:187-192,1997
6)田口睦子,藤田清貴,鈴木徳和,他:セルロースアセテート膜と反応するIgA-κ型M蛋白の免疫化学的特性.生物物理化学 40:250,1996
7)橋本寿美子:寒天ゲルと反応するIgGとその解析.臨床検査 47:230-232,2003
8)藤田清貴:寒天ゲルと反応するIgG3-κ型M-蛋白の免疫化学的特性に関する研究.臨床病理 31:1257-1262,1983
9)Ishihara M:Peptides Containing Consensus Amino Acid Sequences for Binding to Heparin/Heparan Sulfate. Trends in Glycoscience and Glycotechnology 12:265-266,2000
10)Cardin AD, Weintraub HJ:Molecular modeling of protein-glycosaminoglycan interactions. Arteriosclerosis 9:21-31,1989

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?