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文献概要

特集 はじめよう,検査説明 その他

8 基準範囲の利用法について教えてください

著者: 山本慶和1

所属機関: 1天理医療大学医療学部臨床検査学科

ページ範囲:P.1424 - P.1425

1.基準範囲の有効利用法

 日本臨床検査標準協議会(JCCLS)基準範囲共用化委員会によって標準化された全国規模の基準範囲が提示された.共用基準範囲を利用する要件は,「全国規模で実施される外部精度管理調査において,測定値に明瞭な偏りがないことである.この点が確認された検査項目については,共用基準範囲をそのまま採用できる」とされている.

 もう少し掘り下げると,基準範囲は固体内生理的変動CViおよび個体間生理的変動CVGから合成される.仮に分析の精密さが無視できるなら,基準範囲は(CVi2+CVG21/2として計算できる.基準範囲を採用するには検査値の偏り(分析の偏りBA)はBA<1/4(CVi2+CVG21/2が望ましいとされる.この根拠は測定値に偏りのない場合,基準範囲の上下限外に5%(2.5%ずつ)はみ出すが,偏りが3/8(CVi2+CVG21/2では6.7%はみ出し,1/4(CVi2+CVG21/2では全体で5.8%となることによる.そのBAの許容誤差限界は,日本臨床化学会クオリティマネジメント専門委員会より指針が出されている.ちなみに日本臨床衛生検査技師会,医師会の外部精度管理調査の評価基準は電解質やTP,Albの一部の項目を除き指針のBAをクリアするレベルで評価されている.このことにより,基準範囲を有効利用するには,全国規模の外部精度管理において明瞭な偏りがないことである1)

参考文献

1)市原清志:基準範囲を求める統計手法の実際.日本臨床検査自動化学会会誌 37(Suppl 1):15-35,2012
2)日本臨床検査標準協議会・基準範囲共用化委員会:「共用基準範囲案」に関する意見公募(パブリックコメント)について,日本臨床検査標準協議会,2013(http://www.jccls.org/techreport/05.html)
3)桑克彦:基準範囲の歴史的変遷と概念.日本臨床検査自動化学会会誌 37(Suppl 1):8-14,2012

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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