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文献詳細

雑誌文献

臨床検査57巻13号

2013年12月発行

文献概要

異常値をひもとく・12

免疫学的測定法による腫瘍マーカー検査で考慮すべき偽陽性反応とその解析法

著者: 新井智子1 塚田敏彦2

所属機関: 1埼玉県立大学保健医療福祉学部健康開発学科 2東京電子専門学校臨床検査学科

ページ範囲:P.1649 - P.1655

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はじめに

 腫瘍マーカーの多くは,正常細胞に存在する成分が癌化に伴う発現亢進によって量的変化をきたしたものを測定対象としているため,健常人にもカットオフ値以下のレベルで抗原が存在する.したがって,微量に存在する抗原の代謝が何らかの原因で遅延した場合や,良性疾患などで細胞増殖を認めるような場合には,悪性腫瘍を発症していなくても血中濃度の上昇をきたす.さらに,臨床検査で測定される腫瘍マーカーは,ほとんどが免疫学的方法で測定されているため,使用している抗体の種類や認識するエピトープによっては,交差反応や非特異反応によって目的抗原以外の物質が測り込まれてしまうことも少なくない.このような腫瘍マーカー測定における偽陽性は,同一検体を複数の測定試薬で測定した場合に測定値の乖離として発見されたり,担当医からの臨床所見と合致しないといった問い合わせなどで発見されることが多い.

 本稿では,筆者らが経験した腫瘍マーカー検査における偽陽性について紹介し,その解析法および偽陽性の回避法を示しながら,可能な範囲で偽陽性のメカニズムをひもといてみたい.

参考文献

1)池上正,松崎靖司:肝細胞癌の腫瘍マーカー.診断と治療 97:1971-1974,2009
2)吉田美乃里,伏木和恵,塚田敏彦,他:AFP,CEAが一過性に異常高値を示した慢性肝炎の一例について.共済医報 39:305,1990
3)新井智子,塚田敏彦:ELISA法によるCEAおよびPSA測定試薬に添加した超分子の効果.生物試料分析 35:216-224,2012
4)小林浩,井田若葉,寺尾俊彦,他:正所および異所子宮内膜腺管上皮培養細胞からのCA125産生に関する基礎的検討.日本産科婦人科学会雜誌 44:303-309,1992
5)重政和志:卵巣癌の進展機構に関わる新しいバイオマーカーの同定とその臨床応用─セリンプロテアーゼの同定とCA125の遺伝子解析を中心として.日本産科婦人科学会雜誌 56:1264-1274,2004
6)川上圭子,塚田敏彦,中山年正,他:Dithiothreitol前処理によるCA125酵素免疫測定法における偽陽性の回避法.臨床化学 20:210-216,1991
7)金子祐一郎,井本秀志,福田勝宏,他:EIA法測定でCA125の非特異的異常値を呈する現象の解析.臨床病理 38:699-702,1990
8)阿部正樹,俵木美幸,荒木早紀子,他:EIA法によるCA125測定値が非特異反応を呈した2症例血清の検討.日本臨床検査自動化学会会誌 34:375-378,2009
9)小川道雄:膵エラスターゼ1.臨床病理レビュー 特集号 116:131-134,2001
10)新井智子,荒川幸子,塚田敏彦:ラテックス凝集法とRIA法によるエラスターゼ1測定の乖離検体に関する解析.生物試料分析 25:64,2002
11)Asada H, Shibata K, Uchida K, et al:Presence of human immunoglobulin G anti serum pancreatic elastase 1 autoantibodies and their influence on elastase 1 radioimmunoassay. Biochem Biophys Acta 1080:34-39,1991
12)塚田敏彦,中山年正,横山正夫,他:簡易なfree PSA測定法の開発とその臨床的有用性について.腫瘍マーカー研究会誌 10:251-253,1994
13)新井智子,塚田敏彦:免疫検査法間で測定値が乖離したときの考え方─腫瘍マーカーを例に.検査と技術 31:103-107,2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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