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文献詳細

雑誌文献

臨床検査57巻7号

2013年07月発行

文献概要

異常値をひもとく・7

劇症型Wilson病に認められた低ALP血症

著者: 星野忠1

所属機関: 1日本大学医学部病態病理学系臨床検査医学分野

ページ範囲:P.791 - P.797

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はじめに

 臨床検査データを日々チェックしていく中で,時として極端な異常値を示すデータに遭遇することがある.このとき,臨床検査の担当者として何を考え,その後どのようなアクションを起こすかで,この異常値の運命は決まってくる.①日常検査に忙殺されてそのまま放置されるもの,②解析を試みたがその原因は不明のままのもの,③首尾よく原因が解明されたもの.この中で,①,②に相当するものは全体の95%以上あると推測される.

 今回提示する症例は,12歳,男性でアルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase;ALP)活性が9U/Lと高度に低値を示した例である.なお,筆者は約1年前に本症例と全く同じALP活性が高度に低値であった症例(14歳,女性でALP活性が10U/L,臨床診断名は劇症型Wilson病で,入院後約4カ月で死亡)を経験しているが,このときはALP活性低値の原因を解明することができなかった.1年以内に再び同様の症例に遭遇する機会はめったになく,何か運命的なものを感じ,今度こそはという思いをもってALP活性低値の原因究明に取り組んだプロセスを紹介する.

参考文献

1)Hoshino T, Kumasaka K, Kawano K, et al:Low serum alkaline phosphatase activity associated with severe Wilson's disease. Is the breakdown of alkaline phosphatase molecules caused by reactive oxygen species? Clin Chim Acta 238:91-100,1995
2)森山光彦:Wilson病.内科学第九版(杉本恒明,矢崎義雄編),朝倉書店,pp986-999,2007
3)加納象次郎:その他の酵素結合性免疫グロブリン(含失活因子).臨床病理(臨時増刊) 60:127-136,1984
4)Shaver WA, Bhatt H, Combes B:Low serum alkaline phosphatase activity in Wilson's disease. Hepatology 6:859-863,1986
5)Willson RA, Clayson KJ, Leon S:Unmeasurable serum alkaline phosphatase activity in Wilson's disease associated with fulminant hepatic failure and hemolysis. Hepatology 7:613-615,1987
6)菰田二一,小山岩雄,坂岸良克:腫瘍または胎児型アルカリ性ホスファターゼとその血中出現機構─アルカリ性ホスファターゼ研究の最近の進歩─.蛋白質核酸酵素 30:1408-1420,1985
7)Miura M, Matsuzaki H, Bailyes EM, et al:Differences between human liver- and bone-type alkaline phosphatases. Clin Chim Acta 180:177-187,1989
8)Mordente A, Miggiano GA, Martorana GE, et al:Alkaline phosphatase inactivation by mixed function oxidation systems. Arch Biochem Biophys 258:176-185,1987
9)山口登喜夫,橋本昭子:低分子抗酸化物質(ビリルビンの抗酸化作用を主に).生物試料分析 32:281-288,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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