文献詳細
文献概要
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あとがき
著者: 山田俊幸
所属機関:
ページ範囲:P.824 - P.824
文献購入ページに移動 20数年前のことですが,PCRを初めて自分でやってみました.臨床検査ではなく,遺伝子組換え蛋白を得るという研究目的でした.その蛋白を血清から精製するのは大変な労苦だったので素晴らしい方法と感動したものでした.その後このPCRが臨床検査に使われていくのをみていくわけですが,便利だけど大丈夫なのかな,と少し心配でした.それは,検査の結果が,核酸が増幅されたか否かのall or noneであるからです.研究室では,PCRの計画を立てるとまずプライマーをオーダーし,増幅されるべきサンプルについて一般的な条件でPCRをやってみます.だいたいは問題なく増幅されますが,失敗することがまれにあり,プライマーを含めた試薬の内容・組成,サンプルの環境,などさまざまな因子に影響されることが経験されます.また,増幅された産物はこの世にありえないものを大量に作るわけですから,これがコンタミネーションの原因となることもあります.さすがに検査試薬として市販されるようなものは,高い品質でそのあたりをクリアしているものですが,in houseの系では,陽性・陰性をそのまま信じていいのか,ということになります.今回の一つ目の特集の筆頭論文ではこの難しい遺伝子検査の標準化への取り組みが丁寧に解説されています.
2つめの特集は発癌にかかわる病原体の話題です.悪性腫瘍の2~3割は感染症を背景に発症するとされています.特に,患者の多い胃癌と子宮頸癌において病原体のかかわりが明らかになったことはインパクトが大で,原因微生物の除去もしくは予防が今後の患者数を大幅に減らすことが予想されます.臨床検査もそれら病原体の存在診断に一定の役割を果たしています.これからは,EBVのように発癌性のある病原体でかつわれわれの多くが潜在感染として体内に有しているものにつき,それが再活性化しないような方策が問題になると予想されます.例えばリウマチ性疾患では強力な抗炎症療法が効果をおさめていますが,一方でHBVの再活性化が報告されています.再活性化を把握できるようなマーカーが今後必要とされるかもしれません.
2つめの特集は発癌にかかわる病原体の話題です.悪性腫瘍の2~3割は感染症を背景に発症するとされています.特に,患者の多い胃癌と子宮頸癌において病原体のかかわりが明らかになったことはインパクトが大で,原因微生物の除去もしくは予防が今後の患者数を大幅に減らすことが予想されます.臨床検査もそれら病原体の存在診断に一定の役割を果たしています.これからは,EBVのように発癌性のある病原体でかつわれわれの多くが潜在感染として体内に有しているものにつき,それが再活性化しないような方策が問題になると予想されます.例えばリウマチ性疾患では強力な抗炎症療法が効果をおさめていますが,一方でHBVの再活性化が報告されています.再活性化を把握できるようなマーカーが今後必要とされるかもしれません.
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