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異常値をひもとく・8
血栓症が強く疑われた患者において発見された異常フィブリノゲン血症ヘテロ患者,fibrinogen Hamamatsu Ⅱの機能解析
著者: 竹澤由夏1 寺澤文子2 奥村伸生2
所属機関: 1信州大学医学部附属病院臨床検査部・信州大学大学院医学系研究科保健学専攻博士後期課程医療生命科学領域 2信州大学医学部保健学科検査技術科学専攻・信州大学大学院医学系研究科保健学専攻
ページ範囲:P.919 - P.925
文献購入ページに移動フィブリノゲン(fibrinogen;Fbg)は,血液凝固カスケードの最終段階でトロンビンの作用によりフィブリン(fibrin;Fbn)に変化し止血に関与する分子量340kDaの糖蛋白であり,健常人血漿中には180~350mg/dL存在する.Fbgは肝細胞において,Aα鎖(アミノ酸数610個,分子量67kDa),Bβ鎖(461個,56kDa),γ鎖(411個,47.5kDa)の3種のポリペプチドとして合成されたものが,S-S結合により(Aα・Bβ・γ)複合体となり,それらがさらにN末端領域のS-S結合により2量体(Aα・Bβ・γ)2に組み立てられ肝細胞から分泌される.これらAα鎖・Bβ鎖・γ鎖をコードするFbg遺伝子は第4染色体長腕に存在している.Fbg分子は3つの領域(region)とそれをつなぐ構造(coiled-coil connectors)が認められ,中央に存在し2量体形成部位であるN末端側はE領域と呼ばれており,両側に対称に広がるC末端側はD領域と呼ばれている1,2).
Fbgは入院時あるいは手術前の凝固スクリーニング検査の1項目として測定される.後天的に血漿Fbgが低下する疾患・病態として,①重症肝障害による産生低下,②巨大血栓症や播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation;DIC)などによる消費亢進,③治療としての蛇毒・L-asparaginase製剤投与などがある3).一方,先天的な異常としては,①血漿中にFbgが存在しない無Fbg血症(ホモ接合体),②蛋白質は存在するものの機能に異常を有するFbg機能異常症(ホモあるいはヘテロ接合体),③無Fbg血症のヘテロ接合体型である低Fbg血症の3つの型が存在し,全世界で合わせて約400家系が報告がされている(http://site.geht.org/site/Pratiques-Professionnelles/Base-de-donnees-Fibrinogene/Base-de-donnees/Base-de-donnees-des-variants-du-Fibrinogene_40_.html).このうちFbg(機能)異常症の症状としては出血傾向を有するものが25%,血栓症を呈するものが20%,無症状であるものが55%である.このため,遺伝子解析を行い報告例と比較することにより,どのような症状を呈する可能性があるかどうかを明らかにすることは,患者本人や家族のQOL(quality of life)向上のために必要である.今回は,血栓症を強く疑われた患者において発見されたFbg機能異常症患者において,異常Fbgが原因であるかどうかを検討したので提示する4,5).
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